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三百六十六生目 宣教

 荒野の迷宮昼。

 私とカムラさんは護衛依頼で宣教師のゼストを連れて歩いていた。

 目的地は……アノニマルース(わたしたちのむれ)


「ふう、ふう、さすがに、鍛えていないと、この道のりは、厳しいですな」

「冒険者ではないのに十分な体力ですよ」


 カムラさんがそう宣教師にお世辞半分で返す。

 荒野の迷宮は道が舗装されていないのはもちろんカルクックに乗る技量も宣教師にはない。

 なので歩きなのだが実際によくついてきている。


 街からの移動時間を考えると数日は硬い場所で寝るハメになっているし道というよりも激しく隆起している岩のような土地を越え何もないだだっ広い場所も歩く。

 それでも宣教師ゼストはひいひい言いつつも3日程度は歩いていた。


「ふふっ、宣教師はですね、足で、布教をするのです」

「なるほど、苦労なされていますな」

「それと、いつ沈むかわからぬ、船旅もこなして、いるので……」

「あ、魔物です!」


 私の呼びかけにカムラさんが斧を構えて宣教師ゼストをかばうように動く。

 私も背中にある剣の握りに触れた。

 もちろんこれまでも何度も有る流れ。


「ふう……度胸も、ありますとも」


 宣教師ゼストは懐から小さな杖を持ち出した。

 スティックと言われるやつだ。

 小さいながら性能は優れているもののそりゃあ見た目通り直接打撃には向かない。


 魔物たち4匹が低く吠えながら岩陰から飛び出してきた!

 私は剣を引き抜いて両手で構える。

 "無敵"を合わせて能力発動!


 剣の特殊能力は敵愾心(てきがいしん)を削るオーラ!

 おどろおどろしい暗い光が剣から放たれる。


「バウ……ギャイン!?」


 するとスッと狩る気が失われた魔物たちが構えをといてしまう。

 その瞬間に私がちょっと魔物たちだけにむけて抑えている圧力感を解放。

 それにビビって去っていった。


「終わりました」

「いやあ、本当にそのエクセレントハイレア級の剣は素晴らしいですな。誰も血を流さずに済むなら、それ以上のことはない」

「ありがとうございます。剣も喜んでいますよ」


 まあ実際には役に立っているようだから喜んでいるという感じだが。

 本当に殆どの戦闘はこれで避けられる。

 宣教師ゼストはどうしても気配だけは隠せないから釣られた小物が来ることは多いが小物程度ならばこうして追い返せる。


 もし逃げない相手でも少し攻撃して脅かせば撤退するので劇的な戦闘改善に感動。

 いやー本当にこの剣ゼロエネミーは良かったよ。


 そうこうしつつ休んだり進んだりを繰り返し。

 日が暮れだして夕日が差し掛かるころに遠くにアノニマルースが見えだした。


「見えてきましたよー目的地。遠くの広い範囲に広がっているのがそれです」

「ひい、ふう、ど、どれどれ……」


 宣教師ゼストは高くまであった岩をなんとか駆け上がり肩で息をして見渡す。

 私が腕を差し出した先に広がるのは立派な外壁とその遠くに町並みがどこまでも続く壮観。

 さらに外壁の上にも何やら鉄塔をたてて工事中。


 いやまあ私は何か知っているんだけどね。

 魔術を施して侵入を禁ずる結界の準備だ。

 対ポロニア用。


 その分外壁は当初の予定より低めで済んだ。

 バカ正直に積んでいったらポロニア相手だとどれだけ高くても不安だからもっと効率よくということになった。

 職人たちが腕によりをかけて最新技術を投入しているのでかなりのものが仕上がる予定だ。


「な……なんとぉ!?」


 宣教師ゼストが目をこするが結果は変わらずに驚嘆。

 息を忘れるほどアノニマルースが文化的に存在することに気を奪われていた。

 夕陽に照らされたアノニマルース。キレイだ。


 統合的な外観はあんまり考えたことはなかったが職人たちや竜のドラーグや弟ハックなんかは意識して作っていたに違いない。

 まあ宣教師ゼストは別の理由でびっくりしているようだが。


「魔物たちが、迷宮内に……? 人間の街では……いや、迷宮内に人間が作るわけがない……!」

「まあまあ、とりあえず近くまで行ってみましょう」


 カムラさんに促され行動を再開。

 私は裏で受信機を通しログにメッセージを送る機能をこっそりと使う。


[各自→ 現在近く。作戦開始!]






 宣教師ゼストは近くに来てから改めて目を見開いていた。

 幻じゃなくてちゃんとあるものだからね!

 遠くから見るとわかりづらいが実際は多くの隆起がありある程度は地ならしらしつつも天然の地形を活かした場所になっている。


 そもそも荒野の迷宮の岩壁自体が破壊困難。

 その労力を払うなら活かしつつ補強した方がいい。

 通常時は何重にも閉じられる門は今は開放されていて旅人を歓迎していた。


「それでは中に入りましょうか」

「な、中に!? そんな危ないのでは」

「大丈夫ですよ、こっちから攻撃しなければ。それに見に来たのでは?」


 カムラさんの促しにうろたえる宣教師ゼスト。

 私の言葉に、


「いや、こんなに立派だとは……遠くから眺めればいいとばかりに……」


 とブツブツ呟いていたがやがて決心したようで歩みだした。

 そしてそれらの様子を遥かに高い場所にある物見やぐらから眺めるのは鳥の魔物たち。

 こっそり合図送ったらキラリと鏡による光の合図が帰ってきた。

 よし中の様子は大丈夫そうだ。

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