三百六十一生目 抑制
自由落下する部下たち。
スイフォードも私を乗せて降りていく。
部下たち目掛けて氷の魔法や凍結の息吹が来ると先に落ちているパラディンとスラッシャーが弾いていく。
盾で氷塊を殴って向きを変えたあとみんな壁として蹴り加速する。
目前と迫ったところで大量の牙にも見える氷のつららが現れた!
「なあっ!? あれはマズいだろ!」
「待ち構えていたんだね」
スイフォードと私の話なんて聞こえていない部下とガチフリーズの衝突。
スラッシャーが上のつららをパラディンが下のつららを破壊してまさに歯なしにしてやった。
そして後ろの3匹の部下たちから強烈な威圧感が発せられる。
「うおお!? 抜けた!? な、またこの異常な感じ!」
「まずはパープルが放つね」
パープルと呼んだ部下は鎧ではなく服と軽鎧。
おどろおどろしい巨大な蛇のような光が遥かに大きなガチフリーズにすらもまとわりついていく。
そもそもガチフリーズからすれば部下たちは豆粒程度だからまあ見た目は敵わなそうなのはなんとなくわかるがそれはそれだ。
蛇の魔法はガチフリーズを縛り上げると暗い光を残して消える。
「い、今のは」
「抵抗に失敗してまともに弱体化を喰らったんだね。あれだとだいぶ脆いかも。次はそこにブラックが……」
解説している間にもブラックと呼んだ部下が複数の金属球を作り出して浮かせ過大なエネルギーが走り電気のようにバチバチと走っているのが見える。
それがガチフリーズへ飛んで行き大きすぎる的に外すわけもなく当たる。
轟音とともに大爆発!
連鎖的に爆発し遠くから見ても甚大な被害をガチフリーズにもたらしていた。
ガチフリーズのもやのような氷塊と冷気の集まりが一部吹き飛んでまるでヒビでも入ったかのようだ。
スイフォードはもはや驚き続きで声もかすむ。
「な……あんな力……一体どこに……」
「もうそろそろ決着だね。ホワイトが防護魔法使った」
ホワイトと呼んだ部下が放つ魔法の光が部下たちを包み込む。
氷のような光が見えたがまさに氷耐性を底上げか。
ちなみにホワイトもブラックもローブのような服と軽鎧だ。
そしてホワイトによる防護を前提としたスラッシャーとパラディンによる直接殴り込み!
落ちながら切り裂き叩き潰し砕け散らせる。
完全に中に飲まれ消えて……
「お、おい、あんな所に落ちたら凍え死んで……」
「とりあえず下に行こうよ」
……少したった後にガチフリーズの全身が割れるように光が内部から漏れ出し。
砕け散ると共に霧散して消えた!
真ん中あたりにいる豆粒は部下たちだ。
「か、勝ちやがった……!?」
「急いで!」
「あ、ああ」
ボーッとしているスイフォードを急かし落下予測地点へ向かわせる。
当然彼らは重力にひかれるまま落下し続ける。
なので。
「なあ、このままだとアイツら、落下の速度で死ぬか俺が痛いことになる」
「それは大丈夫だと思う……あ、ほら」
部下ホワイトが魔法を唱えた。
先ほどまでの威圧感は力のコントロールによる瞬間的な高出力というやつだ。
"率いる者"で私の光魔法"フォールイース"が借りられて範囲化し部下たち全員の下側に青い光。
スイフォードとぶつかる寸前にフワリと浮き勢いをころしてから着地。
無事部下たちの帰還だ。
「お疲れ様!」
「大勝利!」
「出来るかなと思っていても、なかなかスリリングでした!」
「ドラゴンと違ってそんなに動かなかったから、なんとかなりますよそりゃ」
部下たちが口々に喜び合う。
うんうん。
きっちり鍛えたかいがあった。
「どういうことだ、お前ら。そんなに弱そうなのに、なんかいきなり強くなって、それにあのデカい氷の魔物を!」
スイフォードが興奮してつばを飛ばす勢いでしっちゃかめっちゃか話している。
まあ常時威圧とそれの根源である力を垂れ流している普通のドラゴンにとってはあまりに縁遠い話だが……ちょっと"止眼"。
あれは多かれ少なかれ弱い魔物だったものたちならやる自身の力の温存と開放をより意識的により強くやった。
彼らは普段極端に自身の力を抑え込みその分貯蓄する。
そして使う時に一気に引き出せるようにも訓練してあってタメと爆発の差が大きいのだ。
もちろんそれだけではなく個々でそれぞれの鍛え方を変え多くのことで経験を積みつつもそれらでより1つの方向性に特化させてある。
野生ではちょっと難しいがニンゲンは近いことやっているよね。
とは言えこれをパッと言っても分かるようなもんじゃない。
こういう時はええと。
"止眼"解除!
「鍛えてますから」
「な、なんじゃそりゃ……?」
ここに行き着くよね。