三百五十五生目 像変
アノニマルースへ向かっていった違法賭け殺し合いをさせられていた魔物たち。
自然に戻せるよう訓練させられた彼らを一度見学のために連れてきたがそこで初めて見るものは……
「こんにちはー! 体験見学の方かな?」
「「ギャーー!! ドラゴン!!」」
Uターンして私の後ろへ隠れたのはちょっと笑った。
ドラーグに驚いたのだ。
「あれ……?」
「なんか、みんなそれぞれ住んでいたところでは、ドラゴンが恐ろしかったんだって」
「アハハ……」
確かにこの国ではドラゴンの活躍は少ないが海外では跋扈しているところもあるのか。
なんとか彼らをなだめドラーグに任せ。
私はカル車へ向き直る。
「あの……私だけ何も聞いてないんですが」
「……ごめん、キミはレンタルだし返さなきゃだもんで、良いかなって」
「ええー!! 仲間はずれじゃないですか! いやだー!!」
ショックを受けているのはカル車のカルクック。
彼は今回の依頼としては解放の相手ではないから仕方ない。
なんとか納得してもらうしか……
「「ギャーー!!」」
少し遠くからたくさんの悲鳴が。
"鷹目"と"見透す目"の透視で見てみたら彼らがたくさんの魔物たちと出会い歓迎……というか囲まれていた。
いや悪気は無いんだろうが完全にビビっちゃっているって。
最終的にはなんとか気に入ってくれました。
こんばんは。また夜遅くに呼び出しをくらいました。
もちろんハックとウロスさんから。
巨像広場へ向かうと既に多数のゴーレムたちが謎の踊りをしていた。
中央の火を噴くゴーレム中心にしてなんとも言えない奇妙な踊りをドシドシ踊っている。
魔力吸い取られそうだがそういう効果はない。
火を豪華に噴いて夜闇を照らしていた。
巨像だけじゃなくて小さいゴーレムもたくさんある。
関節がまともにない像も魔力か何かで軽くジャンプしたり身を回したりして踊っていた。
ハックとウロスさんは巻き込まれないように遠巻きに見ている。
「おーい! きたよ!」
「あ、お姉ちゃん!」
「お、来たじゃん。あとは……」
ウロスさんがキョロキョロとする。
おや向こうからやってきたのは……
「おいっす、呼ばれたから来たぞ!」
「うん、そろったじゃんね」
「おや、インカも呼ばれていたんだ」
インカも横にきた。
きょうだい揃い踏みだ。
ハックが包みをひらくと不思議な青白い球があらわになった。
サイズは両手でちょうど掴み包めそうなほど。
ハックが触ると光を帯びた。
「ようし。これはゴーレムたちと通じているんだよー」
「通じているって?」
「そこで一斉に操作が出来るじゃん。登録しておけばの話じゃん。だからちょっと触って登録しておくじゃん!」
ウロスさんに言われるがまま青い球に触れる。
私の魔力がわずかに染み込み青い球へ広がる。
インカも続いて同じことをした。
「これでいいんですか?」
「うん! いいじゃん」
「あとねー、彼らをトランスさせようと思って! 今度の戦いでは、きっとみんなの力になってくれるよ!」
おおトランスか。
"観察"してみるとレベルが10ほどになっている像がたくさん。
これでトランスできるのか。
というか本当に最初のころってレベルが上がりやすいな!
私は先日の防衛戦でやっとレベル1つあがって44!
しかもどちらかというと戦後処理の難しさによって経験を積んでいた気がするよ。
「そこでー、どうしたいかによって、トランスのさせかたが違うんだって!」
「うむ、戦闘に特化させたり普段周りを強化したり、魔法を使えるようにもできるじゃん!」
「ふんふん、どうやるんだ?」
ハックの問いにウロスさんは紙を広げる。
どうやらゴーレムのトランス分布図の描き写しらしい。
「これらのトランスじゃん! そして必要なものは魔力と適応する魔物の素材……もうわかるじゃん?」
「なるほど……」
「俺達の針なんかを使うんだな!」
そこから細かくあーでもないこーでもないとトランスのさせかたを話し合った。
ダンスを青い球を使ってやめさせてトランスさせることに。
まずは大型で腕や足が有る巨像からインカの背中にある槍を一部折って青い球と重ねる。
なおすぐ生え変わる。
「よし、いくよ」
魔力係はもちろん私になる。
行動力を青い球に注ぎ込むと魔力へと変化する。
まるで水面のように表面が揺れだすと重ねていたインカの槍が飲み込まれた。
そして巨大ゴーレムに青い球が飛んで行き中央あたりに吸い込まれた。
ゴーレムは強い光を帯びて形状が変化する。
トランスだ!
青い球がハックの足元に帰ってきた。 形は太く頑丈そうに変化し……
やがて光が収まる。
「グオオオ!! ハ……ハックさま……インカ……さま!! グオオオオ!!」
「しゃべった!」
「うむ、成功じゃん!」