三百五十生目 戦場
前線の空をアインスに頼んで飛んでもらっている。
身体の操作権を貸しているわけだ。
私自身は剣を操り敵愾心をそぐオーラを常に全力で放ち続けている。
味方にはオーラが通らないらしく小型の分身体たちが怯んだところを味方の魔物が角で貫いた。
斃れた分身体は光となって少しの毛を残して消えていく。
敵味方入り乱れている前線ではこの剣の力はかなり大事だ。
下手に魔法を放っても敵味方の識別による回避認識がちょっと難しいし時間もかかるからちょうどよかった。
土煙にまみれ魔法と血と毛が飛び交う。
特に危険なのは大型分身。
本来は飛行部隊が展開しているはずなのにいないのは大型分身の対空攻撃がすぎるゆえ。
延々と追尾してきて当たると大爆発なのでやっていられない。
また敵の数的有利に対してこちらは壁を多く設置することで立ち回っている。
ガラハたちが最前線手前でショベルを振り回し穴と壁を作り出していた。
達人かと思うほどに素早い。
「せいやっ! せいやっ!」
「ソイヤッ! ソイヤッ!」
「急げ! 次だ!!」
既存の防御壁もあったがガラハたちの立ち回りでぐっと数がましている。
大型はともかく小型はコレで十分。
私もオーラ撒きだけじゃなくて地上に降りて大型へ接近しよう。
(あいよー! はいチャクリク!)
降り立った。
大地の近くにいた小型たち3匹をオーラでひるませ蛇腹剣型にしてなぎ払い倒す。
大型は派手な音と共に激しく走り回っているから遠くからでもすぐにわかる。
"進化"を解除して別の"進化"!
強靭な四肢と首まわりと尾のイバラを持つロゼハリー!
ここからは……
(おうし! やってやるぜ!)
任せた!
ドライに身体の操作権を渡す。
勢い良く駆け出した!
当然すぐに小型分身体に出会うが私が剣を操ってオーラを振りまき敵愾心を削った所にイバラのムチ!
戦う気満々なら耐えられてしまうがうまく防御や攻撃を行えないように敵愾心が削がれていればもはや鎧袖一触。
ドライ、足を止めずにいっちゃえ!
「うおおお!! オラオラどけどけぇい!!」
オーラ範囲内に入った小型分身体が次に飛んでくるイバラのムチを避けれずに光となって斃される。
足を止めずひたすらイバラをぶん回し力強く速く駆ける。
急いで大型分身体を斃さねば!
残りは8体。
やっと辿り着いた先。
目の前の大型分身体は即席の壁をアノニマルースの魔物たちごと吹き飛ばしていた。
[ポロニア(強分身)Lv.4 比較:ちょっと強い]
おや、さっきのやつよりもレベルが低い。
それに単独だし行動も見知っている。
すぐに落とそう!
剣からオーラを放ち敵愾心を削ればひるんでスキがうまれる。
そこにイバラが伸びていく。
「そこだっ!!」
ドライによる掛け声と共に5本のイバラを叩きつけた!
ザクザクとトゲが刺さりながら力強く叩きつける。
左から右から叩いて下を薙いで足を崩し打ち上げて空に舞った所を地面へ叩き伏せる!
「まだだっ!」
立ち上がろうとする所に重ねて尾からのイバラで刺す!
尾先にある赤い花のトゲは猛毒を持つ。
ジュウと溶ける音と共に身体を貫くと光となって消え去った。
ふう……こっちに注目が集まっていなくて助かった。
まずは1体。
「ああ、もう、あれほどの肉が残ってくれりゃあなぁ……」
ドライは血が一切出ずに光となって消えたことが不満なようだが我慢してもらうしかない。
次の場所へと走る。
補助魔法が切れかけたら再度かけて。
小型分身を蹴散らし。
大型分身と対峙する。
さすがにみなこちらに気づいてないやつばかりじゃない。
同時に2体のやつもいる。
イバラを振るい毒を叩き込んでひたすら攻めまわる。
それこそがロゼハリーの特徴。
何度イバラがちぎれようと生やし直して。
敵の爪で肉体が傷つけば光魔法"ヒーリング"で癒やす。
幸いなことにみなレベルは高くない。
やはり最初に戦った2体は鍛えてあったらしい。
小型分身体なんて大体がレベル1や2だ。
1体は正面からかちあって削りあい敵愾心が削がれたところを何重にも斬り裂いた。
1体は背後から飛びかかり背中に牙と爪をたてながら抵抗する大型分身をいばらでしめつけ叩きのめした。
2体同時に攻め込んできた大型分身は波打つイバラのムチを大量に浴びせつつ剣で斬って敵愾心を減らす。
その後に大剣モードで首を斬り潰した。
なんとか合計7体撃破で残り3体といったところで連絡。
これほど減ればいけるはず。
持ちこたえれば勝ちだ!