三百四十六生目 開戦
「いっくよー! それぇ!」
ハックの掛け声。
それととともに"魔感"で感じるにハックから行動力が巨像に流れ込む。
すると巨像から鈍いブォンという音が響いた。
目にあたる部分が光り激しい振動。
振動が収まっていくと同時に巨像が起立しだした!?
な、なんなんだこれは!
足が3つ腕が2つあり10mはある巨像がハックとウロスを肩に乗せたまま立ち上がる。
動いたー!?
「おお、おお、これは……! 凄い!」
「お姉ちゃーん!」
「どんなもんじゃん!」
ガッツポーズを取り口から火を吐いて雄叫びのような轟音が鳴り響く。
像全体が震えて音を出しているようだ。
すごいなコレは。
「コレどうなっているんですか!?」
「なあに西洋の魔術のひとつじゃん!」
巨像がかがみウロスさんたちは飛び降りる。
ふたりと巨像でビシッとおそらくカッコイイと思っているポーズをとった。
実際はどうなのかという野暮なことは言わない。
「西洋の神秘! ゴーレムじゃん!」
[ゴーレムLv.1]
[ゴーレム 魔法物質の基礎体。ここから自己習得して成長する。まだなんの特徴もないが暴走しやすい]
大丈夫なのか説明文。
いやまあこういうのでプロだろうウロスさん監修なら問題ないだろうが。
ハックが笑顔なら問題はないだろう。
「あのねー、色々したけれどね、僕の能力と後ろにへんなのを刻むんだんだー」
「能力?」
「うん! トランスして新しく覚えたんだけれど、すこしの間モノを動かせるんだー」
「それだけだと物足りないじゃん、だからゴーレムとして成立させる技術を使ったんじゃん!」
私の前世の知識でもたしか……あれはファンタジーとしてのものだが……ゴーレムの作り方というものはあった。
もろもろの儀式のあとにゴーレムの身体にとある3文字を刻む。
意味は真理。
「さっき何か刻んでいたのがそうですか?」
「そうじゃん。特別な魔法記述じゃん。ただ1文字消されると壊れてしまうから、隠してあるじゃん」
やっぱりそうか。
死を意味する言葉になるように1文字消してしまうと壊れるという欠陥がある。
まあ弱点を知っていてもどこにいるかを見つけなければならないが。
「さあ、どんどん作っちゃうじゃん!」
「お姉ちゃんも手伝ってー!」
「そ、そのために呼ばれたのか!」
のんきに跳ねているハックとウロスさんにとんでもないことを言われてしまった。
この広場に転がっている巨像の数は既に二桁。
「いやあ、お姉ちゃんに驚いてもらおうとは思ったんだよ!」
「まあうまくいったら巻き込むつもりではあったじゃんね!」
ケラケラと笑うふたりに付き合ってその日は太陽が昇るまで付き合うこととなった……
カンカンカンカンカン……!!
とある夜アノニマルース内によく響く鐘の音が遠くまで鳴り響いた。
寝ていた私も思わず飛び起きる。
理由はうるさいからではなく……
「敵襲か!?」
急いで各地と連絡を取り合い現場を特定する。
かけて走って到着。
高台から見下ろせる場所だ。
第一発見者の見張り魔物が慌てた様子で鐘を鳴らしていた。
「現場の様子はどう!?」
「アレです! ついに来ました!」
魔物が指し示す先には……
そう今までは少しの分身体が斥候に来て罠にはめられ落とされる程度だった。
だが今回は……
「神獣ポロニア本体……!」
「しかも軍団です!」
ポロニアがゆったりと歩いている先にいつも斥候にくるポロニアの子犬化したようなやつらが大量。
なおポロニアが高さだけで数メートルあるので子犬といっても中型犬サイズだしでデカいし強い。
ポロニアの毛先を媒体にして作られるらしいのは分かっている。
そして見たことのない子犬サイズより大きなポロニアの分身らしきもの。
高さだけで2mあるかないかというサイズを誇っていて10体いる。
どう見ても強いだろう。
「今出来ている防衛施設だけで対処するしかない! 私はポロニアの方に行ってくる!」
「お気をつけて! ジャグナーさんは既に動いているそうです!」
アインス! 飛ぶよ!
(よーし、まかせて!)
魔力を組み合わせて"進化"!
エアハリー!
小型化して空を飛べる形態だ。
背中の針翼を展開して一気に飛ぶ!
よろしく!
(ほいほい! 空を飛ぶのはコントロールするよ!)
とりあえず肉体の操作権限を渡して崖から高く飛んだ。
風を掴んだらしく楽々と空を滑空する。
さすがアインスだ。
空から神獣ポロニアに近づこうとしたらアノニマルースの方から轟音が響く。
落とし穴が開いて分身たちが落下しそれを機に分身ポロニアが魔法を放った。
開戦してしまった!
神獣ポロニアの目は深い毛皮に覆われてその表情を読み取ることはできなかった。