三百四十五生目 驚愕
ガラハが暗闇の穴の先に見たもの。
それは……荒野の迷宮。
ただそれだけではない。
「な、なんだ!?」
周囲にたくさん魔物たちがいた。
しかも手にはカラフルな紙やら木やら飾り付け。
ガラハをジィと見つめている。
さて。
合図だ。
「せーの!」
「ドッキリ大成功ー!」
パン! という派手な音とともに籠に入った細かく切られた紙吹雪が撒かれてあたりに舞う。
ガラハは再びあ然とした表情にならざるをえなかったらしい。
結構私のいたずらに乗ってくれた魔物たちが多かったのだ。
持っていた看板をひっくり返せばニンゲンの文字で[ドッキリ大成功]と書かれていた。
さっき作った。
「ふふふ、驚いた?」
「コレは一体……? あんたは……!?」
「私はね」
ホリハリーの姿を解除して元のケンハリマの姿に戻る。
ふう。やはり4足のこの姿が落ち着くね。
ガラハを見上げる。
「あ、ああー!!」
「久しぶり! ローズオーラだよ!」
「姐さんー!!」
ガラハが勢い良く飛びついてきた。
なんとか受け止めると涙を洪水のように流していた。
うわ濡れる。
「お久しぶりですあねざ〜ん〜!!」
「わ、分かったら落ち着こう」
ギャグのような涙を流していたガラハをなんとかなだめる。
ガラハに改めて他の面々を呼んでもらうように頼む。
ガラハはゲートポータルの向こう側に身体をつっこんで手招きした。
次々とカル車が来ては驚きの声と共に紙吹雪が舞う。
「うおっ! 荒野の!?」
「わあっ!? 魔物が……」
「あ、姐さん!?」
「姐さんだ!!」
「姐さーん!!」
カル車の中から手を振りに身を乗り出しているメンバーは知っている。
ただひたすら驚いているニンゲンたちは新顔というやつだろう。
みんな子どもだしあの子らも元は親も家もなかったのだろうか。
ただ彼らは確かにまだ20歳にも満たないし、10歳に入ったばかりの子だっているようだが世間の評判は上々。
大人も店で受付していたからいないわけじゃない。
私が教えたあれそれが受け継がれていて役立っているのなら良いな。
彼らは魔物たちに歓迎されて私達の群れへ案内された。
その間もみんながわいわいと私に絡んできた。
「姐さんお久しぶりです!」
「元気にしていた?」
「も、もしやウワサに聞く姐さんって……」
「魔物だったんですか!?」
新顔さんの驚きに古くからの部下が頷いた。
なんとなしに話は伝わっていたらしい。
「ああ、こう見えても姐さんだ。驚いただろう?」
「そりゃあ驚くもなんのって」
「伝説の話が魔物だったなんて、思いもしませんよ!」
一体何を話して伝説になっているのか。
それはさすがに怖くて聴けなかった。
「それにしてもなんで言葉が通じるんだろう……」
「ああ、それはね、かくかくしかじか……」
カル車たちはアノニマルースの一角に止まる。
そこはイタ吉が確保していた空き地だ。
イタ吉も待っていましたと言わんばかりに乗り込んできた。
「おうい! あんたらが業者かい! おや、見たこと……まあ良いや」
「おう! オレたちに任せてもらおう! みんな! 姐さんの前でしょぼい仕事は見せられねぇぞ!」
「「おおー!!」」
ガラハが音頭を取りスコップを天にかかげる。
部下たちも合わせて拳を天にかかげた。
そう今回彼らに作ってもらいたかったのはイタ吉の新冒険者ギルドだ。
馬車から道具を降ろしまずは現場の下見。
私は骸骨たちに指示をして元になる木材や切り出した岩を運ばせる。
昔からの知り合いが再び加わりさらにさらに賑やかになりそうだ。
こんばんは。世間一般では残暑がまだある季節ですがアノニマルース内は気温を調整しているので平気です。
夜は湿気をあまり含んでいない風が心地よく吹いています。
今日は先日招いたカムラさんの創造主である白蛇のようなニンゲンのウロスさんが呼んでいる。
巨像たちが設置している広場に向かえば良いらしい。
ということでやってきたのだが……
「ようし、そうじゃん、そのまま……」
「うーん、こうして……こうかな?」
なぜかウロスさんの他にハックもいた。
巨像のひとつを倒してその上に乗っかり何やら作業をしている。
ええと声をかけていいのかな。
「あ、お姉ちゃん!」
「おお、来たじゃん!」
「来ました。今日は一体何をしているのですか?」
私の問いかけにウロスさんとハックは笑みを浮べた。
なんだなんだ?
「ふっふっふっー」
「ちょっとの間、見ておけばわかるじゃん!」
そう言ってハックとウロスは作業を再開する。
とは言ってもウロスさんは指示を出しハックが何やら行っているという形だが。
それからそんなに時間がたたずに。
「出来た!」
「ようし、やってみるじゃん!」
「なになに、何ができたの?」
「まあ見てて!」