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三十二生目 賢熱

 私がはちのこの味わいを楽しめるようになってから数日。

 今日は炭を取りに天然洞穴へ出かける日だ。

 森に慣れていれば片道30分歩く程度で辿り着ける距離だ。

 今回ハートペアはインカとハックとの遊びに付き合っている。

 ダイヤと私で炭の管理状態を見つつ必要量の回収だ。

 ダイヤペアの片方の兄は群れで見張り、もう片方の兄がついきている。


「まったく、仕事が増えてたまらんよ」


 と嘆いていたがその顔はどこか嬉しそうだった。


 ハチミツ狩りのさいにハチたちを100匹以上ギリギリで退けたのがだいぶ効いたらしく、レベルがさらに上がった。

 レベル22だ。

 というわけで新しいスキルを習得することにした。

[言語解読:相手の読み、書き言語が理解できない場合に理解しやすくなる]

 常時型のスキルの一つだ。

 高速思考の隣にあったもので、ちょっとこの段階では価値がわからないものだ。

 試しにイタチやタヌキの言葉を理解しようと試みたがイマイチ。

 レベルが低いせいでまだまだ難しいらしい。

 イタチに関しては前々からうっすら分かる影響で、言いたい傾向くらいは当てられる。

 会話は難しいかな。

 ちなみに初期からスキルレベルは2だ。




 寒空の中天然洞穴付近に到着。

 流石に雪の積もりが激しいものの洞穴は閉じてはいない。

 一応私達がいるという気配を残してあるため他の獣は立ち入らない。

 それに奥は火もついているしね。

 とは言っても最近は白炭の火なので比較的大人しい。


 中は二穴に分かれていて、片方は炭火置き場、もう片方が焚き火になっている。

 焚き火の方は細い穴がいくつか外に出ているものの雨が直接かかる心配がない。

 むしろ換気がいつでも出来るから歓迎なくらいだ。


 私達ふたりは洞穴へ入り、分岐点のうち炭火の方へ行こうとして……固まった。

 ……声がする。


「……様子を見ましょう」

「……この声とニオイ、ニンゲン?」


 小さく呟き確認を取る。

 私たちは気配を殺し姿勢を低くして中の様子を覗き見る。

 ……炭の置いてある部屋からなら安全に見れそうだ。

 私たちは炭の部屋へ移動してそっと覗き見た。

 そして観察を起動。

 観察は視界に入れないと駄目なのだ。


[レッサーエルフLv.13 状態:なし 異常化攻撃:暗闇]

 3人いるうちの女性はエルフらしい。

 エルフだ! ファンタジー界のチート!

 でも見た目は普通のブロンド髪を後ろでポニーテールに結んでいるニンゲンだ。

 レッサーという部分が関係するのかな。

 見た目は明らかに軽装で長袖ではあるものの寒そう。

 実際焚き火に当たって震えてる。


[プチオーガLv.13 状態:なし 異常化攻撃:なし]

 こっちの女性はファンタジー界での怪力さんだ。

 とは言っても見た目の違いが酒飲んだ? という程度だ。

 髪はショートに整えられた黒。

 こちらはレッサーエルフさんと打って変わってガチガチの重装備だ。

 近くには私よりデカく分厚い両手剣。

 つやの代わりに傷がある鎧の下にも厚着しているのが見てとれる。

 ああしないと金属が冷えたものが肌にくっつくんだっけ。

 さっきから一番話しているのが彼女だが何を言ってるのかはわからない。


[プラスヒューマンLv.13 状態:風邪(軽) 異常化攻撃:火傷]

 紅一点ならぬ白一点の男性がいかにもニンゲンという名前。

 プラスがついてるけど。

 あら、風邪引いてるのねお大事に。

 実際体を火に近づけすぎだと思う。

 頭巾を被っているが髪が外に出ていないのは恐らくそれ相応に短いんだろう。

 軽装ではあるものの革鎧が近くで干されている。

 サイズ的に彼の物なのかな。


 詳細は……

[レッサーエルフ 固体名:?@&

ヒューマンからのトランス。エルフ種への第一歩を踏み出した者。やや特殊傾向に成長が偏る。]

[プチオーガ 固体名:$@!

 ヒューマンからのトランス。オーガ種への第一歩を踏み出した者。やや物理傾向に成長が偏る。]

[プラスヒューマン 固体名:@$#

 ヒューマンからのトランス。人間を超える人間になるための第一歩を踏み出した者。どうなるかは当人次第。]


 名前がバグってーら。

 私が彼らの言葉なんて知らない影響かな。

 というか人からのトランスだったのね。

 ……強そうかといわれると雰囲気はそうでもない。


[言語解読と観察のスキルにより言語学習が開始されます]

 ……ん?

 うわッ!?

 頭がコネコネされる!?

 熱くなってきた……!

 意識を保つのも……難しい!

 言葉が……わかる……?




視点変更



「やっぱり誰か住んでいるって、この森にはさ!」


 そうプチオーガの女性が力説するものの、二人はいつもの事のように聞いている。

 それよりも寒さから体を守るのに忙しいらしい。


「アマネ〜、この森に人が棲むわけないじゃん。冒険者たちだって」


 アマネといわれたプチオーガは、それでもと前置きして言葉を返す。


「でもさエリ、誰もがここに来た時は常に火がついているって、人がいなきゃおかしいでしょ!」


 エリと言われたレッサーエルフは身体を震わせつつ焚き火に手のひらをかざす。

 そこで会話に入ってきたのがもう一人の男性だ。


「僕らみたいな冒険者が足した火が残っていただけじゃないか?」

「確かにソーヤの言うとおり、冒険者の間ではここの火は消さないようにルールが出来ているしね」


 エリがソーヤと呼ばれた男性の意見に賛同する。

 劣勢のアマネはそれでも楽しげに話し続けた。


「ここ最近しばらくずっとあった森の中で多数の焚き火の煙、普通は立ち入らない魔物の群れが棲む地域でのアレこそ、人がいた証拠!」

「あー、アレかぁ」

「アレねぇ」


 エリとソーヤが口々に思い浮かべるのは少し前までの光景。

 森の一画で上がり続けたらしい焚き火。

 冒険者たちの話をつなぎ合わせ自分たちが見た景色を照らし合わせると2月以上煙が上がっていた事になる。


「そして最近消えたのは炭の量産に成功したからだ!」


 確かにアマネの言う通り最近は煙の量がめっきり減少している。

 それとここに炭が置かれだした時期は一致している。

 確かにアマネの言葉は筋が通っているように思えた。

 それでも二人の意見は変わらない。


「確かに、わかるよ、わかる。けれど、このキサラギ森林ではありえない」

「無いなー」

「そりゃあ、こんな所に住むのは正気の沙汰じゃあないけどさ! 炭が量産されているのが全ての証拠さ!」


 炭の出処は冒険者たちの間でも最近の話題だ。

 森の七不思議の一つともされている。


「まー確かに、ここらへんの魔物はみんなそんなに賢くないはずだしねー」

「でしょ? ありえなくても絶対人の手が入っているって! あの炭ちょっと持って帰ったら、高く売れる良い炭なのにこんな所に山積みされているのもそう。引退した冒険者とかが隠居してるんだって!」


 エリがやっとあったまってきたらしくアマネの言葉を震えずに聞いている。

 しかしソーヤはそもそも体調が悪そうだ。


「アマネ、人のだと思うのなら持っていくなよ? ちょっとだけでも前に無くした地図代に、お釣りが来る程度にはなるんだろうけどさ」

「またソレを言う!」


 エリが強く声を出す。

 数ヶ月前に地図を無くした話を持ち出されたわけだ。


「もちろん盗んだりしないって! とは言っても何か物々交換とかしたいなぁ、とかは思うよね」

「手持ちのお金無いしね」


 ソーマの言葉に3人そろって深いため息をついた。




視点変更 主人公


 ジリジリと頭の回路が焼ききれそうな熱と痛み。

 急速に脳内を埋め尽くす情報。

 何……? しぐさ……良好……禁断……声……火……炭……人……森……魔物……地図……


 …………


 …………………


 ……ッいったーい!

 死ぬかと思った!

 スキルに殺されるかと思った!!

[対象の言語を学習 +経験]

 いてててて、脳の中の血管が千切れたかと思った。

 一応ヒーリングしておく。

 強制ハイスピードラーニングやめーや!

 スキルが組み合わせる事で色んな効果引き出せる事は知っていたけれど、不意打ち過ぎる!

 エグいッ!!

TIPS

ホエハリ族の毛皮:

 ホエハリの毛皮は保温性能に優れていてかなりの寒い土地でもちょっとした活動で熱を保てる。汗はあまり毛皮からはかけないからあんまりにも暑いとバテてしまうよ!

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