三百三十五生目 環蛇
「いやいや、カムラさんの彼女ではないですって!」
「アハハ! まあそうだろうね!」
うう。白い少女に良いように遊ばれている気がする。
改めて話を本筋に戻して。
カムラさんの創造主がお婆さんから白い少女になっている理由だ。
「結構前に、死霊術師としてのもう一歩踏み込みたくなったじゃん。それでまあ色々と試してみて、ちょっと前に良いこと閃いたんじゃん」
「良いこと?」
「生き物は大きく見たら何年か何十年か何百年かで老いたり致命傷を負って死ぬじゃん。
けれど小さく見ると日々細かく傷を負ったところが死んで新たに傷を埋める肉が生まれたりするじゃん。ここまではいい?」
「はい」
確かに細胞単位では毎日死んだり生まれたりしている。
そのことを指しているのだろう。
「だからいっぺんにすべて死んでなおかつ同時にすべて新しい物をうむ、なんちゃって輪廻転生の技術を開発してみたじゃん。出来たじゃん。こうなったじゃん」
「いや、そこはよくわからないです」
やばい。このニンゲン九尾並になんて言っているかわからない。
いや言葉の意味はわかるのだけれど。
なんでそんなこと思いついてたうえに出来ているんだ。
「まあおいおいわかってもらうじゃん。とりあえず今は、生まれ変わったワシ……いや、ウロスだと思ってくれて良いじゃん!」
「ところでなのですが……私の疑問としては、なぜそのように『キャピキャピ』して『きらきら』しているのでしょうか」
確かにカムラさんの疑問はもっともだった。
言動と実年齢が一致しないような……
良くみると目つきがつり目だったりするあたりはカムラさんの描いた似顔絵によく似ているのだが。
「ああそれは、全て新しくなった……つまり見た目だけじゃなくて、心も新しくなったじゃん。専門用語で幼児退行と言うじゃん」
「幼児退行の意味合いは違う気がしますが……つまり、心も今は見た目年齢とだいたい同じと」
「そういうことじゃん! あ、記憶なんかはだいたい引き継いでいるから、安心していいじゃんよ!」
安心できない……
だいたいって大丈夫なのかそれは。
本人は元気そうだから信じるしかないが。
幼児退行(物理)とはまたとんでもない。
「名前は気軽にウロスちゃんって呼んでね! んじゃあ、今度はこっちがアナタのこと聞かせて欲しいじゃん。アナタからは面白そうなにおいがするじゃん!」
「私か……」
"以心伝心"を使いカムラさんに念話を送る。
話を聞いておかねば。
『ウロスさんは、はっきり言って信用できますか?』
『この通り少し風変わりですが……客観的にも実績と信頼は非常に厚い方です。主観から申し上げても、軽々しく秘密を漏らしたりせずに、面白いものに忠実です』
少しで済むかどうかは別としてだが……
カムラさんが客観視点と主観視点の評価をくだしてくれた。
私はカムラさんを信用するとしよう。
「私の名前はローズオーラと言います」
「よろ! ローズオーラちゃん!」
「それで詳しいことを話すためにちょっと移動しますね」
「うん……?」
こんにちは。私達の群れ内の巨像広場です。
現在巨像は1体ではなくてハックたちが作っては運んで来ているからそこそこの量があります。
そこにウロスさんを連れてきたのだけれど……
「うおー! すごーい!! なにこの……何!? 最高!! 魔物たちが作ったって!? ローズちゃんも魔物!? 面白い!! テンション那由多上げ!!」
あっちこっちに飛び移り片っ端から興味が目移りしている。
特に像に強く関心を示していて舐めるように這いずるように見て回っている。
こんなところでユウレンの師匠だということがしっかり分かるとは……
「あは! んすごい! これだけの物があればやれることが、あれもこれもそれも……おお!!」
「ここのこと、他の人には秘密ですよー!」
「わかってるじゃんー! こんな面白いの余所者に回せないじゃん!」
どうやら大丈夫そうだ……
ウロスさんが這いずり回るようにあちこち調べ回っているところにユウレンがやってきた。
特に何の気無しに近づいたのだろう。
まず私とカムラさんを見つけ……
「ああ、ローズとカムラ。ここで何をして……」
「おお!? ユウレンちゃんじゃん!」
「……くっ!」
ウロスさんに声をかけられたらダッシュで反転し逃げていった。
まさか今のだけでウロスさんがユウレンの師匠だとわかった……?
それにしてもなぜ逃げてたのだ。
ただユウレンは足が速くない。
駆けたもののすぐに足がもつれてけんけんをして倒れかける。
「待ってーじゃん!!」
ウロスさんはそこに獲物に喰いかかるかのごとく飛び込んでそのまま一緒に倒れた。
何をやっているのだこのふたりは……
とりあえず暴れるユウレンとウロスさんは放置しておこうかな……ダメ?
「感動の再会、ですかね?」
「どうでしょうかそれは」
カムラさんすら疑問符がついた再会となった。