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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
死霊術師と穏やかな日々と
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三百三十四生目 創造

「ここじゃん。最近面白い噂を聞いたから久々にこの土地に寄ったら……なるほどねぇ」


 そう言って声の主は椅子の背もたれの上に寄りかかりこちらを見てきた。

 それはこの薄暗い環境でもすぐにはっきり分かるほどに白い肌を持つ少女だ。

 明らかにまだ小さい。


「おお、やっぱじゃん。お久、カムラちゃん!」

「……えっ?」

「……おや、(わたくし)、ですか?」

「おや、ちょっとこっちが変わっただけでわからないなんて、テンション那由多落ち〜」


 そう言って少女はケラケラと笑った。

 一方カムラさんは困惑するばかり。

 どういうことなのか。


「まあいいじゃん、ちょっとそこで待ってて」


 彼女は椅子から降りると舞台の方へとかけていった。

 一体何だったのか……


「今の……もしや……いやまさか……」


 カムラさんも何やら考え込んでいる。

 私はどうしたらいいのやら。

 そうこうしている間にも舞台上にいた。


「今すぐ背徳的行為を止めさせなさい!」

「そちらは今すぐ商売妨害を止めろ!」

「ええっと……『悪魔につくられし邪悪に縛られし魂よ、眠りへつけ。フォウスの言葉と共に骸は散った』、だよね」

「むっ!? それは聖書の……」


 舞台上の人々が周囲を見渡し声の主を探そうとする。

 背が小さくて不意だとわからないのだろう。

 彼女は手を上げて注目を集める。


「おもに今言った部分の解釈によって、駄目なんでしょ?」

「ま、まあ。キミは良く学んでいるようだね」


 突然意識外から這い寄られて驚いた様子だが子どもと見て落ち着きを取り戻そうとしている。

 膝を折って目線を合わせた宣教師に向かい彼女は年齢に合っていないような狡猾そうな笑みを浮かべる。


「んでもさぁ、コレ野生種や悪魔召喚のアンデッドのことじゃない? 人間が悪魔の邪悪術法しようとしたら穢れちゃって死んじゃうから、その点からしても人間が扱うのは別枠じゃない?」


 少女が靴を鳴らしながら歩き宣教師たちの周りをうろつく。

 そして指摘に対して宣教師はうなり少し驚いた顔をしている。


「ほほう、たしかにキミの言うような解釈も、あるかもしれない。しかしね。私達としては別の解釈なんだよ。わかるかい?」


 小さい子に言いきかすように優しくそして明確に拒絶した。

 これに対して明らかに不満を表した少女。

 キッとつり目で宣教師を睨んだ。


「そこまで言うなら、本当にその悪魔たる邪悪なものなのか、見てもらおうじゃないか!」


 先程までのゆるやかな声は一変して明らかに年不相応な啖呵を切るような声の張り上げ方、

 腕を振ると魔法が放たれ空間に光がいくつも発生する。

 広がったあとに大雑把に人型になり光が収まる。

 そこにはいままでいなかった骸骨たちが現れた。


「なっ!?」


 宣教師が驚く中さらに骸骨たちは背中にあった翼を開く。

 あんな形のは見たことがないしなんだか神々しさすらある。


「まだまだ!」


 少女がさらに腕を振って魔法を放ち次々と骸骨たちが生まれる。

 10体ほど発生したあたりでさすがにマズイと思ったのか宣教師たちが舞台から引き始めた。


「ええい! ここは危険だ! 一旦引くぞ! なんなんだあの少女は!」


 客席の方もいきなりの事に強くざわめいている。

 私もあの子が死霊術師だとは……


「あの魔法の雰囲気……まさか!」


 一方カムラさんは何かに思い至ったらしい。

 ハッとして舞台上の少女の元へ向かう。

 何事なのかはわからないが私も後を追った。


 舞台の上は宣教師たちが去った後だとは言え混乱していた。

 なにせいきなり現れた少女がアンデッド召喚しまくって追い返したのだ。


「な、どうなって……」

「キミは一体……?」

「このスケルトンたち、とんでもない精度でつくられている……!?」


 少女は『ふふん』と鼻をならしつつ指を動かし骸骨たちに指示する。

 骸骨たちは少女を天高く持ち上げて手が余っている者は膝を折り手を天に伸ばして少女に視線集中させた。

 あれだ。パンパカパーンって擬音がつきそうなやつだ。


「やっぱり若い子たちは大したことないじゃんね、このぐらいで驚いてちゃあこの先を見たら腰を抜かすよー」


 少女が盛り上がっている中正面からカムラさんが近づきある程度のところで膝を地面につき(こうべ)をたれる。

 その態度はさも自然だというように少女は微笑んだ。


「頭を上げるじゃん、カムラちゃん」

「……お帰りお待ちしておりました。創造主」


 え。

 ええ!?






 騒動でなぜカムラさんがいきなりあんな行動に出たのかわからない間に外へと逃れた。

 連れていた骸骨たちは消えて今は町中で腰を落ち着ける場所に移動済み。


「アハハ、カムラちゃんやっと気づいたんだもの! 遅いよ〜!」

「申し訳ありません、創造主がそのようなお姿になられていたとは思わなかったので」

「ええと、誰か説明を」


 わけがわからない。

 何せ私が見せてもらったカムラさんの創造主はどう見繕ってもお婆さんだった。

 しかし今目の前にいるのは少女だ。


 白い肌……というより蛇鱗を持つまだ数歳程度の少女。

 黄色い瞳が輝き複雑な白の髪の毛。

 そしてそれらを包むように黒い死霊術師らしい服。


 モノクロだが少なくともお婆さんではない。


「おお、カムラちゃんの彼女ちゃん、置いてけぼりはかわいそうだし、今ちょっと説明するじゃん」

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