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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
キラーコッコたちの生き様
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#01 後編

 バカにして言い返してやれば具体的な内容はわからずともバカにされていることは胴体だけはでかい矮小な知能でも理解したらしい。

 低くケモノは唸り毛を逆立てた。


「まま、まずいですって!」


 部下どもはすでに逃げ腰だ。


「チキン野郎どもが。こちらは10、相手は1だ。これで負ける道理があるものか! いつもの訓練通りに動け!」


 目の前の腰抜け部下どもを蹴り飛ばす。

 やっとまともにフォーメーションを組んだ。

 と思ったのだが。


「誰がノーマルフォーメーションでやれと言った!」


「た、隊長! 能力(スキル)解除してくださいよ!」


「こんなダミ声じゃあ効かない……」


「ニンゲンが巻き込まれるわ!! さっきも練習しただろ! 対音無効型堅牢式狩猟だ!」


 最近我らの群れでも取り入れ出した新しいトレンドの攻撃体制だ。

 『ランカーでも俺たちのような下っ端が使うことは一生ない』と部下たちはブーブー文句を言っていたが蹴り飛ばして習得させた。

 早速使うことになるとは。


 ケモノが明らかにこちらを格下と見て余裕澄ましてニヤニヤと笑っているように思える。

 下等生物が、その油断を一生後悔できなくしてやろう。


「そこ違う! もっと回り込め! そうだ! やるぞ!」


 さすがに1対10だ。

 包囲はあっさり出来た。

 ここからあえて我々の生命線とも言える籠から出て前面に押し出す。


 ケモノが駆け勢い良く籠へと飛びかかる!


「やれ!」


 我が輩の掛け声と共にケモノに向かってあえて籠が蹴り飛ばされた。

 部下共は我が輩の指示がないとスグに慌て混乱し勝手な行動を取るからかなり細かく指示がいるが……

 見事蹴り飛ばされた籠がケモノに正面衝突し、ケモノの下劣な顔を歪ませる。


「狭め! 構え!」


 合わせて全体が同一の動きで場を狭める。

 それと同時に再び受け構える。

 ケモノは矮小な頭脳を叩かれ思考能力が著しく低下したのかガムシャラに接近してきた。


「バック! アンドサンド!」


 我が輩の声に合わせて籠が引かれた。

 向かってきたさいに『ひぃ』と小さく声が漏れ聞こえたから後でヤツは蹴る。

 殴れるはずの位置に籠が無くなり空を切った突進に3つもの籠が次々と奴にぶつけられた。

 挟め(サンド)と言ったのにバラバラではないか!

 後で笑ったり泣いたり出来なくしてやる。


「モタモタするな! 準備を進めろ! 構え!」


 残りの6でケモノを囲む。

 ケモノの矮小な頭脳では今までのことで実力差を理解できないらしく稚拙な精神で怒りを(あらわ)にしている。

 切れて敵をどうにか出来ると思っている(ひな)の如き若さには思わず涙も溢れそうだ。


「うわっはっはっはっは!! 笑え! このケモノ、怒っておる、怒っておるぞ!」

「わ、わっはっ……」

「「わっはっはっはっはっー!!」」


 まともな言語体系があるかすら危ういであろう文化形態のケモノでも『笑える』と『笑われる』の違いはわかるらしい。

 ついにケモノの前に光が牙の形をして現れ突撃し隊員を襲う。


「喰わせろ! ボサっとするな畳め畳め!」


 籠を蹴り飛ばして牙に噛ませてやるが力で噛み破り捨てる!

 だがそのぐらいはやられて当然の弱小部隊(われらのたい)

 すぐさま囲みを縮めてやつの前に新たな籠を用意する。


 無理矢理ガリガリと噛んで歪められるがこちらのほうが早い!

 いくら二十一小隊が弱くとも魔法くらい使える!

 そしてそれが弱くともだ!


「放て!」


 視野狭窄(きょうさく)なケモノは上空も囲みより外の隊員の事もすぐに忘れ見えなくなる。

 我々が取り囲みまともに身動きも取れないケモノに上空からさきほど離脱した隊員たちがあっためていた魔法が次々放たれる。

 はっきり言ってヘッポコだが的が動かず数が揃えば結果は違う。


「ギャウウウン!?」


 複数の魔法弾を浴び悲鳴を上げる哀れなケモノは背中からの衝撃に足を崩した。

 これで仕上げに入れる!


「終わらせろ!」


 その掛け声と共に4つもある意味がまるでない足を持つケモノを囲む籠の一部柵が開いていく。

 そして運命を悟ることすら出来ないケモノが中に閉じ込められる形で閉じた。

 

 このぐらいの変型で驚くケモノをさらに驚かせるべく全員で籠を持ち上げてやる。

 しかも嫌なほどに揺らしてやってな。

 当然飛ぶことも出来ないケモノはグラグラ揺れる足場にまともに踏ん張れずにあちこち身体をぶつける。


 この高度でそろそろ良いだろう。

 何、羽ばたけば死なない高度だ。

 ケモノに翼があればの話だが。


 ようやく少しは察したのかケモノが気味の悪い声で鳴き始める。

 何を言っているかはわからんが暴れないのはちょうど良い。

 死後の魂に刻まれるようにこの後の運命はヒントをやろう。


「我らの鳥籠は物質ではない! 我らが霊力が形をとる守りの檻!!」


 そしてケモノを叩き落とした。

 消した籠に入っていたケモノは強くひと鳴きしつつ地へと向かって落ちていく。

 そして地につき激しい土煙を上げた。


 やはり下等なケモノの運命はどちらにせよ同じなのだ。

 ヤツの毛皮を地に敷いた。

 勝って当然だが……景気づけは行っておくか。


「我ら二十一小隊の勝利だ!!」

「「おおーー!!!」」


 さて、我らはケモノの肉を好まないがクイーンは食べるため獲物はクイーンに献上することにしよう。

 今日の収穫は上々といえる。


 部隊を二分して片方にケモノを運ばせ、我らはニンゲンを最寄りのニンゲンの巣へと運ぶ。


「キラーコッコがニンゲンの巣の近くに現れたとなると大騒ぎですよ。どうするんすか」


「我が輩には手羽先がある。お前たちはそこで待機していろ」


 檻に入れて運んでいたニンゲンをニンゲンの巣の近くに降ろし、高い木のてっぺんに移動する。


 進化っ!


 白い翼が色を変える、尾羽は長く伸び細やかな模様が広がる。

 ニンゲンにはほとんど知られていない♂の進化の姿だ。

 というより我が輩以外この(すべ)を知らないようなのだが……


 だがやっていることは単純だ。

 魔法を3種類スキルでとって魔力コントロールし3種類合成させ肉体適合と精神適合を済ませれば良い。

 キラーコッコにとっては飛行の魔法と霊化の魔法それと同時に攻撃魔法を使用するのは日常的で出来なければそもそも群れにはいられない。


 なので当然みな、やれているだろうなと若い頃の我が輩はこれを見つけたときにあまりの陳腐な代物にガックリとしたものだが……

 やれたことはないし伝えても出来ないと言う。

 『そんな遊びみたいな物よりもお前はそろそろ攻撃魔法を扱えるようになれ』と散々言われた。


 当時から苦手だったうえに若い頃は他のやつらと違うことをすると息巻いていたせいで老体の今でも攻撃魔法はまともに扱えん。

 しかも進化(命名は我が輩)は使うと行動力もガッツリと減るわ反動が老体に響くわ自身には正直最悪だ。

 まあこのようにたまーーーに役に立つときが来るのだから短い鶏生は何が起きるかわからぬものだ。

 さあやるか。


 極彩色の不死鶏は、なないろの翼を輝かせて、歌い始める。


 我らの祝福は、他者への呪い。

 では祝福を反転するとどうなるかというと、他者への呪いは他者への祝福に変わるのだ。

 この進化した姿は祝福の歌を歌える。


 我らには音波攻撃は無効のため我らへの呪いとなることはないのだが――我らにとってこの歌は『あまりに音痴すぎて』聞くに耐え難いと思われるらしい。

 進化した我が輩にだけは美声に聞こえるのだがな。

 この姿で歌い上官にうるさいと蹴られた若鶏だったころの記憶を思い出した。

 しかも音波無効の我らには一切の効力がなく――おっと。


 老いぼれが回想に浸っているうちに歌を聞きとめたニンゲンたちが集まってきたのが見えた。それを確認してからナナイロの鶏は木の上から飛びたった。


「ボロボロじゃない! あなた今までどこにいってたの?!」


 集まった人間のなかにいたヒトの親が我が子に向かって駆け寄ってくる。危ない目にあったことにすら幼すぎて気づいていない祝福された子供はそらの向こうへ傷一つない小さな手を振っている。


「ばいばい、ぴよぴよ!!」


 その日、その町ニンゲンたちの怪我が治ったとか病気が治っただとか疲れがとれたか、そういった奇跡が起きた。

 その後、人々に奇跡を起こしたナナイロのトリを探し回るのだが呪いを振りまく死神鳥・キラーコッコにはついぞ調査の手が及ばす忘れ去られていったのである。

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