三百二十八生目 大好
「ユニーク級と認められるのは、かなりこまりますね」
「ですよね。だからこれは私がつけられる範囲の価値……エクセレントハイレア級にさせてもらいます」
ひとつの物の価値をとっても難しいものだ。
戦争道具にされるか否かの境目とは。
「わかりました」
「そうそう、今回の件は内密に。本来はユニーク級の可能性があるのにわざと見過ごすのは法律違反なので」
「そうなのですか?」
「国からしたら戦力獲得のチャンスをふいにして、個人に力をもたせたままということになってしまいますからね」
バローくんは首をかしげて聞いたが鑑定士の言葉にうなる。
大げさに言うと国が管理していないミサイル持ちがいるような状態か。
確かに色々と困るな……
「わかりました、外ではE,H,Rとします」
「ただ実力そのものは確かです。ぜひかわいがってあげてください」
その後鑑定士さんに剣刃の身に文字を刻んでもらった。
見慣れない文字だったが話によると彼らが物に対してもっとも有効とされていて使っている特殊な魔法記述らしい。
"観察"して"言語学者"との組み合わせでばっちり学習した。
名を得て剣敵無は喜び淡く黒い光を帯びた。
確かに前よりもはっきりと力を感じる。
鞘におさめることで落ち着かないほどの力もおさまる。
支払いを終えて鑑定屋を後にし一旦カンタの家へ戻る。
鑑定結果の詳細書写しと支払いのためだ。
「さて、支払いなんだが……」
「た、高いですよね、こんな凄い仕事を……」
いや正直もっと単なる魔物大好きマンかと思っていた。
魔物自体にも精通しているが鍛冶のウデは私のものとは比べ物にならない。
一体いくらなんだ……
「その……もっとモフらせ」
「よし、帰ろうか」
「え、ローズさん!?」
「おや?」
「あああ、待ってローズさん、むしろローズちゃあああん!!」
ただの魔物大好きマンだ。
それで結局。
カンタはアノニマルースに来ていた。
「んやぁぁぁぉぁかわいいでしゅねええええ!! だいじょーぶれすよおおおおお!!」
「おいローズ! こいつどうにかしろって! ローズ、あ、そこはうぬぬ……」
いたる魔物に顔や手をこすりつけ蹴られまくっている。
まあみんな本気ではやらないしなんだかんだ良くやっているが。
正直カンタは私の詳細を知っている時点で抱きかかえた方が良いとは判断していた。
それに猫なで声で甲高く叫んでいる今では想像しづらいがウデは確かなんだよね……
彼の力は欲しい。
のでスカウトすることにした。
結果はこの通りだ。
とは言え鍛冶施設は家まるごとと完全連携している。
家まるごとここに飛ばすのは建築上の問題で難しいので本格的な鍛冶は少しずつ設備をうつしたあとにする。
それに1つ目象巨人のサイクロプスたちが現在ガンガンと新施設を鍛冶して作ってくれている。
大きな鉄もそのまま加工出来るのはとても良い。
カンタも納得するような鍛冶場はいずれ出来るだろう。
それまでは……イタ吉あたりに犠牲になってもらおうかな。
「いやいやいや、おっさん! おっさんだよな? たぶんおっさんやめい!」
「ムハー良い香りでしゅねえぇ、それにこの尾! うーんこっちはこっちで鍛えがいがある! 楽しみだ〜!」
カンタ騒動がありつつも水洞の迷宮から帰ってきて1週間ほど。
街へやってきたのは冒険者依頼の報酬準備が出来たとバローくんから連絡が来たからだ。
『クーランの銀猫』のタイガの元へカムラさん含め向かった。
「今回はなんかなにもかも変わっているみたいでな。やっぱ魔王復活秘密結社が関わっているせいかな……この手紙ひとつ渡すだけで俺の役割はおしまいだ」
そうタイガがふてくされながら渡してきた手紙はロウで封がされていた。
「このロウの封印は冒険者ギルドの正式なものですよね」
「ああ、普通は俺達では目にすることがないやつだな。簡単なのじゃなくて正式なものとなると、重さが変わってくる」
「それほど重要な書類、というわけですね」
そうプレッシャーをかけられると封を開けづらくなる。
タイガもいない3人だけの場所でというわけで私の借り部屋へ移動。
今度こそ封印を破って中身を見た。
[カムラ ローズオーラ バロー 以上3名へ
3名以外の者は中身を知ることが無いよう
〜月〜日 22時 前ローズオーラと会談を行った所にて 今回の昇格承認と報酬受け渡しを行う
冒険者ギルド]
「ローズさんと会談を行った場所……とは?」
「ふむ……あそこですか」
「おそらく……いえ、あそこしかないでしょうね」
日付は今日を表している。
時間は色々と細かく指定されていたがようはこの時間だろうと脳内変換。
前にアノニマルース代表のひとりとして冒険者ギルドの人狼衛兵ゴウと光戦士オウカとの対談したところ。
街の外壁裏手から入ったところにある客室だ。
そこに呼ばれるということは……かなり緊張してきた。