三百二十六生目 鑑定
「ほほう、鞭のようになったか! それは想定外だ」
「作るときにわからないものなんですか?」
「ああ。俺はコイツが望む形を取らせるだけだからな」
いわゆる蛇腹剣と呼ばれる形に剣が変化した。
ただこの剣は強く意思を伝えてくる。
まだコレだけではないと。
手首から数本針を伸ばす。
普段よりそこそこ長めに手先側へ向けて1mほど。
その先に剣を当てる。
行動力を流し込むと共に形を変えて針の先で螺旋を描く。
先の方を細く円錐状に変化したらその剣の形はまるで……
「今度は槍か!」
「しかもこんなこともできます」
剣に行動力を流し込めば激しく回転しだした。
ドリルというやつだ。
「おお! コレはすごいですね!」
「すこし怖いくらいですね」
意思と行動力さえあれば瞬時に剣の姿へ戻る。
さらに今度は大きな盾へと変化させれた。
私を覆うのに十分だ。
「なんでも出来るな!」
「これは凄いですね……ココまで性能を引き出してくださって、ありがとうございます」
「いや、俺は仕事したまでさ!」
カンタに素直にお礼を言って剣に"観察"!
[魔物剣 (無名)
パーツごとに別れ持ち主の意思に従い行動を起こせる唯一無二の武器。攻撃が当たった時に敵対心や敵愾心を下げ一部のスキルに強く効果。水棲と飛行特攻。土と電撃吸収]
なんだこの明らかに強いですと言う雰囲気の説明は。
ちょっとわからない部分もあるがなんとなくで把握出来るだけで恐ろしく強い。
名前……ってこういうのって打ったニンゲンが刻印するんじゃなかったっけ。
「この剣の名前ってどうしますか?」
「うん、名前? まあ基本的には鑑定屋に見せてその詳細を見てもらったうえで彼らの能力で最大の力を引き出せる名をもらうな」
「武器の名前は大事だと聞いた覚えがありますね」
「ええ。彼らの名付けは物の価値を最大化しますからね。その代わり価値や存在が決められてしまうとも言えますが」
ふむ。
話を聞く限りかなり重要そうだ。
私やこの中の誰かが決めるよりもこの剣の力をちゃんと見極められるニンゲンにつけてもらおう。
というわけで早速移動。
カンタがよく利用していると言う鑑定屋へ。
冒険中に拾った価値のわからないものの価値を見極め武具の名付けなんかも行うそうだ。
そのまま買い取りや彼らが見極めたものの販売も行っている。
つまりは中古屋とも言えるだろうか。
ただ道中聞いた話では『中古屋は正しい名前じゃないから彼らの前で言ってはいけない』そうだ。
正しくない名前は名付ける者たちからしたらご法度だ。
大量に物が積み上げてあるお店に到着し中のおじさんに剣を鞘ごと提出した。
剣が名残惜しそうな雰囲気を出している。
すぐに終わるから……!
「ローズさん、どうかしましたか?」
「え、いや?」
みんなは……何も感じていないのか。
ちょっと不思議なものだ。
「では、早速見ようかね」
鑑定士が剣を鞘から抜き取る。
立派な刀身が顕になった。
「ほほう、相変わらず良い腕しているじゃないか」
「俺的には、良いのか悪いのか……」
「それはものの見方というものだな。まあ確かに、猫じゃらしを作ろうとして大鉈を作り上げる様は確かに問題かもな」
カッカッカッと軽い笑い口を叩きながら剣を舐めるように見回していく。
そして次々とメモに書き記す。
「ほうほう……こいつ……もしや……凄いな……これは……?」
ブツブツと剣とメモをいったりきたり。
さらに台座に設置したりよくわからない器械たちにかけたり不気味光らせられたりしている。
ううむ見ている分には結構面白い。
「ふむ……これは困ったな」
「どうしました?」
「いやなに、こやつのギミックがあるのはわかったが目で見てみたい。ただオレじゃあ剣が嫌がっているし扱うには力が足りん。ちょっと動かしてみてくれないか?」
剣が私の手元に戻ると露骨に喜んでいるのが伝わってきた。
かわいいやつめ。
剣に魔力を注いで形状を変化させていく。
「ほう、鞭! どれどれ……他には……盾! 凄いな……あとは……おお、槍先! しかも回った! これは素晴らしい。特にあなたが持った時剣がイキイキとして真の力を引き出している! 先ほどでは見られなかった力が……ふむ! よくみせて!」
「あ、はい」
興奮した様子で剣を見てメモを走らせていく。
きっと私にはわからない範囲のこともことこまかく分かるのだろう。
持ち主だからって常に1番わかるわけでもないし。
そんなこんなをして数分。
やっとひと息ついてあとは結果待ちとなった。
「ふう……年甲斐もなく興奮してしまった。それでなのだが……結果は表では言いづらい。少し裏へ来てくれないか?」
その時カンタが声は出さなかったが強めの反応を示した。
一体なんなんだ?
断る理由もないためそのまま通されるがまま裏へ。
「でましたよ、久々の大当たりですよこれは」