三百十八生目 秘密
これから行くところを秘密にするように頼まれた。
「楽しみです!」
「ふーん、まあ良いんじゃないか? 言わなきゃ良いんだろ?」
「つきました」
そんなこんな考えている間についてしまった。
ここは玉座のある部屋か。
破壊されているがクラウンディは気にせず奥へと泳いでいく。
「ここは謁見の間……ですが秘密もあります。周囲警戒をお願いしますね」
「わ、わかりました」
周りに気配をつかもうと探知を伸ばすがそれらしいこちらを伺うものは見当たらない。
光魔法"ディテクション"や光神術"インファレッド"に"鷹目""見透す眼"どれにも引っかからない。
大丈夫な事を伝えるとクラウンディは了承し元は岩を削り出してそのまま作られただろう立派な破壊された玉座の裏側に回り込む。
「ここに……こうして……良かった、結界は無事です」
クラウンディが指し示したところには何重にも封印された結界。
言ってはならないがとてもクラウンディが施せるとは思えない。
代々守ってきたゆえに出来た長年の結晶なのだろうか。
クラウンディは結界を解除すると隠された扉が開いた。
「おお!」
「すごい、凝ってますね!」
「大事なところなので厳重なんです」
奥へ下へ降りていく。
1分くらい行った所で部屋についたらしく景色が開けた。
そこには……
「デカイクラゲ!?」
「待ってください! 彼らは敵ではありません……無事で安心しましたレッド。クラウンディです」
クラウンディが静止するのに従う。
目の前にいたのはそれはそれは大きなクラゲだった。
クジラほどではないがクラゲとしては破格の大きさ。
赤っぽくなっていて幻想的だ。
『クラウンディ他3名認証。おかえりなさいませ』
頭の中に念話らしきものが響く。
無感情ながら一定の優しさを感じる声だ。
[機能 迷宮管理システムクラゲ型
輪廻転生を独立させておりけして死滅することはない。迷宮の管理を行う媒介になっている]
こ、この"観察"の結果は!
私が見つけ私が管理者となった迷宮を思い出す。
この部屋に入れるということは。
クラウンディの1面は……
「歓迎します。この迷宮の……管理部屋にようこそ!」
「管理部屋……!」
「「管理部屋?」」
ニンゲン界でも魔物界でもほとんどその存在が知られていない迷宮の管理者と管理部屋。
つまりクラウンディはこの迷宮の神にも等しい。
そのことが理解できた私だけは思わず絶句した。
「おや? ローズオーラさん、もしやご存知なんですか、迷宮の管理について」
「え! いや……」
「わぁ、母以外の管理者に初めて会いました! 貴方達をココに連れてきたかいがあったというものです!」
「え、ええと、こちらこそ……」
想像の2段上の秘密がぶちこまれた!!
管理者は管理者であることを隠すようにスキル効果なのか自然にそう仕向けられる。
だから私も誰にも話してなかったのだが……さらっと巻き添え事故を喰らった!
「ローズ? それって一体……」
「く、詳しくはあとで話すから……今は」
「ええ。迷宮の管理者自体について詳しく説明させてもらいますね!」
心なしか声が弾んでいる。
ひとりで抱えていた重すぎる秘密をぶっちゃけた感じだ……
いやまあ実際そうなのかもしれないが。
「迷宮の管理者とは、その名のとおりこの迷宮そのものを管理、運営していくための場所です。外界と違って迷宮はこうやって誰かが常に管理している……と私は聞いています。
方針は迷宮ごとに違いますが、個々人の管理などはできない……と聞いています。あくまで迷宮世界が破綻しないようにするためのもの……でしたよね?」
『問題はないと判断します』
クラウンディは赤クラゲの方を見て判断を仰いだがどうやらあっていたらしい。
まだ日が浅いからクラウンディ自体もあやふやなのだろう。
咳払いして話を進める。
「コホン。そのためここを万が一奪われた場合は個々人はともかく迷宮内をそれこそめちゃくちゃに、めっちゃくちゃにすることも出来るそうです。
私はやりませんが、先程の誰かに操られていたと聞くイオシたちの背後に居た存在がもしここを見つけていたらと思うと……気が気でなくて」
「なるほど……確かに大事な秘密っぽいな」
「こ、このような管理部屋が他の迷宮にも!? コレは大発見……だけど秘密にしなくちゃいけない理由もよくわかります」
「念のため表の結界は解除のやり方を変更しておいたほうが良いかもしれませんね」
「そうですね……できますか?」
『実行します』
クラゲはフワフワと浮かびながら触手を外壁へと伸ばした。
どうやら私の言うとおり結界を再構築しているらしい。
なるほど龍脈を用いた迷宮による結界ならば尋常ではない強固さだろう。
「さて、追加のお願いではあるのですが……ぜひみなさんに見ていてもらいたいのです」
「これ以外にもですか?」
「ええ。私が女王の座に戻るのに見守ってもらいたいのです。そして……ローズオーラさん。ぜひ私の国と同盟を組んではくれませんか?」