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三百十七生目 泡々

 死んだイオシたちは数にすると数十いた。

 遺体はどうするかと聞くと、


「知らんアワ」

「煮るなり焼くなりアワ」

「助けてくれたお礼にあげるアワ!」

「英雄の心はそこにはもうないアワ」

「アワたちと共に英雄の心は常にいるアワ」


という事だったのでありがたく回収させてもらった。

 後で儀式にでも使おう。

 そして多数の言葉を拾うに彼らは今それどころではないらしい。


「結局アンタら誰アワ?」

「みんなーどこアワー?」

「知らんやつばっかアワ」

「お、きょうだいいたアワ」


 少しずつ魚群が分かれて行き本来のそれぞれの群れに戻っていく。

 100尾や200尾ほどでまとまって別れていったからどれだけのイオシがめちゃくちゃ押し込められていたかわかる。

 無理矢理操って作り上げていたのか……


「まあ、こんなにたくさん……」

「アワたち迷惑かけちったアワ」

「出来ることなら言って欲しいアワ!」

「群れをこえてアワたち一同のアワアワとした想いアワ」

「罪滅ぼしアワ」


 アワアワした想いって……なんとなくすぐに弾けそうなんですが。

 ちなみに翻訳係は私が務める。

 こういうことやるの久々だ。

 最近は各々の受信機による自動翻訳頼りだったから……


「……なるほど、でも困りました、彼らも被害者なわけですし」

「それでも、罪滅ぼしして気が紛れるのなら、こういう時に思い切って身体を動かしてもらうのも、互いのためになるんじゃあないですか?」

「うーん、それも確かに一理ありますね。よし、なら思い切って頼んでみます。結界内はともかくその外や周りの被害は大きいので、得意の泡で復興作業の手伝いをしてもらいましょう!」


 こうしてイオシたちも復興作業に加わることになった。

 天井やら壁やら破壊したせいで土や岩が大量に出ちゃっているうえあまり環境的にも良くないものね。

 さらにこの時の私はまだ知らなかったのだが……彼女らの本拠地もひどい有様になっていた。


 広い空間から移動したさらに奥。

 そこには立派にカラフルにサンゴ礁やらイソギンチャクやら石造りやら天然の奇跡的地形やらが豊富に秘められた宝石箱……だったと思わせる場所があった。

 ひどい。


 シンプルにそう思わせるほどに人魚(クラウンディ)の海底王城は無残に壊されていた。

 きっと無事ならば前世で言う龍宮城に負けず劣らずだったろうにと思わせる。


「ああ……改めてこの目で見ると、我が家を守れなかったことを悔やみきれません」


 人魚(クラウンディ)の言葉に在りし日の幻想を見る。

 賑やかにクラゲや人魚それについでに魚なんかも踊っている光景を。

 もはや瓦礫とゴミとしか表現しようのないその目の前で復興へ祈りを捧げた。


「全くひどいアワ、誰がやったんだアワ!」

「出てこいアワ!」

「とっちめてやるアワ!」


 一応やったのはあんたらなんですが……

 とは誰も言えず。

 武器として使われていただけでやったと表現する相手としてはやはりあの男だろう。


 ここまで破壊して大渦つくってやはり生態系をグチャグチャに潰すことが目的なのだろうか。

 そして魔王を復活させようとすると。


「みんなで、ここを少しでも元に戻しましょう。それと……ローズさんがた、ちょっとよろしいですか?」

「あ、はい?」

「来ていただきたいところがあるのです」


 そう言われ私とバローくんとイタ吉はクラウンディに連れられて建造物だったものの中へと入っていく。

 中も破壊され美しかったであろ石造りの建物や円柱がなぎ倒され瓦礫になっている。

 これはひどい……


「これから行くところはこの迷宮最大の秘密。故に、水洞の迷宮の女王としてみなさんにお願いがあるのです。けして他言無用に……そして敵がいたさいに、力を貸してもらえますか」

「へえ、そんな大事な……でもだったら何で俺らに?」

「外からの僕達だとそういう情報を漏らすのは危険なんじゃあ……」


 イタ吉やバローくんの言うことはもっともだ。

 ただクラウンディは首を横に振る。


「こちらは私達と群れを救ってもらった身。冒険者の皆さまが欲しいものを提供できるならするべきとも判断したまでです。それに……短い間でしたが、こう見えて結構相手を見る目はあるんです」


 信頼していますからね? とクラウンディは笑った。

 ううむ。クラウンディはああいったか実際は私達に裏切れなくさせるつもりだ。

 さらりと冒険者だと言ったのもそれ。


 冒険者なら普通の魔物と組んでいるのは魔物使いでない限り異常だ。

 というより冒険者ギルドでもかばいきれないほどの重要な秘密である密約にもつながる。

 クラウンディが告発するだけで私たちは途端に追い込まれるわけだ。


 そこに私たちに向こうの秘密も共有させることで強固に裏切れなくさせるつもりだ。

 それこそ知ってしまうだけで共犯関係が結べてしまいそうな事を知らせれば特に。

 それがどんな内容かはまだわからないが……

 私に断る権利はないとその笑顔に威圧された気がした。


 ……考えすぎかな?

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