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三百十六生目 双面

「褒めるために出てきた……?」


 意味不明な言動をするカムラさんと同じ顔をしたニンゲン。

 血色の良さが明らかにアンデッドではないし瞳は開かれても濁っておらず生きている事を表している。

 身を包むコートは魔王復活秘密結社のもの……


 どこからどう見ても怪しいし私の脳裏で情報がどこか別の場所とつながろうとくすぶっている。

 なんだか彼の1面について推測が出来るような。


「まあ、本当は出て来る気はなかった、お前たちが滅んでそれでおしまいと行くはずだったのだが……まさかこうまでして負けるとは恐れ入った」

「ハッ!? ということはやはりあの不自然な渦潮や、このイオシのでかすぎるうえ不気味なほどに統率されて巨大魚になって暴れていたのは」

「まあ、ここまできて隠すほどのことではないな。確かに私だ」


 なんら悪びれないさも当然と言った顔でそう言い放った。

 うわあ。

 絶対に危ないやつだ。


「魔王復活のため、というやつか……!?」

「ふむ、最近はなかなか私達も有名になったものだ。とりあえず今回は良いデータが取れた、と言うことにして一旦引かせてもらおう。私の顔、良く覚えておくと良い。いずれイヤでも目にするであろう」


 そう言って彼はニヤリと笑う。

 それは笑顔と言うよりも……獣が獲物を歯牙にかける時の顔。


「のちに世界に響き渡ることになるのだからハハハ……」

「あっ、待て! まだ聞きたいことが……」


 礼をしてから魔法を唱えワープされてしまった。

 先を探知出来ないか探ってみたがブロックされそのまま痕跡が消される。

 慣れているな。


 そしてやっとくすぶっていた記憶が繋がった。

 昔に群れを襲撃しにきたニンゲンの少年ダカシがカムラさんを復讐相手と間違え襲ったこと……

 先程のアイツと関係があるのではないだろうか。


 確かに顔はそっくり……いや同一だった。

 思わず間違えるのもうなずける。

 まるで顔の型をとってハメたようだ。


 ただ彼とカムラさんはにおいからして違う。

 生死すら変わっているし別人。

 それと……ややさっきの彼のほうが加齢していた気もする。


 ただ似ている顔という範疇をこえたニンゲンの存在。

 これはカムラさんについてもっと詳しく聞く必要がありそうだ……


『ローズ! こっちはだいたい終わったがそっちも終わったか?』

『あ、うん。なんとかなったよ』

『良かった……おつかれさまです。一旦合流しましょう』


 その後は戦後処理に追われ思考が流されていった。






 倒した相手には全員に"無敵"と"ヒーリング"をかけてまわった。

 私ひとりでは到底手がたりないため詠唱で"ヒーリング"が使えるように覚えたイタ吉とバローくんに"率いる者"で"無敵"をレンタルしてもらって一緒にかけまくる。

 正直何でこんなことを魚にしなくてはならないのだと思いつつも『しないとまた襲ってくる』可能性があるからするしかない……

 誰か代わってと思ってもドライやアインスはしらんぷり。

 人魚ことクラウンディは、


「お優しいんですね!」


と言ってくれたもののちょっと違うのです……

 説明してもあまり伝わらなかったが。

 一方クラウンディ自体はゴッソリと行動力と生命力が減っていた。

 結界維持に回ったカニや二枚貝の魔物たちが疲労困憊していたが多くの強化(バフ)がされていた跡がある。


「クラウンディさん、ずっと歌い続けていたんですよ。みんなそれですごく力がみなぎって、僕もいつでも戦える勇気をもらえました!」


 そうバローくんが語ってくれた。

 どうやらまさに命を削って周囲を鼓舞できるらしい。

 彼女のおかげで結界は保たれた。


「ありがとうございます、結界が保たれたことで集中して魚群を落とせました」

「いえ! 礼を言うのはこちらです。あなたのおかげで絶体絶命の危機から、こうして生きながらえられたのですから」


 そう言うクラウンディは優しく微笑んでいた。

 生命力を削るほどの歌が苦しくないはずもないのに強い魔物だ。

 女王だったと語るだけある。


 そして今再び玉座に戻るとき。

 まずは治され起きたイオシや他の魚たちのチェック。

 崩落に巻き込まれて死んでしまったイオシたちもいたようだが。


「いやー、さっぱり覚えていないけれど、助かったアワー!」

「なんだか死にかけた気がするアワよ」

「トサカのアワを潰したの誰アワ!」

「眠いアワ〜」


 などなど多数で数え切れないほどにいるやつらが一斉に話すので騒がしいったらありゃしない。

 しかも同族が死んだことをなんら気にしていない。

 むしろ操られていたらしく解放されたことに喜んでいることはわかった。


「生き残ったアワ〜!」

「1尾が100尾を生き残らせるために散るのが魚群アワ」

「散れば英傑、生き残ればめでたいアワ!」

「みんなで生き残るためのことがイヤなやつは、そもそも魚群にならんアワ」

「じょーちゃんじゃなきゃアワたちゼンメツしていたかもだアワ!」

「不幸中の幸いというやつアワ!」


 アワアワうるせえ!

 亡くなったイオシは……トラウマ相手ではあるがそれとは別に来世を祈ろう。

 今度はクジラにでもなってね。

 哺乳類だし。

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