三百十三生目 嫌悪
「ぎゃああああああ!! いやあああああ!! ぎにゃあああああああ!!」
『うわ、ローズ!?』
ひえええええ!!
ありったけ叫ぶ!!
なんじゃそりゃあああ!!
『お、おいローズ落ち着――』
「聞いてないいいい!! うああああああああああ!!」
瓶いっぱいの虫のように。
見ただけで正気が失われる化物の神のように。
私にとっての最悪が目の前にあった。
ぐえええええええ!!!
はあはあはあ……
しばらく逃げ惑った。
ちらりと改めて見ると1尾ごとは小さな魚イオシがうじゃうじゃと密集し泡をまとい巨大な魚を装っているらしい。
うえっ……
「ぎええええええええええええ!!!」
消え去ってくれ!
ヤツに向けて光神術"サウンドウェーブ"を収束し全力開放!
破壊の波よ起こってすべてぶち壊せ!!
にゃああああああん!!
『ローズ、何をしようと……』
「やあああああああああああああ!!」
ありったけに力をこめた1撃!
目の前を空気よりも早く強く可視化できるほどの威力で放たれる!
イオシたちを巻き込み洞窟の天井を穿ち爆砕して周囲一帯が壊れ――
『ローズ危ない!』
ハッと気づく。
巨大魚状態から一瞬で分離しある程度犠牲にしつつも別れて回避。
さらに流れるように合流して再び巨大魚状態になり私に突進をしてきた!
ぐうううう!!
それそれが光を纏った強烈な突進が大量に!!
魔法による補助強化も越えて私にぶつかってえぐって傷を増やす。
鱗やヒレが切り裂き頭のぶつかりが打撲傷を増やす。
単純な数量によるぶつかりはッ!
痛いッ!!
どれだけの時間ぶつかっただろう。
おそらく時間にすれば十数秒なのだろうがあまりに長い攻撃だった。
やっと解放された時には全身痛みが支配し身体が動かなかった。
「う、ううう……」
『ローズ!』『ローズさん!』
ホリハリーだと単純な物理攻撃に1番弱いことがアダとなった。
魔法を唱えて治そうにも集中が……
……天井から激しい破砕音!?
浮かんでいた身体の姿勢をなんとか戻して天井を見るとおおきくひび割れていて今にも崩れ落ちそうだった。
まんなかあたりに私が放った"サウンドウェーブ"の跡らしい大穴が空いている。
更に大きな音が響き天井ズレていく。
やばい、天井の一部が剥がれ落ちる!
『なんとか……私は大丈夫、それもよりも天井が一部崩れ落ちるから、結界の強化を!』
『わ、わかりました!』
『おまえは一旦下がって治療しろ!』
少し頭がはっきりしてきた。
また魚ことイオシたちが接近してきていたので空魔法"ミニワープ"で脱出!
目の前に大口を開けた瞬間にはるか遠くにワープした!
もはや私のいないところで口を閉じる。
私自身は"ミニワープ"を繰り返して横穴まで避難した。
剣も飛んできたので受け取る。
(一旦避難だ。落ちるぞ!)
どうやら地層の一部が剥がれ落ちるらしい。
今度こそ大きな音を立てながら天井がガラガラと落ちてきていた。
その場にいた魚やイオシたちが崩落に巻き込まれていく。
ただイオシたちはやはり分離と合流をうまく使いこなして避けているうえあの巨体を維持するほどの数がある分恐ろしい。
少しずつ削れてはいるが倒せるほど追い込めているかは……
むしろ私が精神的に追い込まれまくっているからな!
あーもう正体がまさかあいつだったなんて最悪だ!
もう帰って寝て良いかな。
はいダメだよね!
『結界が!』
『なんとか耐えたけれど、コレ以上は厳しいそうです!』
『こっちも見た! すぐに向かうけど戦闘準備を!』
泣き言を言ってられないか。
"ヒーリング"で生命力を治しきる。
痛みは止まらないが……行こう!
『ごめん、私が失敗した。すぐに挽回しに行く!』
『気にすんな、そのために俺たちがいるんだからよ』
服があれだけ叩かれ切れたのにあまり壊れていない。
言われた通り頑強さが跳ね上がっているようだ。
多分この服のおかげで命が助かった。
結界がひび割れ隙間が出来てしまっている。
倒れていない魚たちが侵入を試みているし全体が壊されるのも時間の問題か。
そして大きな問題はもちろんあの魚たちをどう倒すか、だ。
(うーん、それならわたしなら、いけるかも)
アインスいけるの?
(うん、それに明らかにツバイれいせいじゃないジャン? イヤなあいてなんでしょ? わたしがパパッとたおすよ)
う、うん。もう心も身体もクタクタではある……
せっかくの申し出だし頼もうかな。
それじゃあ……交代!
わーい!
わたしだよ! ローズだよ!
それのわたしだよ!
たしかにカラダがイタイみたいだけれどヘーキヘーキ!
とりあえず"進化"をチェェーンジ!
エアハリー!
(空を飛ぶ翼型の棘を作れて空を飛べる姿だよね。小さくて速いのも特徴だけれど。
でもここ水中だけれど……)
まあまあツバイはやすんでて!
わたしにまかせてもらったらめっちゃ動くからね!
スキルもテに入ってつよ〜くなったからものすごいとんじゃうよ〜!