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三百五生目 曲反

 攻撃的でイバラの生えたロゼハリーに無事進化出来た。

 深みのある青い鱗の水竜がほうと感心したような声をもらす。


「戦装束と言ったところか。それでこそ相手にふさわしい」

「私はあまりやりたくないんだけどね……」


 "猛毒の花"が発動し首元と尾先の赤い棘のような花が猛毒を持つ。

 生えている私自身に全身へイバラを通して猛毒が犯してきた。

 しかし――辛くはない。


 奇妙な感覚が全身を駆け巡る。

 本来なら猛毒に蹂躙されるはずの私の身体は……容易に受け入れていた。

 猛毒、とはひとつの側面ではある。

 だが適性があれば無効化または薬にすらなる。


 多くの生物を絶命させるはずの猛毒はロゼハリーの私にとっては重要な栄養そのものだった。

 活力に変換され筋肉がわずかな間に活性化しイバラは喜びに踊る。

 ふぅー。頭の中が冴え渡ったところでついに私の全身に猛毒が力としてみなぎったらしい。


「さあ、やろう!」


[バルードLv.25 異常化攻撃:恐怖]

[バルード 水の中に住むためにエラやヒレそれに水かきを発達させた竜の1種。堅牢な甲殻と長い尾を持って何も寄せ付けずに勝つ]


 交代!

 ここからは"私"がツバイに変わって竜をボコってやるか!

 こいつらは実に"私"向きの性格をしていて助かる。


 このまま正面から殴りかかれば飲まれる。

 まあそれでも勝てるが……あんまりやりたい戦法じゃない。

 まずは距離を詰めるために尾と首のイバラを背後に数本伸ばしてまとめ激しく回転させる。


 いわゆるスクリューだ。

 加速を得て一気に進んだ。

 イタ吉もチラと見たところ自慢の速さで竜に接近している。

 バローくんは守りの魔法でカルクックたちを下がらせ防衛している。


 当然水竜も仕掛けてくる。

 水の中とは思えないほどに軽やかに前足の豪爪を振るう。

 この素早さがあるので"ディメーションスラッシュ"は楽々避けられてしまう。


 豪爪をイバラであえて受け止めるために何本も伸ばす。

 スクリューはそのままに5本、6本、もっと!

 前まで4本が限度だったがもはや過去の話。


 同時に"空蝉の術"の反撃強化能力を使う!

 イバラに爪が食い込んで押し切ろうと力が込められる!

 棘ごと斬り裂く力……だが!


「ぐっ!?」


 斬り裂かれ私の近くまで迫った所で爪が止まる。

 それと同時にイバラがすでに再生されていた。

 つまり水竜の爪が食い込んだまま絡め取りとり込んでしまったわけだ。


「ここから!」


 イバラは再生だけでは止まらない。

 さらに新鮮な命を求めるように急速に伸びていく。

 発生源は"私"の首元だからこの勢いにも水竜の爪が負けた事を表していた。


 当然爪もどんどんと押し戻されていく。

 先程から水竜が爪を引き抜こうと暴れているがどうにもならないらしい。

 そしてもう片側の前足を使おうとした。


「ちっ、バカな!」

「俺を忘れんなよ!」


 "見透す目"で透視してみればイタ吉がおろそかになっていた反対側の前足を尾で切り裂いていた。

 深くはないが血も見える。

 水竜が巨大すぎるゆえにこんな挟み撃ちになっているのだろう。


 イバラはさらに伸びて腕に絡みつき肩にまで差し掛かる。

 棘が鱗の上を走り溝を抉る。

 皮膚まで到達すれば明らかに水竜が痛みにもだえる。


「ちぃっ!」


 身体をひねり回転して遠心力で振り払おうとするがその程度でちぎれるほどヤワではない。

 さらにツタを増量し補強し伸ばしていく。

 暴れまわる中ついに水竜が焦りだした。


 水竜の右腕は持ち上げられるだけ持ち上げられていて骨が悲鳴を上げているのがわかる。

 さらにドンドンと侵食してくる真っ白なイバラの棘が血を求めるように深く多くそしてひっかきながら這い回っていた。

 このままではあらぬ方向に肩が曲がる。


 しかし浮上しただけでは身体まで来ているイバラは振り切れない。

 なので水魔法で高圧の水鉄砲を撃ち込んできた!

 破壊力のある光線のような水の塊にイバラがぶつかる!


「……なにっ!?」


 "私"のイバラに当たる直前にクイッと水鉄砲が曲がりその水流は水竜の脚に当たり弾けた。

 やっぱ水に対して高い耐性があるようだな。

 今のは空魔法の補助魔法だ。


[ベンド 飛来物の進行方向を曲げる]


 これの曲がる方向がまた気まぐれでむしろ被害が大きくなることもあるし力負けしたら曲げきれない。

 最近やっと曲がる方向の制御がまあまあ出来るようになって使ってみたが良い魔法だ。

 曲がる方向が制御出来たらな!


 慌てて水魔法を連射してきたがそのどれもが水竜の身体へと跳ね返されていく。

 イバラの増殖は止まらずミシミシと水竜の腕や肩が鳴り……


「がうっ!?」


 苦悶の声と共にゴキリと良い音が鳴る。

 これで右肩は外した。

 イバラで右腕全体を飲み込みつつ今度は伸ばす方向を変えて"私"と水竜と距離を作る。

 その距離を活かして勢い付けて水竜の上に、1、2、さーん!


 華麗に着地。

 肩に気を取られていた水竜が真上にいる"私"を見失った。

 さあ後は調理するだけだ!

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