二十八生目 武技
新しい属性魔法を得たくもあったが残念ながらそれらしい派生は見当たらない。
なので別方向から攻めて見ることにした。
まずは怨嗟喰らいを覚えた。
神光術から派生していたけれど野生にはいらないだろうと無視していたやつだ。
[怨嗟喰らい 相手からの恨みや憎しみから起こる行動を事前に知り対処出来る。]
確かに怨嗟喰らい自体は野生ではあまり役に立たない。
けれど人が近くを出入りしているなら別だ。
最近は特にここいらで火を焚いている。
いつか人が来るかもしれない。
仲間を殺したという死霊使い。
いかにも怨念を攻撃に使いそうな相手なら重要かもしれない。
とっておくと役に立つだろう。
峰打ちからの派生では殴打を手にいれた。
[殴打 相手を殴打し打撃を与える。]
串刺しと同系統で殴る系統のダメージが上昇する。
割りと身体をはってタックルをする事も多く能力補正はありがたい。
そしてレベルが20台に入ってから特に刺そうとする攻撃のさい、
爪やトゲに光が鈍く纏って一瞬伸びるようになった。
これは前ジャック隊が似たような事をやったのを見たことがある。
魔感で見ると刺そうとする行動では行動力が効率よく集まり形を成しているのがわかった。
刺す以外ではまだまだだがこれはなかなか使えると思う。
威力がはっきりと増している。
[影避け 自らの影を攻撃させて同時に反撃する武技(詳細)]
回避からの派生系で私が魔法ではない武技なるスキルでは初めてのものだ。
[武技 行動力と体力を消費して放つ戦闘技術。小手先のものから物理法則すら捻じ曲げるものも存在する。]
ようは物理版の不思議技術らしい。
行動力の他に疲れが発生する。
なので気をつけなければあっと言う間に身体が言うことをきかなくなる。
この影避けは私の感覚では比較的体力消耗は少ない。
そのかわり小手先技といった印象を受けた。
私がそこにいるという印象をほんの僅かだけその場にとどめ私自身は回避する。
それと同時にすれ違いざまに爪等で切る技だ。
当たり前だが連発すれば直ぐに見破られる。
そうでなくともバトルセンスの良い相手には通用しにくい。
[肉斬骨断 一度攻撃を受けてから怯まずに反撃する武技。レベルにより受け止めれる威力と返す威力が上昇する]
これは相手の攻撃を受けてから反動を受けずにそのまま攻める武技。
この時攻撃そのものが武技とされ威力に補正が入り強い。
これは防御と組み合わせて使うと、防御で防いでからそのままノータイムで殴り返せる。
これに限らずスキルは組み合わせる事で能力が増す。
ちなみに肉斬骨断を使ったさいには自動で"カウンター"での威力上昇も望める。
今の私の近接最高威力を叩き込めるだろう。
まあ私が痛いんだけどね。
そしてこれは少し変わり種の常時発動型だ。
[高速思考 思考速度を増して素早く考えを導き出す事が出来る。]
昔、赤ん坊の頃は1+1の計算にもどうしてももたつくと言っていた。
最近は成長と共に改善傾向だったがこれを手に入れてやっと人並みになった。
……なったと思う。
それに、これを取得した瞬間にレベルが2だった。
私はこれまでも必死に考えたりしてたからその影響かな?
今後もそういうことがあるかも知れない。
スキルに無いことも頑張っていこう。
スキルはこんな感じだ。
日にちがたっていて2ヶ月あればここまで群れは変わるのかなと言った具合であちこちで火が焚かれている。
まあ私は比較的いつも通りと言った所か。
隣にタヌキがいるぐらいの違いだ。
根本的には私自身への変化がない。
この世界に記憶を無くし転生した。
人であるという思いと知恵を残したまま。
何かをしなくてはいけなかったはずなのに何をしなくてはいけなかったのか。
それを思い出せないような。
ちょっとずつこちらの生活に慣れてはきた。
だけどまだまだ足りない。
私は出来ることはやりたいしね。
今は無理でも将来的にでもじっくり。
そして私自身ももっと力をつけなきゃね。
……最終的に、ここから無事出ていくために。
死霊使いも怖いし今のままだと人や他の魔物もまだまだ怖い。
出ていくと言っても兄弟たちがついてきてくれる保証はない。
何せ私が目指すのは森の中ではない。
途中までの大きな目標は文化交流だ。
ニンゲンや、私達より賢いと言われる魔物たちの事を知る。
そして最終的には認めさせたい。
私の考える人並みの生活を送る基盤。
そしてそれを足がかりに私の秘密を探っていきたい。
私は、私自身が一番の謎なのだから。
タヌキが隣で毛づくろいをしてくれている。
なぜかはわからないがタヌキは自身の群れ生活を捨ててまで私に懐いてくれている。
まあ、私に取り入らないとこの群れの中ではタヌキは獲物としか思われていない。
その目が怖いから貢いでいるという部分もあるだろう。
……だからこそ、タヌキの群れを捨ててやってくる理由がよくわからないが。
何か、タヌキにも事情があるのだろう。
ジョーカーみたいなね。
そして私はというとせっせと魔法を使う直前で止めている。
前、私が『魔法はコピー&ペースト』と言った所で閃き足がかりができた。
そこから必死に練習して魔法を魔力に留める事に成功した。
実行までがオートプログラムされているので最後の部分を削る感覚。
エンターは押さない。
その力の文面だけを残す。
感覚的にはそんな感じで、どこまで削ればいいかを調整した。
そして今私の中に光魔力がとどまっている。
光属性の魔力はこのままだと直ぐに消えてしまう。
ここにもう一度ヒーリングで光魔法を唱えると異常に強化される。
もちろんここらへんは術みたいな自分でコントロールするやり方になるが、私は術をもともと使える。
術の感覚で強化ヒーリングを使う。
私が使いやすいなと思ったのは範囲化ヒーリング。
ヒーリングの癒やし効果を私中心に広げる。
接触しなくても十分な癒やし効果が得られるためかなり便利だ。
ちなみに私はここに『ただし味方と認定した者のみ』という文面を入れられる。
ヒーリングそのものが仲間として認めないと効きにくい分があるらしく、それを強化した感じかな。
これにより混戦時も平気だ。
つまり、私は魔法アレンジのやり方が何となく出来てきた。
まだめちゃくちゃ出来るわけではないので土槍が土鍋にはなってくれない。
ここは要検討。
そして魔法を魔力で押しとどめると言ったら進化の一歩だ。
こいつを3属性作る。
ここまではいけた。
そしてこれらを混ぜ合わせるわけだが……
まー言う事聞かないのこいつら!
水と油と炎ってぐらいまるで混ざりあわずに跳ね返りまくる!
まあ、別の所から獲ってきたソースコードを3つ並べた所で動くわけがないという事だ。
せめて言語は統一させないと……
というわけで私は今ここで苦戦中だ。
タヌキが毛づくろいに飽きるまでやっていたが、とても難しい。
ただ、何もわからないわけではないから、やっぱり後は数かなぁ。
ぐったり疲れながら私は夕日が沈むのをタヌキと共に見た。
……タヌキの一本角は質素だけど、抜いたら生えてくるのかなぁ。
そんな意味の分からない思いを抱いていたら夕日が沈んだ。
よし、私の作品がそろそろ焼きあがるから取りに行こう……
そう思って立ち上がる。
タヌキも立ち上がる。
私が歩くとタヌキもついてくる。
うん、犬みたいだ。
ちなみに今回の作品はタヌキ用の小皿だ。
喜んでくれるかな?