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三百二生目 一瞥

[ゴロスネーLv.12 異常化攻撃:毒]

[ゴロスネー 興味があるものにすぐに近寄り噛み付く。神経毒は強力]


 なるほど牙を見せているのは『なんやあいつら、噛んだろ!』ってぐらいの気軽な気持ちなのか。

 噛まれるのはもう説明からして困る。

 サイズ感覚は私達より少し大きいぐらいだが蛇なので長さ自体は結構ある。


 そして海蛇がクネクネと泳ぎながら突っ込んできた!

 動きがわかりづらい。

 水の中の戦闘だなんて初だっていうのもある。


 落ち着いて"止眼"で体感時間を引きのばし時が止まったように感じる。

 落ち着けばクネクネと動かれてもどこを狙っているかはさすがにわかった。

 すぐに"止眼"解除で身を翻し右腕への噛みつきを避ける!


 そのまま剣に力を込めて(エフェクト)をまとわせて振るう。

 武技"正気落とし!"

 思いっきり剣の面部分で頭をはたいた!


 完全に入ってしっかりと手応えが返ってくる。

 海蛇はプカリと腹を上にして気絶した。

 うん、身体の動きも剣の動きも水の中とは思えないほどキレが良い。


「ふう……緊張した」

「おつかれさまです。水の中の戦いは思った以上に怖いですね」

「あらゆる角度から狙われる事を意識して、歩みを進めた方が良さそうですね」


 みな慣れない環境に必要以上に力が入っていたらしい。

 深く息をしながら武器をしまった。

 水の中で深く息をするのも不思議な感覚だ。





 その後も何度か絡まれては撃退していった。

 当然魚型の魔物もいてこっちに向かってきたら気分が悪くなる。

 それでもなんとか水の中の光景を楽しめるようになってきた。


 揺れる水草たちに私に興味なさそうに泳いでいる小魚たち。

 タコのようなものもいたがやはりここは海水……?

 水を口に入れてみても塩辛くもなく無味でもなく。

 なんとなくわかるのはすごく美味しい水だ。


 光がどこまでも通っていて壁が細かくなければどこまでも透き通って見通せそうだ。

 美しさは抜群で今はそこらへんの石ころも宝石のように見える。

 もちろん拾い上げればただの石ころなのだが。


 道なりは割りと複雑。

 縦穴横穴縦横無尽でたしかに水に満たされた洞窟なのだと実感できる。

 まともに移動手段がないと探索範囲も狭まることだろう。


 冒険者としてやることは複数ある。

 だがここにある品の数々はそこそこがめても問題ない。

 人工物は落としたニンゲンが悪い扱いだし自然物はむしろ回収してニンゲン社会に還元することを求められる。

 冒険依頼で大事なことだ。


 迷宮内は通常世界と違いかなり自然内に含まれる魔力が高いらしい。

 私が良く感じる空気の濃さの違いがそれなのだとか。

 耐性があまりないニンゲンや魔物だと慣れるまで時間がかかる。


 そしてそんな特異な環境の世界だからこそ通常世界では得られない特異なものがじゃんじゃかある。

 私が森の迷宮で切り倒しまくって炭にしまくった木々たちひとつとってもだ。

 ちゃんと探せばこの迷宮でも貴重品は見つかる。


 バローくんは特に詳しくきちんと見つけては私達と共に回収している。

 今も白い貝がらを回収した。

 ただの貝がらに見えるが実際は強い魔力が含まれていて砕いて様々な用途に使うのだとか。


 そうして探索し続け……





「探索時間終了ですね」


 カムラさんが懐中時計を取り出しそう言った。

 あたりは相変わらず日射しが降り注ぐように明るいが本来の時間としては夜らしい。

 時間をはかるものがないと時間感覚が狂うのもこの迷宮の特徴だ。


 常に変わらず謎の光源によって一定の光が降り注ぎ続け慣れていなければ休憩時間すら忘れてしまいそうになる。

 異常な環境によりリズムが崩されるとあっという間にダメになるから気をつけないと。


「じゃあ帰りましょうか」

「はい、みんな身体を寄せてー」


 (くう)魔法"ファストトラベル"!


 私達の群れアノニマルースに到着した。

 水中から陸上にやっと上がってひと安心できた。

 魚がいるところでは眠れない。


「おっとととと、ちゃんと足で立たないとととと」

「む! 泳げない!」

「楽だったなぁ……」


 カルクックたちも今日はここで寝泊まりだ。

 カルクックたち用に小屋も作ってある。

 いわゆるカル舎。


 彼らをそこに連れて行き夕食を食べ各々の場所で眠る。

 起きたら朝食を取り準備運動と準備魔法を済まして再び迷宮へ。

 (くう)魔法"ファストトラベル"!





 水洞の迷宮内にワープ!

 うん!?


「うわっ!?」

「ぎゃっ!」

「なんと!?」


 目の前を泳ぐのはあまりに巨大な魚。

 クジラほどあるかと思わせるその魚は突然現れた私達の方をギョロリと一瞥(いちべつ)

 興味なさげにそのまま泳いでいった。


 離れるまで見送って。

 水中だが腰が抜けて思わずしゃがんだ。

 なんであんなのがいるんだここー!?


「か、帰りましょうか!」

「いやこれから探索するんですよ!」

「カルクックたちもおびえていますし、落ち着いてから行きますか……」


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