二百九十四生目 仕事
何の飾り気もないそれでいて地面を割るような速く強力な振り下ろし。
ただ見てから回避が余裕な点はまだ改善の余地がありそう。
「があぁ!!」
同じように跳んで避けた私に対して鉄塊が武技の光をまとい背筋を使って高速での切り返し!
そのまま身体をひねって背中側の地面まで振りまわした。
サイクロプスリーダーがにやりと笑う。
「当たった!! これで……」
「ここだよー」
「何!?」
"空蝉の術"は事前用意さえ怠らなければ相手に手応えを与えつつも瞬間移動による回避と相手の背後に回り込めるという点がとても良い。
こういう避けやすいものじゃないとタイミング合わせられなくて喰らって大惨事だが。
そう、今"私"はリーダーサイクロプスの背後にいる!
「しょうきー落とし!」
高く跳んでから光を纏って後ろ足蹴り!
身体をひねっていたサイクロプスの顔を思いっきり蹴り飛ばした!
着地。
そしてゆっくりと巨体が倒れた。
「くっ、殺せ!」
「殺さないって!」
ドライから私に戻り"ヒーリング"と"無敵"を同時がけして少なくとも話を出来る状態にはなった。
ただそれとは別にサイクロプスリーダーは強情な様子。
少し方向性がおかしいが。
逆に他のサイクロプスたちはすでに降参モード。
武器を手放し座り込んでいた。
「ねえボスー、話は聞く限りうちらにも良さそうじゃないですか。ここを手放すとしてもメリットでかいですぜ」
「ボス、こいつ凄い強いし、敵に回すより味方にしたほうが面白そうですぜ!」
「ボスー」
「うるせえ! 俺は負けた、だから死ぬんだ! うおおお!!」
「わ、まただ!」
「ボス抑えて!」
鉄塊に頭を叩きつけだしたサイクロプスリーダーをなんとかまわりのみんなで止める。
彼なりの信念がめんどくさい方向に行っている。
多分ボス交代のルールみたいなので本能的に縛られているんだろう。
"見透す眼"で読心してみると確かに異常なほどに死への渇望が見られた。
脳の自殺回路とかいうのが働いてるんだっけ。
こういう場合は……聖魔法"ピースマインド"と同じく聖魔法"トゥスリープ"をくみあわせよう。
[トゥスリープ 対象を眠らせる光を生み出す]
"トゥスリープ"は昔使われたことがあるなあ。
聖職者と対峙した時だ。
聖魔法なのも納得。
対象の起きている状態を拒絶して眠らせる魔法だがもちろん抵抗はされるだろう。
私もあまり使ったことは無いし。
今はホリハリーではないから慎重に唱え"ピースマインド"と同時に完成させて発動させる。
光で出来たホエハリが息をはくようにすると白い光がサイクロプスリーダーに伸びていく。
同時に青い光も伸びて混ざりあいサイクロプスリーダーを包む。
「な、なんだ! だ、だ………グウ」
「とりあえず一時的におとなしくしてもらったよ」
心を落ち着かせ精神系の異常を抑える魔法との組み合わせだ。
良い夢も見られるだろうし起きたら自殺衝動は治まっているだろう。
「いやあ、お見事で」
「ボス、起きたら納得してくれたらいいんだけれど」
「とりあえずアノニマルース体験ということで良かったですかね?」
「ああ、俺達は良いがボスがどうするかわかんねーからな」
「強いやつ歓迎!」
「誰も傷ついてない、ヤサシイのうれしい!」
というわけで彼らを空魔法"ファストトラベル"でアノニマルースへ飛ばした。
あとはアヅキやドラーグがなんとかしてくれる。
これが最近の私の日課であるスカウトだ。
群れへ新しい魔物たちを呼びこむお仕事だ。
今はまったく手が足りていないしね。
食糧改善のためにも魔物の頭数がいる。
防衛力も高めないと例の神獣ポロニアがいつ来るかもわからないしね……
いつまで大目に見てくれるかはわからない。
(なあ、この後は……)
はいはい、わかってるって。
ふぅー!
やはり生血したたるウサギはおいしかった!
ひと仕事したあとの狩りと血飲みは最高だ!
ツバイは嫌がるが"私"だって仕事をしたら血浴びをしたくなる。
"私"とツバイは互いに嫌なところは任せているんだしこういうストレス発散も大事だ。
それに食事はどちらにせよとらなくちゃならないからな。
そら交代!
おっとと!
戻ってきました私です。
私とドライの関係性って考えれば考えるほど謎だから……あまり触れないでおこう。
さあ、またダッシュ&スカウト!
暮れだしたころにアノニマルースヘ戻る。
まずは農業の様子を覗いてみよう。
インカたちが担当をしている。
こんな荒野の場所では土作りから行わないとまともに根付くことすらない。
深く掘り起こし恵みの水を使いつつ火魔法"アクティベーション"で土壌の微生物やら植物たちやらを活性化させて土魔法も使う。
[フェイタル・グラウンド 土を栄養豊富にする]
割りと昔から覚えていた魔法のわりに役立てる機会がなかったものだ。
さらに例の昔の転生者が書いた魔本によって得た農業知識なども組み合わせて。
多数の魔法陣と魔法記述それに地道な調整多数により畑を作っていた。
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記念絵をいただきました
ブックマーク500突破や300部突破ありがとうございます