表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/2401

二百九十一生目 平和

 私の朝はテントの中から始まる。

 起きるときは朝だったり夜だったり。

 その日のスケジュールに合わせて変わるが何とか対応している。


 今日は特別な事は何もない。

 テントからでて朝日を浴びた。


「おはようございます主」

「おはようアヅキ」


 ヒト型でありながら背に翼を持つカラスであるアヅキ。

 ほぼ毎度起きる時にやってくる。

 何で把握してあるのかが謎だ。


 そのままアヅキは朝食準備へ向かう。

 忙しい時間をわざわざさいてやってきてくれるらしい……


 私は朝食までの時間に起きてくる魔物たちに声をかける。

 時折忙しそうに骸骨が通り過ぎていくが彼らには残念ながらまともに思考はないので工場機械のような物と思ってスルーする。

 最近多くの魔物の中で流行っているのは『名前』だ。


 ニンゲンたちの業者とのかかわり合いで『個別の名前』というものに興味持ったらしくコツを教わりつつみな思い思いに自身の名前をつけている。

 まあ思い思いにということは……


「おはよう!」

「おはようローズさん! 聞いてください、こいつの名前『パルパル』ってつけたんですって、変ですよね〜」

「おはローズ! いや、何言ってるんだ、お前なんか『のんみょり』らしいじゃないか。めちゃくちゃだろ!」

「なにおう! 『のんみょり』かっこいいだろ!」

「なあにオレの『パルパル』の良さがわからないようじゃあ、まだまだだな!」

「まあまあ、喧嘩しないようにね」


 こんな感じで自由過ぎる名前が飛び交っている。

 まあどちらも名前と姿形の雰囲気は似てはいる気がするが……

 そんなこんなで挨拶していったらコボルトにも出会った。


「おはようー」

「おはようございます! 最近の流行りは聞いてます?」

「うん、名前付けだっけ」

「私もつけたんですよ。『コル』なんてどうですか?」

「うん、いいね」

「では今度からはそう名乗らせてもらいますね!」


 よかったぶっ飛んで変じゃなかった。

 コボルトのコルはすっかり医務関係のリーダーと化している。

 私が効率の良い回復魔法系の魔本をアノニマルース内で広めたことによりコル自身も治療の幅が広がった。

 さらに治療を行い癒やし手に回っても行動力を使い切らないようになったことで元々魔物たちの中でも癒やし能力を持つものたちがコルのもとで治療を学びだしている。


 恵みの水もあるしどんどん魔法を使い回復し医学としての医術も学んでいっている。

 生命力は癒せても単純な風邪は地道な治療が必要だったりするからね。

 彼女の周りにわいわいと魔物たちが集まりだしたあたりで離脱した。


 おそらくは体調の悪い魔物や治った魔物そして彼女のもとで働く魔物だろう。

 そんなこんなで魔物たちと挨拶していく。

 最近はかなりみんなと仲良くなれているつもりだ。


 その証拠にも"率いる者"と"指導者"の効果が大幅に増してきている。

 "率いる者"でみんなのあらゆる経験が私の中に流れ。

 私の経験が"指導者"でみんなにも共有されてアノニマルース全体の成長率が高い。


 先日の対談での必死なやりとり含めてすでにレベルが2つ増して42に。

 上がりにくそうとは何だったのか。

 まあ命からがらではあったけれど。


 軍部の魔物たちと話しているとあたりの魔物たち向け一斉にチャット文字が送られた。

 九尾の開発した受信機を通してログに文字を表示するものだ。


[朝ごはんができました]


 この短文のみだがそれだけでみな一斉に食事場へ向かい出す。

 もはや難しい言葉はいらないのだ。

 現場につけばそこは戦場。


 量は全員分それぞれあるものの受け取れる順番は早いもの順。

 いち早く食べるためにあちこちから魔物たちが駆けつけてきていた。

 私もしれっと並んでいいにおいが漂う中で待つ。


 なんとか自分の番が回ってきて今日の食事を受け取る。

 ちなみに少し前から導入したお金代わりのポイントで買える。

 普通にやっていれば日に3回程度はちゃんとした物が手に入るし余る程度。


 私は高級型雑食食事を受け取り地面にひいてある布の上へ移動。

 ここでは4足型がみな食事をしていた。

 私もそこにしれっと混ざって食べる。


 するりとハックが隣に並んだ。

 ハックも何とか食事を受け取れたらしい。


「おはようお姉ちゃん」

「おはようハック。インカは?」

「うーん、まだ並んでたよ」

「出遅れたか」


 後になればなるほど受付が混む。

 調理担当のアヅキたちが必死にやっているが限度はある。

 ちょっと出遅れるとしばらくは並ばなくてならないからみな一斉に動くのだ。


「アレ? 今日ハックが食べているの変わっているね」

「新しく魚系のみを追加したんだって!」

「へぇ……今まで魚醤のためにとっていたりはしたけれど」


 私がメインがお肉山盛りになのに対してハックのはメインが大きめの魚がこんがりと1尾。

 おいしそうだ。


「お姉ちゃんはいつもあんまり変わらないね? 高級なやつだね」

「ああ、まあこれはね。私も普通で良いと思うんだけれど……最初の頃、普通のを頼もうとしたら、『トップがそれだとまわりが高いのを頼みづらくなる』とか『高いのも頼まれないと余る』とか言われてね……それからはだいたいこうでね……別に私トップじゃないんだけれど」

「お姉ちゃんも大変なんだねぇ」


 ハックはカラカラと笑った。

 そんなこんなを話しつつ食べ終えて次へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ