二百八十五生目 訪問
ニンゲン冒険者5人組と挨拶を交わし挨拶代わりにモフられなぜか今オーガのアマネの膝上に乗せられている。
なんでもアリなのかアマネは。
「……それで、今日来た理由は何かある?」
「やだー、理由がなきゃ来ちゃいけない仲じゃないじゃん!!」
「アマネ、そういうのは良いから」
エルフのエリがアマネを落ち着かせる。
双子はマイペースに他の受信機持ち魔物と話しているようだ。
つまり残りはダブルヒューマンのソーヤ。
「ええと……理由はあります」
「まあここはかなり道のりが険しいし、気軽に遊びに来る距離ではないよね」
「ええ。実はこちらで動きがありまして。結論から言うと、ローズさん自体に街へ来てもらい話がしたいとのことです。もちろん非公式の形で」
驚いた。
リスクは取らずにとりあえず判断は保留のまますごすのかなくらいだと思っていたから直々に呼び出しをくらうとは。
確認することは確認しなきゃ。
「それは私個人を指名? それとも……」
「アノニマルース代表を指名ですね」
「だとしたら最悪私以外でも大丈夫かな……複数での訪問は?」
「対談そのものは1対1ですが身辺警護程度に連れてくるのは大丈夫だそうです」
う。
サシでの会話とかやはり誰か変わってくれないかな。
ただ……頼りのカムラさんは冒険者として顔が割れているしそれ以外は任せるのが不安なメンバーが多い。
やるしかないのか。
「常識的な範囲での身辺警護数ってあったりする?」
「うーん僕は詳しくないですが……」
「あー、それなら何となくわかるかな。確か馬車1台あたり5から10かな」
「エリ、そんなことにも詳しいんだ」
「広く浅く知識をかじるのが趣味なもんで」
そうか……逆に言えばカル車はいるのかな。
カルそのものと車。
それにヤバくなってもうまく脱出したりそもそもヤバくならない程度に訓練されたメンバーがいるか。
威圧しにいくわけではないし結局は非公式だが『面倒だから殴っておこう』と思われてもダメ。
む、難しい!
ニンゲン対ニンゲンではなくこちらが魔物という時点でそこそこ不利に働くか。
それなら……詳しくはとにかくみんなで決めなくてはならない。
私が判断できる範囲は少ししか無いし。
あとで会議だな……
「期限はいつ頃に?」
「早くても良いそうですが、ひと月以内で来るさいは事前の連絡が欲しいとか」
「わかった。そういう風に調整する」
さあてまたここから忙しくなる……また忙しくなる!
忙しさを取り除くために工夫すると忙しさがやってくる!!
「そういえばここ涼しいですよね?」
「気づいた? 魔法陣で調整しているの」
「え!? これ魔法陣で気温を下げているの!?」
「まあ細かく言うと違うけれど、だいたいそう」
「へぇ……やっぱりすごいな……」
ソーヤとアマネとエリが驚いてくれた。
自然な気遣いの出来る魔法陣なのでとても良いものだし褒めてくれてうれしい。
みんなが頑張ったものはガンガン褒めてほしいね。
そこから約束期限に間に合うように四方八方走り回った。
まさか手ぶらで行くわけにもいかずお土産も用意して……
そしてカルクック自体はあまり野生でいないということで別のを考案し……
カル車もそれに合わせつつ私達が利用しやすいように変化させた。
ニンゲン用は参考にしつつも私達とかつくりが違うからね。
そうしてあれやこれやと作り込み……
あっという間に日々が過ぎて準備が何とか期限内に整った。
ニンゲンの冒険者としても少々依頼をこなしつつだったけれどそういえばまだ冒険依頼が来ないなあ。
冒険者5人組たちにも連絡を取りあとは向かうだけにあった。
車は3台用意した。
1台は私が乗り1台がおみやげやら荷物やら。
さらに残り1台は予備兼護衛待機。
「よーし、短い距離だが張り切るか!」
「静かに引くだけさ」
「俺はやるぜ俺はやるぜ」
3台とも力自慢体力自慢の魔物たちだ。
体格もいかにも車を楽々引けそうなそこそこ大きいサイズ。
1台目には威風堂々といった体躯を持つ4つ足の獣で角やらトサカやらすごい。
2台目は真っ白な毛並みを持つ6つ脚の馬のような魔物。
3台目はまるで大きな狼だがちょっとおバカなので危ない魔物。
3頭ともそこそこ見栄えがする兜と牽引用装着具をつけてある。
デザインはハックがカラーは私が。
ハックだから奇抜かと思いきやこういう時はかなり堅実なデザインになるから面白い。
シックな銀にポイントで金を入れ無駄にきらびやかにせず抑えたデザインに。
嫌らしさをなくしできるだけ王道になるように前世の知識引っ張り出して適用した。
なかなか様になっていると思う。
それどころか私も軽く布を纏っているし護衛係も兜に胸鎧さらにクローやら角槍も身につけて貰っている。
中身は私達が必死に焼いて作ったいつもの土の加護つきの土だが雰囲気は金属っぽい。
さあいくかな。
空魔法"ファストトラベル"!