二百八十四生目 文章
「それでは話に戻るかの。受信機は一部のやつだけじゃが、ワシが改造をしておいた」
九尾は椅子に座り込み机ごしに話しかけてきた。
ドラーグが受信機ごしにメッセージを受け取った件についての話かやはり。
「ドラーグの受信機改造していたのですか?」
「まあ順番にやっていくつもりだったからの。今回の機能は、受信機さえつけていればログメッセージ欄にテキストメッセージを送りつけられる機能じゃ。それと……コレを渡しておくかの」
そう言って九尾が渡してきたものはひとつの立方体だった。
小さくてひと目みるとお菓子のようだ。
「これは?」
「受信機に似てはいるがお前さん専用じゃな。メッセージの送受信の他にお前さんのデータを常に送る魔術やら技術やら組み込んである。噛み砕かずにそのまま飲み込めば効果を発揮するから飲むんじゃぞ」
言われてみた通り口に含む。
金属のひんやりした味がした。
そのまま飲み込むと喉の奥にひっかかった感覚が。
慌ててお茶で流し込んだ。
ふう……
「効果はしばらくしたら現れるはずじゃ。その時にやり方なんかも分かるようになっているからの」
「不思議な技術ですね……」
「ま、ワシは天才じゃからな!」
そう言って九尾はニヤリと笑った。
……そういえばデータ取りに利用されるのか。
まあそのぐらいは協力しないとなあ。
「ところで、他にも何かやりたいことがあるか?」
「ああ、それならあります。それに後々会わせようとしていたニンゲンもいるので」
「ニンゲン? 大丈夫なのか?」
「まあ子どもですし、賢い子なので大丈夫だと思います」
というわけで。
私はバローくんを連れてきた。
範囲が違うとはいえ研究や開発だから大事だろうと思ってつれてきた。
少し不安だったが……
「――なあるほど! なかなかそれは災難かつ良い経験じゃのう!」
「ええ! おかけで精霊の研究も行えますし! それにしても僕はあまり知らなかったんですが、本当にすごい方なんですね!」
「そうじゃろ! ワシは天才じゃからな!!」
ものすごい会話が弾んでいて入りづらいほどだった。
隠れ子ども好きっぽい九尾と誰でも人懐っこいバローくんの組み合わせかつ頭が良い同士で強力な組み合わせだ。
バローくんが乗り出していた身を正す。
「それにしても、その散り散りになったみなさんやそのご家族って無事かどうかは……」
バローくんもすでにその話はしてもらっていた。
九尾も自分の毛皮をいじる。
「はっきりいってわからんの。何せもう数十年前じゃ。子がおるかどうかもしれんが、責任者はワシじゃしみな要領も良かったからうまく生きてるじゃろ」
「無事だと良いですね」
「ま、平気じゃろう」
その後また別の話になるふたり。
私は九尾の言葉が常にどこか頭のすみにひっかかったような感覚が残った。
……うん?
今奇妙な感覚があった。
これはもしや。
「あ、さっき飲んだ物の効果が現れたみたいです」
「ほう、来たか! だいたい感覚でわかると思うが、さっき見せた説明書通りやればできるわい」
「あ、さきほど聞いた通信機能ですね! 僕のも出来るみたいなのでどうぞ」
さて文字のやりとり機能を試してみよう。
やり方はスキルに近いかもしれない。
やると決めてログに集中し相手を選んで決める。
バローくんにあてて……と。
[テストテスト]
[バロー:来ました! 大丈夫そうですね]
入力方法は発声するように強めに言語並べればできるから念話に近い。
アノニマルース所属員で出来る念話のように扱える機能はかなり便利だ。
ただあれだ。
前世でのチャット機能をすごく思い出すな……
「出来ているみたいです」
「なら良し。あとでそこらへんのデータも見せてもらうかの。ワシに送りたい時は本体向けに送信すれば良い。前の時のように連絡が途絶えると厄介じゃからの」
「わかりました、ありがとうございます!」
「まあ、今後もデータを参考に機能を増やさせてもらうかの」
九尾は不敵な笑みを浮かべた。
本当に頼もしいかぎりだ。
しばらくバローくんと九尾の会話がはずんだあとまた後でとアノニマルースに帰還した。
おそらく受信機のチャット機能で九尾と話すのだろう。
バローくんは密林に研究へ戻り私はテントへ。
そうだそうだ。
ドラーグにもこのことを話しておかなきゃ。
[私だよー。博士の所に行ってきたよ]
[ドラーグ:わ! びっくりした!? ローズ様も出来るようになったんですか]
[うん。実はかくかくしかじか……]
ドラーグに向こうであったことをかいつまんで話した。
文字だけだとリアクションがわかりづらいから難しい。
[ドラーグ:そうなんですね! コレでもっと便利に]
[うん、そうだね]
[ドラーグ:あ、ちょっと待ってください]
こういう時に何があるのかよくわからないもの難点か。
まあその分気軽ではある。
少し待つ。
[ドラーグ:大変です! 先日きたニンゲンたちがまた来ました!]
[なんだって!? すぐ行く!]
ドラーグに場所を聞きすぐに駆けつけると前いた冒険者5人組がまた来ていた。
すでにオーガのアマネがドラーグのウロコをペタペタ触りまくっていた。
怖いもの知らず。