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二百八十一生目 城塞

 イタ吉が素早く斬りたぬ吉がひたすら守る。

 たぬ吉は防戦一方と言えば聴こえはまるで負けているようだが実際は逆だ。

 延々と走らされ爪と尾を振り技を駆使し集中し続けているイタ吉はあまりにも生命力以外を削られている。


 城を落とすには城側より3倍の戦力が必要と言われている。

 今まさにイタ吉が感じている絶対的な差がそこに現れているわけだ。

 イタ吉は距離を取り息を整え心臓を落ち着かせようとしている。


「なんつー……面倒さだ」

「そっちも全然攻撃が見えないですよ!」


 見えなかろうと自動で草ゴーレムが全て塞いでいるのなら皮肉にしかならない。

 1つ鼻息を吐いてイタ吉はスッと初歩は音もなく駆けた。

 小技だが視界から逸れる手としては使いやすい。


 実際にたぬ吉は見失った。

 雰囲気から察するに草魔法で草結びして転ばせるつもりだったのだろう。

 魔法準備が無駄になってしまったようだ。


 すぐに見つけるだろうがその1秒にも満たない間に急接近する。

 左右に大きく揺れつつも素早い接近。

 ゴーレムは身構えるのみ。


 急接近したさいにイタ吉は身を翻して4足から身を起こし尾を持つ。

 その勢いのまま振りまわし斧槍として草ゴーレムの足を薙ぎ払う!

 すると今まで浅く与えてきた分が功を奏してか足を貫通し落とした!


 素早い攻撃の連続で回復しておくヒマがあまりなかったらしい。

 少しずつ自動で治るぶんを大幅に越えたダメージについに草ゴーレムは倒れる。


「わあ!」

「どうだ!」

「……なーんて」


 倒れたと思ったら転がった。

 さらに残りの腕や足や頭が引っ込む。

 形状は球体。


「どわあ!?」


 そのまま勢い良くイタ吉を轢いた。

 玉がゴロゴロと過ぎ去ったあとには地面に埋まるイタ吉の姿。

 下がコンクリートだったら死んでいたかもしれない。


 イタ吉がなんとか這い上がる間少しゴロゴロと転がってやがて足や腕に頭がまた元に戻って復活した。

 ……今脚の復活時間をごまかしたんだな。

 それにこうやって『無限ですよ』アピールをすれば相手の士気は著しく落ちる。


「くっそ……!」

「ではそろそろ!」


 そう言ってたぬ吉は草ゴーレムの腹に飛び込む。

 ガバリと開いてたぬ吉を中に受け入れた。

 全身に草がまとわりつくのが垣間見えながら再び腹が閉じる。


 草ゴーレムの目が赤く輝く。

 たぬ吉操縦の草ゴーレムだ。

 強化魔法のかけ終わりも理由で攻めに入るのだろう。


 さてどう攻撃するのか。

 実際イタ吉はかなり疲労しているし行動力も削れている。

 かなり攻めやすいだろう。


「そうれ!」


 草ゴーレムの中から声が響いて攻撃が始まる。

 接近しそのまま直接パンチ。

 イタ吉避ける。


「……?」

「やあ!」


 もう片方のパンチ!

 避ける。

 大迫力の蹴り!

 避ける。


「……??」


 ブンブンと巨体のわりの素早さでガンガン殴っている。

 問題はイタ吉が毎度ヒョイヒョイ避けていることだ。

 イタ吉が頭に疑問符を浮かべている様子。


 そのまま数発ブンブン振りまわしてハァハァと疲れ切った様子。

 あ、あれー?


「……あ、そうか! もしやお前自身はまだトランスした変化にまったく慣れてないな!?」

「ぎくり」


 あー……

 自動の方が強いとかいうやつかこれは。

 そういえばたぬ吉が高度な近接戦闘は見たこと無いしそもそも草ゴーレムは2足型。


 まるで普段のたぬ吉と違うバトルスタイルについていけてないようだ。

 たぬ吉自身が。

 イタ吉目線で見れば誘導狙いを疑うほどに単純なパンチにキック。


 だがたぬ吉から見たらいつもよりずっと高い視界でそこそこ自分より小さい相手を必死にパンチキックしているということか。

 肉弾戦はたぬ吉にとって今は不利だろう。

 イタ吉チャンス。


 もちろんイタ吉もそれを把握している。

 4足で勢い良く周囲を回りだした。

 それだけでたぬ吉は目が追いつかずあわあわと左右を見るばかりだ。

 そしてふたたび棒高跳びの要領で尾を使って大ジャンプ!


 草ゴーレム頭に着地して容赦なく刃を振るう。

 斬り裂くというよりもはやかき分けて掘っている。


「あわわわわわ」


 草ゴーレムは必死に腕を伸ばすが頭までうまく届かない。

 慌てず転がるなり震えるなりすれば良いのに思考が追いついていない。

 そして(エフェクト)を纏った刃が頭から採掘して行きザクザク掘ると。


「いた!」


 その言葉と共にイタ吉が身を乗り出し手の爪を巨大化させて飲み込まれないようにザクザク刈っていく。

 そのまま中から引きずりだしたのは周囲の草を無理やり切り取られたたぬ吉だった。


「うわわっ!?」

「そうれ!」


 掛け声と共にイタ吉が上空へ蹴り上げ。

 斬斬斬!

 きらめきと共にたぬ吉が何重にも斬り裂かれイタ吉は地面に着地。

 背後で草ゴーレムが倒れた。


 ドゴオオォン!!

 草ゴーレムは魔力の形を失い激しい爆発が巻き起こり拡散。

 イタ吉がそれをバックにキメていた。


「そこまで! 勝者イタ吉!」

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