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二百八十生目 辻斬

 たぬ吉の作り出した草たぬき……仮に草ゴーレムとするとしてそれが再び動き出す。

 開いていた腹部が閉じて姿勢を自動で正した。

 草ゴーレムの瞳部分に魔力の光(エフェクト)が青く輝く。


「自動モードです。後ろについてきてくれます」

「へぇ〜……なくしたり作ったりも?」

「もちろん出来ます!」


 そう言ってたぬ吉が見せてくれた光景はあまりにも奇妙だった。

 たぬ吉が草ゴーレムに向けて大きく口を開くと急に草ゴーレムは形を失い出す。

 多くの繋がった草葉になったら一気にたぬ吉の口内に吸い込まれて行った。


 まるでたぬ吉が草ゴーレムを食べたかのようだ。

 そうして明らかに体積を越えた量を飲み込むとペロリと鼻を舐める。


「あれは草の形をした僕の魔力みたいなんです。もっと総量があれば量産できるのですが……」

「いやあ、十分だよ!」

「ありがとうございます」


 またひとり大きな力を手に入れたようだ。





 というわけで。

 移動してやってきたのは巨大像広場。


 今日も元気に火を吹いているが暑くはない。

 魔法陣様々である。

 私に向かって右がたぬ吉(ゴーレム作成済み)。

 そして向かって左にイタ吉(尾の斧槍装備)。


「うーわ、でっか……」

「どうです? 勝てますか?」

「そりゃお前、俺のほうが鍛えてるんだぞ」


 イタ吉の言い分はもっともである。

 先にトランスしてより多く戦いに身をおき鍛えたイタ吉は確実に強い。

 対してたぬ吉はさっきトランスしたばかりである。


 まあたぬ吉の肩慣らし兼能力チェックのためにイタ吉とデモンストレーションをやってもらおうということだ。


「模擬試合は先取1本形式で行うよ! 死んだら蘇らせるけれど、出来る限り死なないように! 他の魔物の技やそこらへんの物は使わないように! やめと言えばやめてね! では、始め!」


 もちろん殺しはしないだろうが互いにそのぐらいの緊張感を持ってほしいということだ。

 黄色く魔力の光(エフェクト)が草ゴーレムの瞳に宿る。

 たぬ吉より前に出て腕を広げ構えた。


 たぬ吉は小さいから草ゴーレムの影に完全に隠れる。

 イタ吉もたぬ吉本体よりも大きな草ゴーレムに目を奪われていた。


「さあ、お先にどうぞ!」

「たっぷり学んだ槍術、見せてやる!」


 カムラさんあたりからも学んだのかな?

 尾を一部棒状にして構えた。


 イタ吉は勢い良く駆け出す。

 そしてまだ早い段階で尾の刃を突き出し柄を長く持った。

 そこから地面に倒れ込むように刃を地面につけて尾がしなる。


 そのままバネのようにして高く跳び上がった!

 あれは棒高跳び!?

 恐ろしい高さまで跳び上がっていく。


「えっ?」


 予想外かつ素早い跳び上がりにたぬ吉が見失った。

 イタ吉は身を拗じらせながら草ゴーレムの頭まで跳び上がりそのまま赤い(エフェクト)をまとう尾を縦に振るう!


「そこだっ!」


 しかし草ゴーレムは見逃していない。

 しっかりと胸の球体部分で受ける。

 だが勢いある刃は鋭い。


 刺さる。

 顔を歪めたのはイタ吉の方。

 理由はすぐにわかった。


 刃は確かに刺さった。

 それだけである。

 切り払ったり崩したり貫けなければただ草をすこし切っただけだ。


 イタ吉が地面におりて距離を取り尾を引き抜けば正体がわかった。

 大量の草葉が刃に絡みついている。

 あのゴーレムを作る時に何重にも草を層にして包んでいた理由がこれか。


「このゴーレムは大食いなんですよ」

「うわっ、なかなか取れない! もう、この!」


 イタ吉がなんとか草を爪で斬り払う。

 草ゴーレムの損傷はあっという間に草で埋まった。

 いっぽうイタ吉の刃についてきた草は動かないようだ。


「そろそろこっちも」


 そう言ってたぬ吉が用意していた魔法を唱える。

 緑色の(エフェクト)がたぬ吉と草ゴーレムを包んで堅牢さが上がったようだ。


「さあ次は――」

「まだまだ!」


 イタ吉は4足で低く駆け出す。

 ちょこまかと早く動くのをやはりたぬ吉は追いきれていない。

 ゴーレムはじっと身構える。


 黒い光を身に纏いゴーレムの脚部を尾の刃で辻斬り!

 あまり深くない。

 しかし1撃で仕留める気は元々ないらしくとにかく素早くヒットアンドアウェイ。


 ザクッ、ザクッ、ザクッ!

 たぬ吉には追いきれていないし途中から追うのを諦めていたが草ゴーレムが機敏にたぬ吉の身を守っていた。

 実際イタ吉は虎視眈々と狙っているものの踏み込む前には草ゴーレムが立ちふさがる。


 結果的に草ゴーレムに集中的に傷を与えた。

 たぬ吉は魔法準備に気を回したおかげで素早く唱えられる。

 今度は緑の光が2つの種のようになってたぬ吉と草ゴーレムに勢い良く刺さったようにみえた。


 そこから光が徐々に体内の血管や草の繊維の一部を光らせる。

 近くだけだが管の影が浮かび上がるのはちょっと面白い。

 あれは……[徐々に生命力回復]効果らしい。

 "観察"は便利。


 少しずつ削った脚が少しずつ戻されていく。

 さすがにこれにはイタ吉も焦っている様子。

 さあどうする?

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