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二百七十六生目 抑熱

「売れるね」

「いけますね」

「みんなも喜ぶね!」


 私と妖精たちは将来のビッグビジネスのひとつの予感に笑い合う。

 恵みの泉とその容器。

 改良を重ねていけばかなりの物になりそうだ!


「うん? そういえば……」

「どうしました?」

「いやさ、最近ここの迷宮が暑くて困っていたんだけれど……」

「そうかい? 僕たちはヘーキだけど」


 まあ妖精たちは基礎が植物だからかもしれない。

 それに元来ココに住んでいる魔物だし。


 私は恵みの泉が入っている器をマジマジと見つめる。

 保存……器……魔法記述……あっ!


「そうだ! 群れで涼を取る方法を思いついたかも!」

「そうなんですか?」

「うん! とりあえずこの記録取りはもう少し続けて! お願い!」

「わ、わかった!」


 彼らに恵みの水持ち運び計画は任せるとして私は彼らに別れを告げたあとに空魔法"ファストトラベル"した。





 私たちの群れへワープで到着!

 うん、暑い!

 周囲の様子を見るにその感想はみな同じらしい。


 魔物たちは水を浴びるように飲みニンゲンの業者たちは手うちわで仰いでいる。

 さらに例の巨大像の火は完全に止められている。

 もちろん理由は熱いから。


 色々と調べなくてはならないことが出来たから"以心伝心"でカムラさんに呼びかけ私は自分のテントへ。

 入れば奥に本がたくさん積んである。


 ニンゲンの常識に関するものから魔法習得本まで多数揃えた。

 あれから何件も本屋を巡っては買い集めた知識の書。

 このなかから必要なのをピックアップして……と。


「おまたせしました」


 悩みつつ本を選んでいるとカムラさんも本を抱えてやってきた。

 机の上に広げたそれらはやはり私が欲している類の本。

 魔法記述そのものや魔法転用方法それに『前例』。


「もしかするとと思うものはひと通り持ってきました」


 あったら良いなぐらいだったが、もしかしたらかなりの楽が出来るかもしれない。

 さらにユウレンもテントに入ってくる。


「この暑さ、本当に何とか出来るのかしら……? まいっちゃうわよね」

「なんとかしたい、なあ……」


 私たちはさっそくこの本たちから有用な情報をピックアップするべく読み漁ることになった。





 暑い部屋内。

 大量に試行錯誤された紙上の争い跡。

 惨劇が繰り広げられたような破損した物たち。


 そして机上にある1枚の紙が青く光り輝いている。

 私とユウレンはそこに両手をかざして……


「「涼しいー!」」


 もはや何時間かかったかもわからないがやっと出来た。

 空間や飛行の魔力がある魔石たちを用意して絶妙な配合でチョークのような粉にして描いた魔法陣の記述。

 普段から火山の迷宮で鉱石を集めておいて良かった。


 これは空気中に火魔法"クールダウン"をかけ続けている。

 快適な気温になるように。

 肉体や炎など他のものから熱を奪わないように。


 冷房とは違うこれは空気中の熱エネルギーだけを下げてくれるので画期的だ。

 やっていることはなかなか高度でそれぞれの対象の基礎体温などを測りつつ常に快適な気温になるように周囲の熱をコントロールする。

 ようはすごいエアコンの機能を参考にした。


 前例もあった。

 寒すぎる大地……おそらく南極圏あたりで冒険するためにキャンプを覆う程度に『暖かくする』もの。

 砂漠地帯でオアシスでより涼めるように『涼しくする』ものあたりだ。


 私達のこれは出来るだけ快適にすごせるようにそれらに手を加えたものだ。

 気温がそうでもない時は切らないとドンドン熱くなったり寒くなったりするのでは扱いづらいから。

 こう言う風に魔法やら科学やらで便利環境をつくっていけば快適生活も夢じゃない!


 ……そのための開発は普段から自分以外の誰かに任せないと。

 私だけでは手が足りないしそもそも外出時も多い。

 私の担当は探索系だからね!


「よっこいせ! っと。こんなもんでいいか?」

「うん、ありがとう。まあ今度は巨大魔法陣作るから作業量が大変なことになるけれど……」


 魔石運びはイタ吉とイタ吉の冒険者組合協力者たちだ。

 あいも変わらず仕事に訓練に探検にと精を出しているが彼らの在庫は彼らの管轄。

 イタ吉を通すのが筋だったからだ。


「まあそれはともかくこの膨大な量でどうするんだ? 在庫ひっくり返してもってきたんだぞ?」

「それはね……魔法陣でこのアノニマルース全体を包むからね」


 ユウレンが未来の作業量を憂いて顔を机に伏した。

 カムラさんも思わず肩を落とした。

 イタ吉がそれぞれに目を走らせて思案。


「……手伝うよ、何すれば良いんだ?」

「ありがとう……これが終わればめちゃくちゃ快適になるから……」


 この後ユウレンは骸骨たちを呼び出して魔石を粉加工。

 私やカムラさんそれにイタ吉たちはアノニマルースの外側へと向かった。

 つまりはテント群の外側。



 そこから……設計図どおりに魔法陣を描き魔法記述を描き込んで破綻せず仕上げる地獄の作業が繰り広げられたことはもはやわざわざ語るまでもなかった。

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