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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
成獣編 〜破壊からの再生は〜
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二百七十ニ生目 崇奉

「す、すごい……」


 照れ笑いするハックに向かってみんなそうとしか言いようが無かった。

 炎を使った巨大芸術。

 魔法のひと品。


 もはや何も言わなくともこれが『火への信仰』を象ったものだと誰もが理解した。

 そして炎が一瞬空を焼いた光景や爆心地であるこの場所。

 もはや言わずもがなである。


「これ、もしかしてあの時の爆発をイメージして?」

「うん! あれ以来みんなどこか怖がっちゃっていたし、元気がない仔もいたから、きれいにしちゃって良い光景にしちゃおうかなって! 良かったかな?」

「良かったよ!」

 

 その時の光景を知らないアマネが真っ先に飛び込んでいったがその場のみんなの思いは同じ。

 わいわいとハック中心に集まりハックやその仲間を褒め称えた!


 そうして少しすると騒ぎをききつけて多くの魔物たちがやってきて……

 ……遠くから見たこともない速度で走るユウレンが来ているのですが。

 その勢いのままユウレンはハックに食いつくように詰め寄る。


「先生! 先生!? アレ完成品ですよね!? できたら呼んでくださいって言ったじゃないですかー!!」

「うぁ〜ごめ〜ん、忘れてた〜」

「酷いです先生〜!!」


 芸術としてはユウレンが生徒でハックが先生である。

 グラグラ揺さぶられてハックがガクガクと揺れているのはまあどうやら自業自得のようだ。

 ……あ、そうか。


「どうしてハックたちだけでこんな大掛かりな仕組みが出来たのかと不思議だったけれど、ユウレンが知識を?」

「んー、半分はそうね。私も色々調べ回ったし。ただかなりの部分に先生オリジナルの仕組みと閃きが詰まっているわね。先生の偉業が誰にでもわかりやすい形で示されていて、しかも圧倒的な魔法的構築物! 永遠のモニュメントにすらなりうる凄いものなのよ」


 ユウレンが涙を流して火の宗教像を崇めている。

 ユウレンみたいに感涙はしなくてもあまりの迫力で圧巻。

 いつまでも見ていられそうだった。

 ソーヤが紙とペンを取り出し光景を描き込んでいる。


 場が盛り上がれば当然賑やかになり当たり前のようにお祭りが始まる。

 火のモニュメントを囲んで踊って食べての大騒ぎ。

 私達ホエハリ系統に強く酔わせる果物も解禁された。


 ニンゲンたちや他の魔物にはカムラさんたち不死(アンデッド)組が酒瓶やら樽やらを大量に運んできた。


「街で少しずつ買い溜めておいたものですが、こういう日ですからパーッと解放しましょう」

「良いんですか! じゃあ私1番!」

「お言葉に甘えさせてもらって!」

「僕はお酒の代わりに何かを……」

「お子さまや飲めない方は少々お待ちいただければ、代わりのものをお出しします」


 飲めや騒げやの大騒ぎ。

 私が言わずともモニュメント中心にニンゲンや魔物が輪になって踊りだす面白おかしいことになっている。

 私はチビチビと果物でほろ酔い。


 インカは豪勢に食べて仲のいい蛇や蜘蛛たちと共にはしゃいでいる。

 なお果物酔いにはあまり強くなくあっさり出来上がる。

 一方ハックはかなりハイペースで果物を食べてもあまり酔っているわけではない。


「にゃ、あんまり酔わないんやね〜」

「お姉ちゃん酔ってるね!? うーん、僕は元々あんまり酔わないかなー。でもねこの時は、なんだか次の作品のアイデアが出てきて止まらないんだ! 不思議だよね〜」


 芸術に酒に文化そして宗教はセットやらなんやら言われることがあるがハックはそれを体現していそうだ。

 本当にこっち方面に力を出してきている。

 ハックもケンハリマらしく火の光を額の3つ目が妖しくはね返す。


「それにしても、僕よく思うんだよ。お姉ちゃんがいなかったらどうしようもなかったなぁって」

「うん?」

「僕が使う火も土を固めて作る像もお姉ちゃんからモノとコトをもらったから。お姉ちゃんがいなかったら、僕はきっとただ狩りが下手な魔物でうまく生きることすら出来ずに、どこか息苦しく生き続けていたのかもなあって」


 そんなことはないと軽く否定しそうになってハックが見つめる火の向こうに何を見ていたかが分かった。

 森の迷宮で知り合ったホエハリのおじさんだ。

 彼は天才で変わり者でその代わり……理解者もおらずはみ出しモノになっていた。


 あれはハックが一歩間違えればなっていた姿かも知れない。

 そのことをハック自身が重々承知しているようだった。

 言葉を選びかねている間にハックが話を進める。


「まあ実際はもうこんな風にみんなで楽しくやれていて……こんな楽しい日々が何かによって消されないように、僕も頑張る!」

「ふふ、十分ハックは頑張っているって! ご褒美にグルーミングしてあげよう〜」

「うわ! やっぱり酔っている! グル魔だ!」


 グルーミングとはいわゆる毛づくろいである。

 というかグル魔ってなんだろう?

 まあいいやそれそれ!


「ほら、ケンハリマは額の目は魔力で補強されているし、みんな目だから触らないけれど、実際は……ニャキュー!」

「うわー! ちょっと! あ、そこはダメ、ひゃあ! んあっ! ああっ!!  ふわっ……」


 思ったより対して抵抗もされずにペロペロと。

 まあ小さい頃はよくやりあったもんだしね。

 獣同士だしふつーふつーだよ。


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