二百七十一生目 巨像
「あ、もう仲良くやっているみたいですね!」
「おや? どうしてここにバローが……?」
「意外ですね」
「驚きですね」
ニンゲン冒険者5人組の相手をしていたらバローくんがやってきた。
いざというときに交戦を止めるはずが既に和やかなのに違和感を抱いたらしい。
なのでざっくりとこれまでの経緯を説明。
「かくかくしかじかって感じかな」
「ええ!? 以前からの知り合いだったんですか!」
「私も彼らだとは知らなくて……」
わりとこっちも困惑した。
双子は知らなかったけれど。
「それでバローくんやキョーサイさんワチューさんとの関わり合いは?」
「それは僕から説明しようかな。森の迷宮での冒険をひと通りしたあとに、拠点も移して、そこが『銀猫』の冒険者ギルドがあるところだったんだ。
そこには彼女ら、キョーサイとワチューそれにバローくんがいたんだけれど、チームとして相性が悪かったらしくてね」
「子どもを護るって言いたいのはやまやまなんだけれど」
「隠すのは得意でもどちらかといえば護られてばかり」
ソーヤの言葉を受けて双子がつらつらと区切りなく話をつなげた。
双子同士の言葉のあいだには1拍すらなくてまるで1人が話しているようだ。
隠すというのはさっきのニンゲンたちの姿が見えなくなった事だろう。
「私は相手を弱め」
「私は味方を強め」
「そして僕は広く浅く魔法を使えて……まあお察しの通り、誰も前に出て攻撃や防御が出来る人がいないんです」
双子もうなずく。
盾になれる者がいなくては安心も出来ず場合によっては魔法を唱える前にボコボコにされることだろう。
「話を戻してと。僕らがそこに合流することになって、バローくんは歳も離れているし5人構成から外れてしまうからね」
「鍛錬や環境保全のために必ず1チーム5人以下で構成すること……でしたっけ」
ソーヤは肯定した。
冒険者の規定で決められていることだ。
大勢で場を荒らすのは軍の仕事だから……という面もあるが国が管理しきれない力を持つ民衆の誕生を恐れている点も大きそうだ。
それとは別に自由に動かしやすい強力な味方も欲しいと。
まあそりゃあそうなるよね。
「僕だけまだランクも低かったですからね。そこからは少しずつ個人で仕事をこなしていました」
「そして私たちはかなり相性が良かった! まあ私が大剣で、ソーヤがナイフで前に出るからな!」
アマネがニッと笑う。
双子が強化や弱体を仕掛けている間に突っ込むアマネとソーヤの姿が目に浮かぶ。
傷がついたらエリにより回復と噛み合っている。
「力と信頼を付けた僕らは昇給のための冒険依頼を受けることになって、それでここへ来てみたら……って感じだよ。正直今でもかなり驚いているんだけれど……」
「それじゃあ今度はこちらも」
私達は話せる範囲で彼らに語った。
こっちもまあそれなりの冒険はしてきたと思う。
「かくかくしかじか……なわけです」
「またちょっと目を離したスキに……」
「命はひとつだよ?」
「「大変でしたでしょうに」」
死にたがりを見る目で見られた。
違うから!
向こうから危険がやってくるから!
その日の夜。
とりあえず予定通り彼らを快く迎えることとなった。
向こうも断る理由がないとのことで今は宴に参加してニンゲン用の食事を食べている。
カムラさん監修でニンゲンの街で買ったものとここにあるもので仕上げた料理たち。
お肉も野菜も存外豪華にしあがったから満足してもらえた様子。
カムラさんが気配りして最適な料理出しをしてくれ今は食後のお茶を配り終えたところだった。
「いやーごちそうさまでした! 満足満足!」
「冒険中の食事はあんまりロクではないですし、貧乏ですから普段も豪華な食事は無理ですし……」
「僕もこんなにおいしい食事は久々です」
「「美味しい食事でした!」」
そういってもらってなによりだ。
ゆったりと紅茶をすすっているとハックたち複数の魔物が物を運んでいる場面に遭遇した。
あれは……前ハックが作っていた謎の置物たちか。
「何をしているの?」
「あ、お姉ちゃん! お姉ちゃんも、ぜひ見に来てきてよ!」
「え? う、うん」
「おや、お祭りかな?」
「私達も見に行こー!」
私やニンゲンたちも合流して大所帯で群れの中心近くへ。
ここは爆破され周囲に穴が広がっているままだ。
中央には無事に凹まずに存在する地形がそこにいた術者の無事を知らせている。
あの少年ダカシは……今は一体どこにいるのだろう。
そんな思いを馳せていたら周囲が吹き飛んで凹んだ中央の高台みたいになってしまっている部分にハックたちがどんどん運んできた物を乗っけていく。
「はい、次はその部分! そうそう、乗せた後にカチッとハマるまで回してー。よし!」
「……えっ! もしやこれって!」
一体どこで習得したのか様々な組み立て方でバラバラだった像たちが積み重なっていく。
最後のひとつを妖精が乗せて固定した。
そして下側は太く大きくつくられ頭側は細めの1つの巨大芸術が完成――
「まだここから!」
そう言ってハックが言い"率いる者"で私から"フレイムボール"を借り足元に着火。
すぐに蓋をすると異変はすぐに現れた。
炎が巨大像の至るところから噴きでたかと思うと頭側から強く炎が吐かれる!
おそらくホエハリのような魔物をイメージした顔が照らされ広がる炎は夜をかたどった。
「えへへ、どうかな?」