二百六十九生目 尻尾
他のふたりが本の買い物を終える間に私は本屋の外へ。
そこらへんをフラフラと歩いて近くをウインドウショッピング。
ふーむ。
服とひと言と言っても冒険者たちが着るものとそうでない普段着では見た目は似ていても性能がまるで違うのか……
ところで私の背後だが。
2か3歳児程度の子どもが私の尾を掴もうと善戦している。
親は近くにいるが親同士の話に夢中のようだ。
「ん〜」
言葉はまだうまくは話せないようで単純な発音を繰り返しているが手の動きはなかなか正確。
ちょっと遊びに付き合ってみよう。
前に有る服を見ながら"鷹目"で背後を見ながら手を避けるのだ。
しっぽを下げれば食いついてきて直前で上に上げる。
上に伸ばしてきたスキにスルリと右へそれた。
ここで潜ませていた使っていなかったもう片腕が瞬時に伸びる!
ただ私もそれらを見ていたから回すように避けた!
すかさず右手が返すように掴みかかる。
強く振って回避。
激しく動いている間に子どもは構える。
手をゆっくり動かし両手に力をこめて指を折り曲げポーズを取った。
そして私がわずかに揺らしを抑えた瞬間に……
ババババハバッ!
目にも止まらぬ連続掴み!
意外に早い!
避けられることを前提としたフェイントを織り交ぜて掴む! 掴む!
尾先を滑るように避け回るように避け縮めるように避ける!
ここで両手を利用した手はさみ!
「あ、こーら、他の人で遊ばないの!」
そこで子どもが母親に抱きかかえられた。
さっきまで親同士の会話でつかうトーンよりも低くて明らかにこども向けだ。
「ごめんなさいね、遊びに付き合ってもらっていましたか?」
「いえいえ、こちらも楽しませてもらいました」
今度は外向け。
切り替えがうまいなあ。
互いに礼を言い『それでは』と別れる。
そのころにちょうどバローくんとカムラさんが本屋から出てきた。
「知り合いですか?」
「ううん、まったくしらない人だよ」
バローくんにそう返す。
さて次はどこへ行こうか。
「ユウレン様に良い本も手に入りました。次は食料でも見に行きましょうか」
……ん。
今のは。
『ローズ?』
『うん? なんだいー?』
"率いる者"で熊ことジャグナーに"以心伝心"が借りられ念話が飛んできた。
すぐに応対する。
なんとなく手を耳にやってしまうのは電話っぽいからだろうか。
『例の荒野の迷宮付近にいるニンゲンたちだが、見つけたあとしばらく見張っていた。そしてそろそろこちらの群れを見つける位置に入る。手がすいていたら来てくれ』
『本当!? わかった!』
念話を終えてバローくんとカムラさんに事情を説明する。
ふたりとも2つ返事でオーケーを出してくれた。
3人で物陰に隠れ空魔法"ファストトラベル"!
群れへ戻り私たちはすぐに連絡を受け取れるように待機する。
私が前へ出て"鷹目""透視"で冒険者たちを見張るのも良いがそれよりも既に構築された群れの情報ネットワークのほうが頼りになる。
今もほぼ5分ごとに最新情報が届いていた。
「相手がここの場所を見つけ一直線に向かっています。接触まで数分」
最新の報告が入ってきてすぐに持ち場に戻る。
見張り台の監視も機能している。
数は5人。
話とも一致していた。
「たぶん、僕が出ていけば交戦にはならないと思います。手を出さずにいていただければなんとかなるかと」
「うん。今いる位置はそこそこ近いテントだし何か先制攻撃されても問題は起きにくいはず」
「彼らも冒険者です。魔物に警戒はすれど殺そうとはしないでしょう。1番の問題は逃げられてしまうことですね」
バローくんやカムラさんが話したとおり来てくくればなんとかなるだろう。
ただし逃げられると最悪だ。
ここを強制的に破壊しにニンゲンたちが数をなしてやってくるかもしれない。
「今は魔王復活関連と疑われそうだからなあ……」
ジャグナーがそうつぶやいたとおりだった。
程なくしてまた連絡の魔物がやってきた。
「緊急連絡です。彼らの姿が視認できなくなりました! おそらくその類の魔法かと!」
「警戒されているか! ローズ!」
「わかった、出る!」
ケンハリマ、つまりいつもの姿状態の私は急いで魔力をためる。
空・土・火・光の魔力で"進化"!
エアハリーになりテントから飛び出した!
針を展開し翼として空へ浮かぶ。
地形的にいくらでも高い場所はあるからそこを足がかりにずっと高いところまで浮かんだ。
地面から2〜3mしか飛べない制限はあれど今はあまり気にならない。
空から来る方へ視線を向けてから光神術"インファレッド"!
ふつうに見ても見つからなくても……いた!
人型熱反応5人が移動している。
『見つけたよ! だいぶ近くまで来ているから見つからないように隠れて!』
『わかった、通達する!』
ジャグナーに連絡を入れて観察を続ける。
こちらの面々はすでにいくらかは待避済み。
ニンゲンが来る側のテントには誰もいない。
さあ、勝負の時だ。




