二百六十六生目 激運
ドラーグの運が恐ろしいことになっている話を聞き続けたっぷりとドラーグの真価を感じた。
ドラーグが殆どの実力もなくまともな教育もなく1年ほど野良でさまよえた時からナニかあるとは思っていたが。
ドラーグはツイてる星の下でうまれている!
もちろんドラーグからすれば平穏と堕落的生活を享受できる中でただダラダラと生きれない。
そんな時点でまったくツイているとは思っていないのだろう。
ドラーグ自体の性質や意思をまったく無視して幸運を引き寄せる。
ドラーグはニンゲンにモテても種族的にニンゲンが犬に懐かれるようなものだろうし目立つ方向に運が向くだなんて隠れているのにとても困る。
本人のコントロール外の激運。
時には苦しめるかもしれない諸刃。
正直、魔王復活秘密結社なんてものに二連続であたる私の引きの悪さに多少分けてもらいたい。
簡単に言えば『特等を引き続ける力』だ。
無意味なやっかみをかい不正を疑われ実力も疑問視される。
その下の1万商品券や洗剤がほしくても旅行券ばかり手に入る。
ハタからみれば得でもソレしかひけない本人にとってはかなり困る。
多くを語りひと息ついた所でドラーグはそうまとめに入った。
目をらんらんと輝かせながら。
「僕たちを売り込めますし、あの街からたくさん買い付けを行えます! それにこの群れもさらに発展できますよ! やりますか?」
「うん、よろしく」
「ではさっそく!」
そういってドラーグはニンゲンの街で買ったのか大きめの紙を取り出す。
サラサラっと書いていくのはドラーグの大規模発展作戦(仮)だった。
かなり大規模なものになりそうだ……
「この土を切り売ると言うのは?」
「そのまんまの意味なんです。この迷宮の地面はかなり優秀な資材になりうるのですが……この迷宮の外は山の上ですから、今までまともな運搬はされてこなかったんです。そもそも迷宮に立ち入る事自体が危険ですからね」
確かに荒野の迷宮の地面はとても頑丈で岩のようだが……まさかニンゲン世界で売れたとは。
しかもドラーグが独自調査した市場価格はタダの地面に払うというよりもはや武器に使う金属ほどある。
これはひょっとするとひょっとするかもしれないな。
「それに加工できる人たちも見つけました。どうにかして彼らとも協力できたらなあとは思っているのですが」
「まあ、魔物相手には難しいよね……」
「ええ、僕が身を隠している時の知り合いではあるのですが、だからといって魔物と明かしているわけではないですから、どう転ぶか……」
ちゃっかりその相手とも知り合っているドラーグ。
人脈がわずかな日数で広がりすぎている。
不安になるほどである。
色々と話をまとめて早速ドラーグがその相手と交渉を進めることに。
基本はドラーグにまかせて私は別のことをすることになった。
カムラさんを連れて小さな魔物達の街へ!
"ファストトラベル"で移動した私は"進化"してホリハリーに。
そのまま職人街にある服屋と靴屋を訪れた。
今日は約束の修復した服を受け取る日だ。
「こんちにはー」
「お、来たね来たね!」
「こんにちは、出来ているよ」
賑やかな靴屋に凛とした服屋。
彼らが工房から引っぱりだしてきた服はすっかり新品同様だった。
戦闘で激しく傷ついたはずなのにさすがだ。
「困ったことに、服はあなた達に着られたいらしい。そうは作ったけれど、想定より馴染みが早い」
「え? どういうことですか?」
「着てもらった方が、早いかな」
早速渡されてとりあえず私だけ着てみる。
カムラさんはアンデッドとは言えニンゲンベースだからさすがにマズイ。
ウィッグつきのミニターバンに南アジア風のサリーだ。
靴もしっかり履いてと。
「あれ、なんだかすごくしっくりくる! それに力がわいてくる気も……?」
「うんうん! 靴も服も生きているからね! 色々と練り込んで作ってある服と靴に所有者の力、ようは血や汗や毛それにエネルギーを得ればそれらを吸収して変化して、バーンさ!」
「まあようは、服として強くなる。見栄えも違うよ」
「確かに、前よりもステキになりましたよ」
今は確認できないがもしや頑強さも増しているかな。
あのガドウ市長の礼服のように戦う力が増していそうだ。
あと"鷹目"で確認しても服に着られている感じがなくなり馴染んでいる。
おもわぬ収穫だ。
私もさらにこの服が好きになれた。
「じゃあ、また見せに来てね」
「待っているからなー! その服と靴ははきっとすごく将来有望だからな! 振り回されないようにガンバガンバ!!」
「え? ええと、はい!」
やや不穏な言葉を聞いたがまあ多分大丈夫だろう。
服だし……
こうして私たちは服を受け取って帰宅した。
「オーケーでした!」
「ええっ!? 早い!」
「それと親方さんです」
帰って少ししたらドラーグに呼び出されニンゲンの街へ行ったら開口ひとこと目がこれだった。
もう業者と話ついたの?
そしてドラーグが指したのは背丈が随分と小さい代わりにやたらと筋肉のついた身体が目立つニンゲン。
ドワーフか。
「おう! 話は聞かせてもらった! 例えあんたらが誰でも、このあんちゃんはイイヤツだからな! 俺の腕にかけて仕事させてもらうで!」
「よ、よろしくお願いします!」
ドラーグ、めちゃくちゃ慕われているな……
詳しいプランはドラーグに任せても本当に大丈夫そうだ。