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二十五生目 縄文

 さあ実験だ!

 火魔法からファイアーボールを選択。

 行動力がぐっと吸い取られる。

 土魔法のスピアほどではない。

 それと同時に目の前に火の玉が生成されてゆく。

 約1秒ほど膨らみテニスボールほどの大きさになった。

 尾を引きながら飛んでゆく。

 直線状に飛び私の等身5つほど離れた木の枝を積んだものに当たる。

 ボウッと小さな爆炎。

 木の枝はそれにより焦げた。


 わかった事はそれなりの距離は威力を保って飛んでゆく事。

 着弾すると爆発すること。

 威力そのものは土魔法のスピアに劣る事。

 飛ぶ速度はプロではない大人が投球したぐらい。

 そしてまだ乾ききってない木の枝に一瞬炎が当たっただけでは燃えないという事。


 最近は木の葉や枝が自然に落ち私が知る限り冬が近づいている気配がある。

 秋の真っ只中だ。

 なので簡単に発火するかなと思ったがまずは木の葉からの着火が必要らしい。

 ちなみに安全性確保のため水場近くで誰もいない所でやってる。

 遠くでダイヤ隊とハート隊がこちらをチラチラ見ているがあれは職務だ。

 私がボヤ騒ぎ起こしたらたまったものじゃあないからね。

 いきなり炎を出した小さい仔の管理しなきゃいけないとしたら、私は胃が痛む。

 仔どもの火遊びはいけません。


 近くでイタチがその光景を眺めている。

 その油分を含んだ毛皮はさぞ燃えそうだね。

 私の思考を読んだのかイタチは逃げていった。

 まあ、イタチの丸焼きはクサイだけだろう。


 そうそうイタチと言えばイタチは雑食性らしい。

 もちろん肉も食べる。

 アクだらけのきのみを食べなかったため勘違いしたがあれは単純に好みの問題だった。

 私の情報サルベージは確実性はない。

 結局私が間違えて記憶したものも一緒に引き上げてしまう。

 短時間であればあるほどやりがちなため前世の知識チートとはなかなかいかない。

 運用は慎重に行おう。

 雑食性だとわかっていたら私の料理第一号はあんな無残な事にはならなかったのだ。

 火を使えるようになったからまた調理したい。


 そのためには土鍋バージョン2がいる。

 今の土鍋は魔力がこもったままで頑強だがなんでもかんでも耐えれるわけではない。

 それに料理としては土が溶けてきてしまったりヒビが入るのは困る。

 下は大火事上は洪水でも耐えるようになってもらわねば。

 というわけで、私は野焼きをする。

 ここからは数日間かけて準備だ。


 しばらくはスペード隊以外の外狩りはないらしい。

 それに縄張り内ならハートペア同伴で移動可能になった。

 オジサンは縄張り外だしおそらくひとりで行かねば良い顔はしない。

 オジサンはこの群れではないジョーカーの可能性が高いからだ。

 私ひとりで外へ行けるようになったら会いに行こう。

 かなり強くならなきゃなー。


 というわけで、私にとっては自由時間が増えたという扱いだ。

 ハートペアと兄弟たちが散歩しにいってる間とかにちまちまと準備をする。

 地面をとにかく掘る。

 少なくとも土鍋はしっかり入らなきゃならないので大きさは必要。

 次に外壁が崩れてこないように固める。

 人の手じゃないのでやりづらい。

 そして木材をひく。

 季節柄そこらへんに落ちてる枝だ。

 まあ季節ってだけではなく野生生物たちが活動している痕跡でもあるのだろう。

 その上に土鍋。

 木材を隙間にガンガン入れていく。

 前世の知識でもよくわからない部分はあるので、ある程度カンだ。

 そして落ち葉も詰める。

 季節柄枯れてるので良く燃える。

 ちなみに一連の作業は群れから少し離れた所で行っている。

 人に群れの場所がはっきり見つかったらシャレにならないからね。

 とは言ってもおとなが見てる範囲でなければならないのでそんなに遠くではない。

 今烏が襲ってきても群れに逃げ込める範囲だ。


 さて、皆さんは火遊びがお好き?

 皆さんって誰だろうという考えは一人芝居の時考えてはならない。

 私は火遊びが結構スキである。

 中に芋を突っ込んで焼いて食べるときっと美味しいだろう。

 残念ながら生まれ変わってから芋は見てない。

 いや、正確には地面の下にあるからどれが芋なのかわからないのだろう。

 ただ、焼くのは何も芋じゃなくても良い。

 土鍋を焼いたって良いじゃない。

 燃料はめちゃくちゃ大量に用意したがこれでも足りるかは分からない。

 なぜならこれから60時間は焼くからだ。

 事前にハートペアに許可をとってあるのでその点は大丈夫。

 問題は私の根性と土質だ。

 確かに私の群れの地面は柔らかく水場も近く粘土質も含んでそうだ。

 だがこの土鍋がどの程度そうなのかさっぱりわからない。

 脆い土ならばどれだけ焼いてもムダだ。


 実験だ。

 火遊びだ。

 ワクワクする単語しかないがその気力もいつまでもつか。

 そうして私のまたひたすら長い戦いが火蓋を切る。

 フレイムボール!

 火の玉が木の葉にぶつかり炎が弾けだす。

 さあ、火遊びの始まりだ。




 最初は順調だった。

 きちんと火が回ってくれてめちゃくちゃ煙臭い。

 まあ私の鼻が良すぎるせいだ。

 煙は上にのぼっていくためすぐに慣れた。


 もくもくするため、なんだなんだとホエハリの仲間たちがやってくる。

 そして私がなんやかんやと説明するとよくわかってない顔をして帰っていく。

 すまない、私はこういう説明はうまくない。


 インカとハックも来た。

 冷たい風も火の前では少しは温い。

 毛皮のおかげで寒さはそこそこ防げるとは言えあったかいのはやはりありがたい。

 3匹で火を囲み和んだ。


 おとなたちもちょくちょく来ては火を囲むようになった。

 イタチもいつの間にかいる。

 想定ペースより燃料が減るのが早かった。

 ただそれを理解して他のホエハリたちが集めてきてくれた。

 インカとハックは特にはりきってくれたのでありがたい。


 夜にはクローバー隊がそこで語りだした。

 旅の一夜と言った雰囲気が出てて影が踊れば心も踊った。

 クローバー隊が語るということは他のおとなたちもついてくるということだ。

 何のために群れから離れたんだっけ……

 ただ、ぬくもりはそこにあった。


 風が吹いて火が消える事はないが火がめちゃくちゃ増す事はあった。

 延焼してはシャレにならないのでヒヤヒヤする。

 水魔法は誰も使えないのだ。


 そして私はひたすら焼き続けた。

 中の温度をはかるものや管理してくれる機械はない。

 もう、運だ。

 もちろん安定している間は訓練を欠かさない。

 近くに常に誰かいるから少し気恥ずかしい。

 将来のためにタンパク質摂取も怠らない。

 それに今さっきクローバー隊のメスホエハリに聞きたかった話もきけた。

 ならば後は私はひたすら目標に向けて努力するだけだ。

 まあ……息抜きはしながらね。

 根詰めると絶対悪いことが起きるし。

 あらゆるものごとはあそびがなくちゃ簡単な事で破綻する。

 頑張る……つまり忍耐しとおして努力するのも大事だが場所による。

 瞬間的なパワーを発揮するのは今ではない。

 その日のために今日を楽しく生きたい。

 それが私の生き方の一つ。




 長く燃えていた火がついに鎮火した。

 60時間も燃やし続けたせいで物珍しい炎が消えて周りの仲間たちは残念そうだ。

 多分私がいなかったら近づきすらしなかったろうけれど。


 さてそれでは御開帳。

 燃えカスを取り除き、いざ、いざ。

 ……うーん……

 割れてる!

 まあ仕方ない、むしろ成功する方が奇跡的なのだ。

 というわけで失敗。

 一つ目は。

 そう、一つ目。

 この掘った穴はしっかり深く広く掘ってあり一つだけではない。

 もう一個私が後から作った土鍋が入っている。

 より粘土質っぽい所で土魔法を使ってまた1から作っておいた土鍋。

 燃えカスをえっちらこっちら出す。

 すると美しい形のままの土鍋が出てきた!

 おお、おお!

 まだ土器という感じで火力が足りない様子ながら焼けた!

 何もかもが時間のかかる作業だから純粋にうれしい!

 太古の時代に人類が初めて土器を焼けた感動を今私が味わっている気がする!

 ちなみに私の嬉しそうということだけは周りにわかってもらえた。

 何がどうなって喜んでるかまでは流石にわからないか。

 ただ本当に嬉しいからみんなも喜んでくれてありがたい。


 こうして私は文明への第一歩を手に入れた。

本当に作るとは思わなかったと言われました

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