二百六十ニ生目 魔投
「そのにおいは……」
「さて、新しくニンゲンたちが突入してくるかもだけど、私達の味方もいるからね。敵は私達がやる!」
牙や爪を離してくれた彼らはともかく侵入者にカジノ員が複数人やってきた。
私は傷を手っ取り早く光魔法"ヒーリング"で癒やして突撃する。
観客側から悲鳴とどよめきが合わさり逃げようとするものたちが発生した。
こっちは問題はないがカジノ員が派手な攻勢に出にくくなるから良い。
懐から凶器を取り出したカジノ員に……
"正気落とし"! バーン!
それ"正気落とし"! バーン!
もいっちょ! ゴーン!
そいつも! ドーン!
最後の! バキッ!
流れるように剣を叩きつけて5人ほど気絶させた。
次へ急がねば。
カムラさんとバローくんも対処が終わっていて次の扉をあけている。
私もその後を追う。
ドンッ!!
「うわっ!?」
「むっ」
廊下の向こう側から発砲!
私達を見るやいなや武装したカジノ員が撃ち込んできた。
凹凸のある廊下だったので影に隠れて発砲をやり過ごす。
連射は出来ないらしいから今の内。
まだまだ有るよ投げナイフ!
投げるフリして魔法でゴー!
彼らが構えていた銃を弾き飛ばす!
大きめの銃だから普通の投げナイフではこんな事はできないだろうが私のは魔法の力調整で強めにやったからね。
そのままカムラさんたちと突進!
目の前に次々迫るカジノ員たちをまさにバッタバッタ切り伏せていく。
もちろん"正気落とし"で。
カムラさんやバローくんもそれに続いて殴る。
倒し倒して数えるのを10人でやめて少ししてから最奥の扉にたどり着いた。
光魔法"ディテクション"や透視で罠がないかはチェック済み。
鍵のかかった扉をカムラさんが無理矢理斧で切り壊して突入した。
「くそ、時間稼ぎにもならないのか!」
奥にいるのは全身をあのパペットたちと同じコートに身を包んだニンゲン。
今はフードで顔は見えないが声はニンゲンのものと同じだった。
「抵抗はやめてもらおうか、ソウバ・ガドウ!」
「なっ!? そこまで調べがついているのか!」
まあ昨日のよるこっそり忍び込んで調べたからね。
ただ言い放った効果はてきめん。
彼は思わず手に持っていた証拠品であろう書類たちを手放し後ろへ身じろいだ。
「そこまで……調べが及んでいたのならば、仕方ない!」
そう言うなりガドウはコートのフードを後ろへ外す。
昨日みた顔がそこにあった。
バローくんが杖を握りしめてキリキリと音がする。
「なぜですか、ガドウ市長!」
おっと、それは知らなかったよー。
思ったよりも大物じゃないか。
そんな大物が魔王復活のために何をやっているのだ。
「その良い疑問に答える代わりに……コイツを喰らってもらおう!」
ガドウ市長が言うやいなやどこからか機関銃のようなものが出てきた。
しまったスキルや魔法で隠していたか!
激しい駆動音とともに弾丸が発射されだす。
「うわっ!」
「隠れて!」
流れる弾丸は高速だから私の目にははっきりと映った。
それは針のように細いものだった。
そのまま壁すら貫いてやっと止まる。
恐らく魔法技術のようなもので飛ばしているのだろう。
喰らえばかなり痛そうだ。
かなり卑怯な軌道になるがこれでも喰らえ!
投げナイフ5連!
飛来する針をかいくぐり相手に襲いかかる!
ってイタッ!?
投げるさいに振った手の甲を針が貫いた!
あー、後から痛みが来たぁ!!
ひ、"ヒーリング"! "ヒーリング"!
何とか止血している間にもナイフはガドウ市長の元へ。
2つは顔に3つは機関銃そのものに。
「こんなもの!!」
しかし2つの投げナイフは直前でガドウ市長が腰から細剣を引き抜いてうまくしならせ弾き落とした!
うわ強い。
だがまだ3つ機関銃に向かっている!
ニンゲンに魔法投げしたものはともかく機関銃に魔法投げしたのは容赦なく力を込めてある。
大岩をも動かすパワーで機関銃を跳ね飛ばした。
ガドウ市長も驚きの顔を隠せない。
「何!? 今の力は!?」
「いまだ!」
「いけえ!」
バローくんが物陰で準備していた魔法が炸裂する。
槍のように先が鋭い大きな木がいくつも部屋内に生える!
機関銃がその木に巻き込まれてガドウ市長の手元から離れた。
「こしゃくな! こんなもの!」
ガドウ市長にもうねうねと伸びようとしている木たち。
それらをスパスパと心地良いほどに細剣で切り裂いてしまった。
確かレベルは35あったはずだし何度もトランスしている気配もある。
ガドウ市長が全身から赤いオーラを漂わせだした。
それと同時に全身の筋肉が膨れ上がる。
小さくなったコートを脱いだ。
礼服が変形するほどに膨れ上がった筋肉はもはやゴリラのようだ。
発熱量が上がったのかなんなのか口から白い息を吐く。
「キサマらはここで殺す!」