二百五十八生目 犯行
聞き込みをするまでもなくその場は一切望まれていない事が分かった。
捕らえられた魔物たちから聞こえるのは苦しみと悲しみ。
この時点でギルティ決め込んでしまいたい気持ちを抑えつつそっと声をかけていく。
「ねえ、おとなしく聞いて。どうしたの?」
「た、助けッ!!」
「静かに……! 誰か来るとだめになっちゃう」
ガタガタと檻を揺らし暗闇の向こうで騒ぎ出す彼らを必死になだめかす。
なんとか少し落ち着いたところで聞き込み再開。
ニンゲンが近づいてくる気配はない。
「ご、ごめんなさい、だから見捨てないで、助けて……」
「うん、必ず準備を整えて助けに来る。けれどその前に聞かせて。どうやって連れてこられて何をさせられているの?」
氷山の一角は知っている。
けれど彼らからちゃんと聞いておかねば。
事実というものを。
「いきなり、捕らえられて……」
「無理矢理力で言うこと聞かせられて、ここに……」
「ご飯もほとんどないの。とりにもいけないし」
「この檻は力が出せなくなる……」
彼らは各々が思った事をぽつりぽつり語りだした。
「変な首輪つけられて、暴れるとビリビリって」
「あいつら、こわい……」
「何か刺されると、わけがわからなくなって、気付いたら相手を殺していた……」
「トモダチを、殺した……」
彼らは悲しみにくれてないている。
目から涙は流さなくともそれは確かにないていた。
「危ない所、あるかされた……」
「みんな下に刺さって死んだ……毒のにおいがした」
「もう嫌だ……!」
「わかった。ありがとう」
どうやら非合法かつ非道理でしかも残虐な行為が日夜行われているらしい。
これは私達もいよいよ例外ではない。
ここは必ず潰そう。
「それじゃあ……回復はしていいかな? 大丈夫?」
「それぐらいなら……ビリビリしたりは、しない」
「それじゃあ……」
彼らを範囲"ヒーリング"で癒やす。
さらに"アンチポイズン"も。
興奮剤は毒かどうかはわからないが私が魔法に仕組んで一旦毒としておいた。
傾向がそのような薬物ならば今は消せるはずだ。
「楽になった……ありがとう……」
「そういえば……お前はどこから……?」
「その話はまた今度。なるべく早く脱出させるって約束する。それまで生きて」
「うう、早く……!」
彼らの負担は想像よりも遥かにあるだろう。
必ず助けに来ると約束してその日はその場を離れた。
帰りはドラーグを連れて空魔法"ファストトラベル"したので楽だった。
群れへと戻った私たちは一旦私達のテントへ向かった。
そこには一旦保護していた山の中に住んでいた魔物たちがいた。
心と身体の傷が癒え次第返すかはたまたまた魔王復活秘密結社が来るかもだからどうするかといったところだった。
「俺たちを、そして山の中いる少ない俺達の同胞をここに住まわせてくれないか」
ソーバのトランス系でありリーダーのダーバがそう言ってきた。
……彼らも一歩間違えればあのカジノ行きになっていたのかもしれない。
「ここのやつらで話し合ったんだ。今働き手が欲しいらしいじゃないか。それなら俺達も協力出来る。だから……」
「うん、わかった。歓迎します。ただ山のキミたちの仲間は場所がわからないから、一緒に来てね」
「おお、ありがたい!」
魔物たちからガヤガヤと喜びの声が聞こえる。
ちょっと独断気味になったがもともと方針としては悪さをしなければ受け入れるように固めていたから大丈夫だろう。
「アヅキとドラーグ、彼らにテントを割り振れる?」
「ええ。ですがよろしいので?」
「うん、まあ問題が出たらどうにかする方向で」
「わかりましたローズ様。じゃあみんなーこれから住む所を決めるよー」
アヅキはなぜか当然のようにいるからそれはもうそういうものだと諦めた。
ドラーグと共に魔物たちは住むところを決める。
あとで彼らの仲間も回収しないと。
ドラーグの街話も気になるがまずは魔物たちの安全最優先。
明日の朝からカジノを潰すために動こう。
こういう時こそ法と秩序の力に働いてもらわねば。
その日の夜は彼らの仲間を山に探しに行ったり良く睡眠をとって決戦に備えた。
迎えに行ったらカムラさんと共にあしらったソーバたち2匹にも出会ってひどく怯えられたのには苦笑い。
やはりダーバの仲間で他はみな殺されたそうだ。
なんともやるせなさそうにしていた。
彼らのためにもキチッと押さえなければ。
そのための準備は終えたのだから。
そうして朝がやってきた。
私とカムラさんはニンゲンの街にやってきていた。
もちろん私はホリハリーに進化済みでカムラさんには事情を伝えてある。
話した時の『ならば衛兵たちとの交渉などはおまかせください』と言った時の安心感たるや。