二百四十五生目 茨棘
パペットたちの前で行った"進化"。
私の別姿。
今までは使わなかった新しいもの。
ホリハリーと違ってどっしりと大地に4足で立つ。
今までの私とは比べ物にならないほどに豪胆な身構え。
太い脚はインカのようなガウハリを思わせる。
サイズも大型犬くらいあるだろうか。
首周りから生えるのは針ではあるが白く単なる針ではない。
ツタだ。
私から生えるのは野太いイバラ。
ツタとして自由に動かせる。
棘だらけのこれを叩きつければ無事ではすまないだろう。
そして尾だ。
尾もイバラのツタとなっている。
どこからも相手できる徹底的に攻撃的な姿だ。
首周りにワンポイント赤い花が咲いているのはお気に入り。
[ロゼハリー 個体名:ローズオーラ
白いツタは自由に動き敵を翻弄する。トゲは頑丈で引っ掛けるように刺さる]
さて、じゃあ頼んだよ!
(ああ、思いっきりいくぜ! 交代!)
よっしゃ! やるか!
"私"に変わってツバイは控えに。
つまりはここからが力による『戦い』ってやつだ!
服が破け様々な武装が仕組んであるのが顕になっている今。
やはり気になる点が出てくる。
複数の武器を体中に持つ彼らだが唯一共通して武装のない部位がある。
腰だ。
まさかニンゲン的には恥ずかしい見た目になるからとかの話ではないだろう。
武装を詰め込めば詰め込むほどしっかり活動するために必要なものや支える関節が重要になる。
だからちょっと狙ってみようか。
首のツタは"私"の一部。
自由に動かして相手にGO!
パペットたちが回避のために散解した。
3本の太いツタがパペットたちに伸びて行く。
ガンガン伸びるぞ!
回避しきれないと判断したのか刃物を植物に向けてきた。
ガッ!
双剣やら鎌やらが肉厚な植物たちに食い込むが断ち切れない。
しかも攻撃だから補助魔法で炎が発生する。
食い込んで外れない間にどんどん炎がパペットたちに燃え移っていった。
ありゃ痛い。
生き物だったら火だるまになったら酸欠で倒れるだろうが……やはり焦げていくだけで平気か。
やっと外れたやつらは下がって互いに消火活動している。
今ので4体下がって残りは……8か。
直接攻撃は危険だと察したらしく避けまわっている。
意外にこの白いツタは動く。
カッターがこちらに飛んできたが真ん中あたりをくねらせて弾き落とした。
そのスキに別のツタの先でパペットを背後からはたいて落とす!
ツタから伝わってくるパペットをトゲで刺しながら地面へ叩き潰す感触はなかなかオツなもの。
別のツタが相手の銃撃を防ぐ。
防いだ感触はあっても痛くはない。
ぶっちゃけ"私"のツタがいくら傷つこうが痛くない。
生命力も再生時にわずかに使うのみ。
実質一方攻勢による最大の防御を行う形態。
倒れたパペットに追撃をかけて肩ごと上半身にまとわりつく。
力強く締めればトゲも刺さりまともに動けない。
そのまま硬い地面や岩へガン! ガン! ガン! ガン!
この力。
万能感に飲まれそうなほどのもの。
ツタを3本同時に扱うのはなかなか難しいがそれを差し引いても良い。
まあその程度で飲まれてやらないがな!
何度も叩きつけている間にパペットの腰がボロボロになっていたのでぶん投げる。
地面に倒れ込み何とか立とうとしたら腰から嫌な音が鳴りそのまま倒れ込んだ。
よしやはりか。
腰さえそこそこ壊せば戦闘不能に追い込める。
消火活動を終えた黒焦げパペットたちが戦線復帰してきた。
残り11。
ツタ同士を絡めれば簡易な拳が出来てそれで振り払う。
私本体に飛びかかろうとしていた3体を蹴散らした。
倒れ込んだやつはツタで掴む!
そのままブンブン振り回す!
腰クラッシュで動けなくなりゃ次!
10。9。8。ん?
残りの数が合わない。
"鷹目"で見ているが7体しかいない。
背後の地面から1体飛び出してきた!
エネルギービームを腹から発射され"防御"したが威力を殺しきれずに焼かれる。
うぐ、イテテ!
"防御"すると他の攻撃の手をとめなくてはいけないからあまりしたくはないのだが。
あの攻撃だけはまともに喰らってはいけないという判断で正解だったらしい。
そらして"防御"しても肉体の内側に染みるような痛みがある。
この!
尾のツタを伸ばして叩き落としそのまま掴んでガンガンガンガン!!
ポイとして、ふぅー。
あと7。
その間にも前方で囮をしていたやつらをツタで2体落とす。
グッ!
動きを理解して接近してきたやつが体を切り裂いてきた。
直接爪で押さえ込む。
こいつら1体1体はさっきのやつより弱い!
牙を剝いて腰を貫く。
ガリガリガツン!
さあこれで4体!
一斉にエネルギービームを放って来るのをツタで防ぐ。
ちえっ3本が焼ききれた。
ツタを再生している間に4体が取り囲む。
尾のツタで振り回して相手の槍やら剣やらを弾き返す。
弾き返せなかった鎌が肩に刺さりロングソードが頭を斬りつける。
シールドの効果や"防御"でしのいでも連続で何度も斬りつけられれば別だ。
ザクッと肉を裂く音。
いってぇ!
耳が落ちる!
尾のツタとともに回転して追い払う。
"空蝉の術"の効果で喰らった直後は火力が増す。
力強い振りまわしでやっと離れてくれた。