二百四十三生目 増援
「ああ! そんな高度な魔法を……しかも成功させた……!?」
バローくんが慌てて詰め寄り猫型魔物の容態を確かめる。
もう大丈夫そうだ。
血がたりなさそうだがこれから作られていくだろう。
「なんとかね」
「本当に、何がなんだか……」
「あ、バローくん走って!」
私の剣に追いやられていたはずのパペットが腹の大口に何やらエネルギーをため出している。
しかもそれをこちらに向けてきた。
ということはやはり。
猫型魔物を抱えるバローくんを私が引っ張って跳ぶように走る。
グオォォン!!
私達がいた場所にエネルギーの塊が走り去る。
レーザービームだ!!
もしかしてとは思ったけれど本当にそのもしやじゃん!
もう何なんだそれは!
そういう魔物か! それなら仕方ないな!
そう自分を納得させつつバローくんをおそらく安全な場所まで移動させる。
ドライが精霊と心交わして動かしている剣がかなり善戦していて相手は僅かなスキしか作れないようだ。
カムラさんもアンデッドだからか奇妙なスキルを駆使しつつ戦っている。
腕を地面に埋まるほど殴りつけたら相手の足元に大量の腕が現れたり。
斧を振るったと思ったらまるで関節が無いようにグニャグニャとしなって斬りつけたり。
やりたい放題だ。
どうドライ?
押し切れそう?
(確かにちまちまと削れてはいるが……周りの魔物を気にしながら戦う分どうしても踏み切れねえ。言うなれば決め手がないな)
うーんやはりそうなるか。
かなり強いね。
さっきの合間にドライが強化魔法もかけてくれている。
頑丈に。
そして体力を底上げ。
炎も攻撃にまとわせちゃう。
それでも足りないか。
まあ周りには倒れた魔物たちがいるから致し方ない。
じゃあ、やるか!
[ソールハンマー 土を固めた槌を叩きつける]
土魔法を唱えると地面から土を固めた大きなハンマーが現れた。
持ち手から本体までの長さで私を越して本体自体も巨大。
振ればパペットすら虫のように潰すだろう。
もちろん腕ではとても不可能。
しかしこれは私の魔力で動かせる。
大きくふりかぶらせて……
「行きます!」
掛け声をかけると剣とカムラさんが退避する。
ゴウ!!
空気ごと潰すかのような轟音と共にハンマーは振り落とされる。
真上から迫ってくるそのあまりの大きさにパペットはどう避けたら良いか困惑しただろう。
ゴウンッ!!
何もかもを潰すかのような轟音と共に地面へと落ちる。
しかし間一髪パペットは抜け出していた。
だが。
「そこだ!」
私の掛け声と共に粉砕する鎚。
振り下ろしのインパクトのまま勢いづいた破片がパペットを襲った!
本来なら砕け散りがランダムで制御できない。
しかしもともとこれ狙いで唱えたからパペットのみに向かわせるのは造作もない!
破片をブレードでガードするが連続で被弾しついに大きく欠ける。
そのまま弾き飛ばされ大きく空を飛んだ。
「はぁ!」
(そらっ!)
カムラさんとドライが息を合わせての一閃。
剣のみとカムラさんの斧がパペットを斬り裂き吹き飛ばし地面へ落ちる。
そうしてやっとパペットの動きは止まった。
「さて、聞きたいことはたくさんある。この森の魔物を虐殺したんだな? なぜ魔物たちを殺そうと?」
私とカムラさんはパペットを縛り上げていた。
倒れていた魔物たちも起きてもらって一応固めておいてある。
そして話も聞いたが……やはりこのパペットにみな多くの魔物が殺され遺体を回収されている。
回収された遺体はみなかったしわざわざ隠蔽工作までしていたようだが。
聞く限りの話を統合するにはこいつの行動はまさに魔王とやらを復活させようとしているのか。
バローくんも背後で不安そうに控えている。
「ソレモ、ソシテコレモ、"魔王"様ノタメニ……」
「何を言って――」
それも、とはやはり虐殺の肯定だろう。
だがこれもとは何を指すのか。
そう思った瞬間にパペットからけたたましいブザー音が鳴り響く。
「まさか自爆ッ!?」
可能性を思い立った私はみんなと共にパペットから距離をとる。
……しかしブザーは鳴り止み自爆しなかった。
「……? あ! 誰かが来る!」
「む、彼らの仲間、ですか」
せっかく一息つけたと思ったところにこの仕打ち。
次々とフードをかぶった同じような姿形が集まってくる。
さっきと同じパペットと同じ油のにおい。
またあの強さがゾロゾロとやってきているとしたら冗談ではない。
剣を戻して手に取る。
「カムラさん! バローくん! 他の魔物たちも身を寄せて!」
「わかりました」
「は、はい!」
魔物同士もバローくんやカムラさんも互いに身をくっつける。
周囲のパペットたちがコートごと上着をめくり大量の大口が顕になる。
いきなり大技か!