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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
成獣編 〜破壊からの再生は〜
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二百四十一生目 友達

「ローズさん! ……ローズさん? カムラさん?」


 バローくんが困惑する声を上げる。

 困ったな。

 多少なら服もあるしごまかせるのだが……


 私は今さっきピューと黄色い血が出たしカムラさんは逆にぶった切られたのに血がほぼ出ない。

 それにまずいのはこの状況も。

 パペットは色々隠してて戦えるほど生易しくない。

 バロー君の動揺の目は信用出来るものは何かを探しているようだった。


 ここはバロー君を信じるしかない。

 そして信じてもらうしかない。


「バローくん、多分色々言いたいことはあると思う」


 パペットが接近してきてカムラさんと私で応対する。

 カムラさんも私とバローくんの様子を見てニンゲンのフリをするのではなく、全力を出すことに決めたらしい。

 私はえぐられた傷が痛み力が入りにくいがかえって余計な力が抜けて剣にまかせやすくなる。


 流れるように何度も何度も切り合う。

 受けるのではなく流し、振るのではなく身を置いて……

 こう!


「後で全部話す! だから今は! 信じて欲しい! 短かったけれど! その間の冒険を!」


 金属が何度も弾かれる音と共に剣に任せて振るう。

 かち合うのではなく流し切り落とす。

 払い。

 斜めに回転ノコギリを受けて弱い刃の腹へ打つ。


 冒険といえるほど長くないかもしれない。

 ほんの少ししかやり取り出来ていないかもしれない。

 そして私がこれを言うのはズルいかもしれない。


「精霊を……信じてあげてッ!」

「っ!?」


 兵器を使うと見せかけてタックルされた。

 全身に積んだ兵器の分だけ重いタックルは単純だが有効だ。

 ノックバックを喰らう。


 バローくんは私の言葉と光景どちらにも動揺し想いが走る。

 少年には過重な情報量が恐らく彼の内部で駆け巡っているだろう。

 そしておそらく想いが整うよりも前に。

 バローくんは杖を握った。


「……!」


 パペットは『想定外の攻撃を受けた』と思っていそうな雑音が流れる。

 パペットが踏み込もうとした足にツルが絡みついたのだ。


 バローくんは肩で息しながら杖をパペットに向けていた。

 足が動けない間にカムラさんが切り込んでいく。

 不利な姿勢を強いられるパペットは途端に劣勢となった。


「約束……ですよ……!」


 そうバローくんが言ったのを聞いて頷く。

 だがツルがついに千切られた。

 再びこちらが劣勢になる。


「だけどごめんなさい、もう力が……」


 バローくんは今のが最後の力だったらしい。

 その場にヘタレこんだ。

 確かに行動力残量もあまりないし何よりこんな過酷状況に晒されて疲れ切っている。


 だが倒れていた魔物たちの傷口には苔が生えており何とか危機を脱出したのか全体的に顔色が良い。

 どうやら治癒魔法の1つらしい。

 だが今バローくんの足元にいる猫の魔物は……


 苔が定着しているのにも関わらず血が止まっていない。

 いや血が出すぎた後か。

 もはやあまり長くない。


 怪我が深すぎたのだろう。

 ならば……


「カムラさん、やりましょう」

「ええ、わかりました」


 演技の時のような親としての振る舞いではなくいつものように話すカムラさん。

 ちゃんと通じたらしい。

 私も、やろう。


 胸のかざりに触れればバローくんの元にいた2体の精霊が帰ってくる。

 心を通わせて指示を送った。

 私も魔法準備!


 カムラさんは痛そうに抑えていた脇腹から手を離しグッと力を込めると肉が増殖して埋まった。

 生命力はあまり癒えていないが実に身体を動かしやすそうだ。

 アンデッドの生命力……いや死んでいるから耐久力回復は光魔法とは相性が悪いから気をつけないと。


 1体の精霊に強化範囲ヒーリングをカムラさんとパペットを除くみんなにかける。

 光の粉が舞いバローくんが手のひらを上に向け受けると少し楽になった様子を見せた。

 私もアレコレグチャグチャと削られたからだいぶ楽になる。


 当然それを見ているだけの相手ではない。

 すぐに接近してくるがカムラさんが正面から対峙する。

 パペットはなんのことは無いとふたつの回転刃を向けて。


 カムラさんはそれを斧ですら受けずに平然と突っ込んだ。

 当然服と身は回転ノコギリの餌食になる。

 ニヤリとカムラさんは笑った。


 パペットの考えていた衝突位置と違うのだ。

 あるべき場所に斧はなくそこにあるのは痛みなんてないアンデッドのみ。

 服が肉が回る刃に絡みついてしかもしっかりと角度を合わせていなかったから刃が滑る。

 そして急いで動かす腕の振りはあまりに見極めやすくそのまま潜り込み。


 カムラさんは斧に魔力開放させさらに武技の(エフェクト)を纏いスネを切り裂いた。

 土魔力のインパクトを受けてノックバックするパペット。

 脚に大きめの傷がついた。

 あれならバネを使うのは難しいかもしれない。


「……? 情報修正ノ必要アリ。モード、フルパワー」


 その言葉と共にパペットの纏っていた服が破り捨てられた。

 胴体から覗く複数の銃口。

 右のブレード左のボウガン。

 肩のドリルに背から生えた腕にある回転ノコギリ。


 そして腹にある謎の四角い大きな鉄口。

 嫌な予感しかない。

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