二百三十七生目 悪魔
悪魔の爪を採取しまくる。
量がいるがやたらとひとつの場所に数が少ないから葉の部分だけ切り落として集めていても重さが足りない。
だからといって根ごと引き抜いたりはしないが。
「だいぶあちこち探して、かなり頂上に近くまで来てしまったようですね」
「下山時間はまだ十分あります。そこは大丈夫でしょう」
バローくんとカムラさんが残り時間の話をしている。
昼にはこの山を出たいためあまり遅れるのは困る。
ただ時間的にまだ2時間はたっていない。
効率的な採取のおかげだ。
(うーん……あのさ、あのさ)
うん? アインスどうしたの。
(おやまのてっぺんちかくの、くさはたくさんあるんだけれど)
おお、そこで目標達成できそう。
早く向かっちゃえば……
(いや、それがね。よくしらべたらアヤしいの。あれは、ぜーんぶ、ひっこぬかれてるっぽい)
え、どういうこと?
ちょっと引き続き調べてみて。
(わかったー)
そうしている間にも次々と悪魔の爪の採取を終える。
とにかく数が少ない。
バローくんもカムラさんもおかしいと言った表情だ。
「確か事前の話では、1つあればそこそこ群生していることが多いとのことでしたな……」
「おかしいですよね。事前情報と違いますし、先程からよく見ると、掘り返したような跡もあったんです」
「……違法採取、ですか」
カムラさんが出した結論にバローくんも頷いた。
ただ、だとしたら頂上付近の抜かれた悪魔の爪たちは一体……
うん……?
そういえばだ。
この脳内地図からあまりにも外れにあったり複数生えていた所を除いて線を引き直した場合。
まるで上へ誘導するような間隔で悪魔の爪が残されている?
……考え過ぎか?
何がしたいのかわからないし実際は雑な違法業者の仕事なのかもしれない。
だが油断はしないでおこう。
腰にあるショートソードに手をかけた。
更に登って結局頂上へ来てしまった。
効率は良かったおかげで規定の9割はたまっている。
後は何事もなければ……
「うわっ!? 悪魔の爪がこんなにたくさん!?」
開けた場所に出たらバローくんが思わず声を上げた。
そこにはあれだけ苦労して集めた悪魔の爪が麻袋に入れられ文字通り山ほどある。
私たちが必要とした量の何十倍だろうか。
(あ! ねえねえ、くさはよくわかんないんだけど、そのちかくに、こんなアヤしいのがいたみたい!)
アインスが見せてくれたのはこの悪魔の爪の山近くにいたという存在。
地魔法"ジオラークサーベイ"は地面に接触していればその存在すらも情報を得る。
これは、ひとりのニンゲン……?
ということは。
今もこの近くにッ!?
「明らかに異常だ。警戒!」
「違法業者が近くにいるかもしれませんね」
「場合によっては即時撤退しましょう」
カムラさんの提案に私たちは頷く。 抜刀し悪魔の爪に近づかないように周囲を見渡す。
ゆっくりと歩き回りを見渡して……
「!!」
死角から私に飛んできた矢。
"鷹目"で死角をカバーしておいて良かった。
すぐさま振り向き避ける。
本当は切り捨てれたらかっこいいがそこまで上手くないからね。
「誰だ!」
「矢ですか!?」
「やる気のようですね……」
飛来してきた上方を光神術"インファレッド"で赤外線で見る。
いた! あそこだ!
[光神術 +レベル]
光神術のレベルが増えたが後回し。
木を駆け上って飛び移り2射目を回避してから突っ込む!
剣を振るうが思いっきり射程外に逃げられた。
「すごい……」
バロー君のつぶやきが耳に入りつつもそれどころではない。
相手が地面に降りたため自分も降りた。
腕に小型のクロスボウがくくりつけてある。
全体がひどく覆われた服装で人型であるという点しか外観からは読み取れない。
クロスボウがからくり仕掛けなのかコンパクトに畳まれ腕の服の裾に隠れる。
コートがそのシルエットすらも覆い隠す。
[???]
"観察"結果は……やはりダメか。
防御されている。
ここでおみとおしくんこと、九尾開発の眼鏡をつけたいがさすがにバローくんがいる前ではやりづらい。
「だ、誰だ! あの悪魔の爪はお前が!?」
バローくんがそう怒鳴るが微動だにしていない。
……さっき近づいた時にかいだにおい。
油のにおい?
数秒たちまるで返答をする気配がない。
かと言って何かをする気配もない。
矢が放たれた時も今も殺気すらない。
"見透す眼"!
……だめか。
心も肉体も見透かせない。
「不気味、ですね」
カムラさんが構えながらそうつぶやいた。
アンデットに不気味と言われるということはカムラさんも正体が探れないのか。
もし同じアンデット寄りなら邪気を読み取る力で分かり……生者なら生気を感じるらしい。
もしどちらも感じれないのならそれは……
「セイレイ ツカイヨ ワレラニ クダレ」