二百三十五生目 草葉
夕食をすましカルクックたちの世話をしてカムラさんが火の番を言い出してバローくんは自分のテントへ。
私とカムラさんは同じテント……という事になっている。
しかしその実態は。
「では後はおまかせください」
「お願いします」
私はそう言って空魔法"ファストトラベル"を唱える。
向かう先は荒野の迷宮にある私達の群れだ。
たどり着いてすぐに"進化"を解く。
「ああ〜〜……」
自分のテントに潜り倒れ込む。
危ない。
全身がとんでもなく重い。
ずっと進化を続けていたせいだ。
精神と肉体に莫大に負担がかかった。
進化中は平気だが進化が解けるとグッとダメージが来る。
魔法で回復して服を片付けて……
うぇっぷ。
いかんさっき食べたが……
うええ……
胃の中の物を戻してしまった。
グラグラぐるぐるする。
不調だ。
精神がやられているのか。
吐くほど不味いわけじゃあなかったからすごくもったいないことをしてしまった。
徐々に慣れるだろうがこんなに連続して進化したのは初めてだから反動がきつい。
聖魔法を変化させたものでとりあえず汚物は浄化して消した。
それから少しの間落ち着くまで待ってから……
『ジャグナー、起きている?』
『ああ、今見張り中だ』
『一旦帰ってきたんだけれど状況は?』
『まだ動いていない。こちら付近では見つけれていないが……』
『うーん、様子見を続けるか……そうだ偵察を出してみたらどうかな?』
『分かった、じゃあ任せておけ』
"以心伝心"で念話をしたが問題なさそうだ。
"進化"していた時は大して感じなかった眠気も一気に襲う。
一旦このまま眠って……
おはよーございます。
うーむ寝起き最悪。
たまにだがあの夢を見るようになってしまった。
世界が終わらせられ私がそこにひとりだけいる夢。
生命が絶えて星と私のみ。
変な声は聞こえないがその光景だけは未だ夢に出てくる。
とりあえずもうじき日が出る。
カムラさんはアンデッドだから平然と起き続けているがバローくんは朝になれば起きるはずだ。
カムラさんさんから特別な連絡も来ないし今のうちにと。
"進化"!
魔力が身体を変化させ二足歩行のホリハリーに。
服を着てと。
……うん?
そういえばニンゲンの街に何か忘れているような……
まあいいか。
"ファストトラベル"で飛んで気配を殺して近づけばカムラさんが火の番をしていた。
無言でアイコンタクトして私が火の前に座りカムラさんが中に入る。
いかにも途中交代したかのような。
事前に組んでいた予定通りにそうしてしばらく待てばバローくんがテントから出てきた。
「おはようございます。昨晩は楽させてもらいました」
「いや、むしろ今日はバローくんに率先してもらわないと大変だから、このぐらいはするよ」
本当はカムラさんが頑張っただけである。
カムラさん本当にありがとう。
その後は流れ作業のように朝支度をして食事を取り山の森へと向けて出発した。
山近くでカルクックから降りある程度高くまで登る。
その後からが森捜索の本番だ。
「では、始めましょう。魔物が多いので分散は危険です。ただし時間もないので速度優先しましょう」
バローくんの言葉に私とカムラさんは了承して駆け出す。
事前に『悪魔の爪』が生える場所の特徴は聞いているが……
アレをした方がはやい。
こっそり地魔法を唱える。
一瞬だけバローくんの視界から隠れて"ジオラークサーベイ"!
光が地面に染み込み、少したつと戻った。
「あ、そうそう。疲れたらすぐに言ってくださいね。探索を最効率化させるにはやっぱり体調管理が1番ですから」
「あ、うん」
バローくんの顔がぐるりとこちらを見た。
フクロウの首だ……
なんとか光は見られずに済んだ。
どう?
アインス?
(ガンガンけんさくちゅう……お? あー、これかな。うーんと、こうりつよくとるには……)
「あ、あそこらへん! 悪魔の爪がありそうです!」
差し示したあたりには……魔物の気配。
普段なら無視すれば良いが。
「高速で排除します!」
「前に出て倒します」
「同じく!」
「支援します! やあ!」
バローくんが杖を振るうと同時に暗い光が恐ろしい顔を型取り飛んでいった。
魔法の気配に飛び出してきた魔物は2体。
暗い光が彼らに当たるとまとわりついて嫌がっている。
……!?
ホエハリ!?
いや、違うか?
ホエハリに似ているが背から生えているのは草の葉だし色等細部が違う。
言葉もわからない。
近種かもしれないがまるで私とは違う。
[ソーバLv.16 状態:能力低下]
[ソーバ 背から生えた葉は強力なカッター。使えば切れ味がにぶるが次々生え変わる]
「頑丈さを落としました! 今です!」
バローくんの言葉と共にカムラさんと共に突っ込む。
時間はかけていられない。