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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
成獣編 〜破壊からの再生は〜
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二百三十四生目 黒麦

「精霊に関してはまず、この有名な語りを聞いてください」


 そう言ってバローくんは語りだした。

 記すことはなく口伝のみだが有名らしいその言葉を。

 カルクックたちは軽快に速歩(はやあし)をしながら。





 精霊はすべてを見るものなり


 かの者ら棲まう地この世にあらず

 肉と心は異界にありて

 我らを覗き ただ笑うものなり


 心ですら秘匿叶わず暴かれ

 我らが生の観察は精霊の遊興なりて


 しかしかの者ら全知全能の神にあらず

 この世に落とすはかれらの影のみ

 肉も心も持たぬ影は万里を覆い

 この世すべてに満ち満ちるも

 同じく全てを見ることは不能なり


 かの者らはここにありてこれを見るを欲す

 およそ幾百もの精霊 今ここにあり

 





「……と言われています」

「な、何かよくわからない……」

「よくわからないものこそが精霊と言う人もいますからね」


 なんなんだ、その『これを見る』とか。

 口伝しかないし、今もこうやってしゃべりなんだから『聴く』じゃないのか?

 そう思っている間にも速度が上がって行き姿勢を落とせば再び守るための(エフェクト)がカルクックごと包む。


「まあそんなわけで、精霊そのものは謎が多いのですが、僕は友達のように感じています。その友達が認める相手はきっといい人だと思っていますから!」

「なるほど、聞かせてくれてありがとう!」

「ああそれと、感じたり見たり出来る精霊は同じ場にはとても少ないのですが、実際はわからないだけでこの世界の至る所にいるそうですよ!」


 風に声が押されるので互いに声をはる。

 なるほど、この2体はごく一部見えているだけなのか。


「本当は吟遊詩人の弾き語りでメロディをつけることも多いのですが、さすがにそこまでは……あ、あと」

「あと?」

「実は……これ一時期メモして凄く何度もくり返し読んだから覚えたのですよね。法に反しているわけでもありませんし、実際の吟遊詩人さんでもないですから。あ! 今はちゃんと破棄してあります!」


 なんとも真面目な性格が垣間見える。

 まあ書くなと言われるものをこっそり書いたりするあたりはちゃっかりとしたところもあるか。

 おかげで私も少しだけ精霊を知れた。


「別にそれで誰も怒りませんよ」

「そう言っていただけるとありがたいです。僕しか見えていなかった精霊に関するほんの僅かな手がかりで、忘れたくなかったんです」


 そう言われればそうか。

 自分しか見えなかったという話が事実なら親も友達も話題が共有できずむしろ変な子ぐらいに思われていただろう。

 ……なるほど、だから表現が『ひとめぼれ』だったのか。


 一発で見てわかった秘密の共有者か。


「ところで、精霊に関しての知識は本とかで?」

「はいそうです。世界のどこかや過去の誰かも精霊を感じたり見えた人はいるみたいで。もちろん数は少ないし、肝心の研究もあまり進んでないようです」


 ふーむ。

 本か……探してみたら何かもっと見つかるかもしれないな。

 街で探してみよう。


「では速度を完全に上げます! 前に出ます」

「ありがとうね!」

「こちらこそ!」


 そう言うとバローくんは離れていく。

 1番前へ出て風を突っ切るような速度を出し始めた。

 私が乗っているカルクックもその後につづく。


「彼氏との会話はどうだった? まあなんて言ってたかは全然わからないんだけれど」

「彼氏じゃないよ」

「あら、そうなの、じゃあじゃあじゃあ未来の彼氏ね」

「なんでそうなった」


 カルクックとそんな他愛もない話をしつつその後も大きく移動していく。

 走り抜け、たまに交戦し、休みを挟んで……





「あそこに見えるのが、目的の森です」


 ひと山まるごと木に覆われている、まあよくある山だ。

 だがそれは見た目だけでこのあたりでは珍しい『悪魔の爪』も自生しているし動物よりも魔物たちがはびこっていて危険。

 と聞いている。


 どちらにせよ森は私のホームグラウンドのようなものだから楽なものだろう。

 今晩はこのあたりで眠り明日の朝から捜索、昼には帰路につき夜にはなんとかして戻る。

 それで依頼を達成する目論見だ。


「じゃあテントをはりますので準備しましょう」

「わかりました」

「はい」


 カルクックたちを止め安全そうな場所でテントをはり火を起こす。

 こういう移動時の野宿は初めてだ。

 いつもは人目から隠れつつそこらへんに隠れて寝ていたからなあ。


 食料はバローくんが持たされていた食料を使って簡単なものを。

 それとパンだ。

 ここらへんは小麦粉食らしい。


「あ、おいしい」

「父のお手製なんです。さっきは表にいませんでしたが、普段は厨房や掃除を行っています」

「おお、バロー君の作ったものはどれも美味しいですね。これもそのお父さん譲りのやり方で?」

「はい、こう見えてかなりできますよ!」


 確かにバローくん指示で作った簡単料理はおいしい……のだろう。

 バローくん父のパンは素朴だが確かに美味しい黒パンだ。

 だが……その……


 ニンゲンの料理がここまで分からなくなっているとは。

 なんとか完食したがうーんなんか違う。

 やたら塩辛い気がするしやたらにおいが薄いし……うーん。


 カムラさんが美味しく食べれたということは明らかに私が魔物で獣だからだろうなぁ。

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