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三百五A生目 悪魔

 防壁は崩れ味方は一斉に飛び出す。

 一方マグマトロンはヘロヘロになっていた。

 エイヘムが両手の拳銃を合わせる。


「落ちろっ!」


 (エフェクト)が大きく生まれて飛び出したのは鎖。

 鎖が飛び出してグルグルと回って翼を捕まえ……そのまま地面まで引きずり落とした!


「ぬぁっ!?」


「よし、だいぶ弱っている!」


 あくまで武技だがエイヘム単体で落とせた時点でもう疲労している。


「な、これ、は……! なぜこんなことに! わ、ワタシがこんなやつらに!?」


「トドメだっ」


「そんなぁーーっ!!」


 シローがカタールの刃を大きく振りかぶり。

 拳の勢いに乗せて振り下ろした!

 全員の猛攻が同時にあたってマグマトロンが吹き飛ぶ。


「ようし、勝ったね!」


 息の根を止める必要はない。

 完全に目を回してダウンしている。


「ふむ、為政者(いせいしゃ)としてはここでトドメを刺してもらいたいのだが」


「まあまあ、彼女は巻き込まれただけです。無力化さえできれば問題はないでしょう。問題は、こいつを解き放った相手がいるということです」


「ドラゴンを? ということは、自力で飛んできたわけではないのか。確かに、突如現れたとは聞いていたが、そんなことができるのか?」


「そもそもこの種は火山内に住みます。普通にこんなところに来ないんですよ。だから、絶対に人為的です」


「えっ、彼女!? このドラゴンレディなのかい!?」


 そうですレディです。

 まあそこは放置しておいてだ。

 世界をもとの空間へと戻していく。


 さっきの場所に戻れば倒れ付したマグマトロンが建物を避けるようにちょっとどかされた。

 世界の整合性を保つためだろう。

 私達も現れたらいきなり石の中だと困るからね。


「これをやったニンゲンか……十中八九、暗殺者だろうね」


「私がドラゴンを向こう視点消したことで、かなり慌てたはずです。すでに撤退したか、または……」


「手すきになった方を直接叩くかだ」


 シローが暑さから汗を拭い水をのみつつ話す。

 多分シローが話した中でもかなりの長文だ。

 ほんと必要があると考えたことはガンガン話すたちらしい。


「レディたちが危ない!?」


「みんなは援護に向かって! 私は、広く見て調べてみる!」


「えっ!? わ、わかった、こちらは任せてくれマイレディ! ただ危ないことはしないでくれよ!」


「もちろん、こっちは大丈夫!」


 それだけいうと私は駆け出す。

 そして建物たちを一気に駆け上がりだした。

 アレだけのことをしでかしたんだ。


 ニンゲンたちなら絶対痕跡を残している。

 それを踏まえてまずは高い位置へ。


 さっきはああいったものの護衛組はそんなに心配していない。

 襲撃はあるだろうが結局は2軍だ。

 加勢がくればカタはつくだろう。


 問題はこういう時傍観者ポジションに回っているやつ。

 逃せば甚大な被害が出る指揮官役だ。

 もちろんそういうのが本国にしかいない可能性はあるけれど今回マグマトロンを呼び出したことで事情が変わった。


 実行役かはともかくこの規模の被害を出させる作戦だ。

 うっかりすれば「お前ん所の国うちの首都に武力行使かけるんかあ?」と国際問題になりかねない。

 だからきれいに痕跡を断って責任をおさめる役割がいる。


「あ、ここで使ったんだ」


 なにかを叩き割った痕跡発見。

 痕跡そのものはほぼチリのようなもの。

 しかし隠蔽された魔力痕跡がある。


 こういうのもすぐ見つけられるようになってしまったなあ。

 隠蔽がずさんだとは思わない。

 きれいに隠蔽されているせいで、そこだけ白塗りした跡のように視えてるのだ。


 そこの付近に着地。

 ここなら残り香がふた手に別れているぞ。

 片方は屋敷の方に向かっている。


 もう片方はまったく別の方向に向かうひとり。

 こっちがあたりだ。


 今回相手にバレるかどうか心配しながら追いかける必要はない。

 これからやるのは追い込み猟だ!





 少しの間駆ければ敵の気配が近くなる。

 相手はこちらの追跡に気づいたなあ。

 行動速度が断然上がっているようだ。


 まあそこまで問題はない。

 追い立てているんだから逃げられるのは想定内だ。

 当然追いかける!


 まだ姿は見えないものの急いで逃げる影響で隠蔽が甘くなっている。

 向こうとしては振り切るつもりだろう。

 だけれども当然こっちは追い詰める気だ。


 そこから数分チェイスする。

 相手に圧力を強くかけるように速度を早めながら。

 私は狩りが苦手だけれど……全くできないわけじゃない。


 おにさんどーこだ、手のなる方はブラフー。

 狩猟本能はないわけではない。

 こういう時独特の楽しさってあるよね。


 そうしている間にそろそろか。

 相手の足が止まったらしい。

 追いついたのだ。


 遠巻きに影が見える範囲に来た。

 向こうもこちらを視認している。

 ならば堂々と行こう。


「ハァ、ハァ、しつこいですね……もうここは街の外ですよ?」


「じゃあ、投降してもらえる? おいかけっこも終わるよ」


「まさか。わざわざわたくしを追い回したのは、わたくしがそういうことをできない立場とご存知なのでしょう?」


「さあ」


 ご存知ありません。多分そうだろうなあって思ってるだけです。

 だけれどもそんなことおくびにも出さない。

 相手は怖がらせたほうが得。


 フードの女はそっと懐に


「ですが、当然わたくしめも抵抗をさせてもらいます、ここまで来たなら問題ないでしょう、これを使っても!」


 そうして取り出したのは……針。

 薬か!

 ということはあの中身は!

  

「それって悪魔の力を宿す薬! そんな大丈夫かどうかもわからないもの使うのだなんて!」


「これを外に隠しておいて正解でした。こんなところまで追い込まれた時しか使う気のない、禁制品……万が一都市の中で見つかったら、国単位の争いになりますからね」


「そこまでわかってるなら!」


「捕まるわけにはいかないのでね!」


 自身に針を注射した!

 話している間に距離を詰めようとしたけれど同じ速度ではなれられてしまった。

 攻撃は間に合わず。


「くっ」


 筋肉注射したそのエネルギーは全身を巡っている。

 そのまま一瞬で変異が完成してしまった。

 フードが剥がれて姿が顕になる。


 それは全身から鎧が生えているかのような姿。

 硬質な鎧じみた皮膚により体中がおおわれている。

 何より細身なその体はもとの性質を現しているのだろう。


 顔にも仮面じみた西洋的マスクが。


「これは、これはすごい……力が溢れてくる! 今なら、今ならあの都市まるごと滅ぼせそうだ! アハハハッ!!」


「進化後の万能感……そんなもの、大した意味なんてないのに」


「これを見てもそう言えるかなあ?」


 莫大な魔力がうずまきしびれるような雷撃と共に空に力が渦巻いていく。

 漆黒の塊が空に浮かんで周囲に瘴気じみた空気が漂い出す。

 確かにものの数秒でこの魔力展開。自慢するだけあるようだ。


「これを私は、()()()()()()()()!」


「何?」


「避けたらどうなるか、わかるよねえ?」


 まだ都までの距離は近い。

 それに私は当然追う側だから都市を背にしている。

 こんな真っ平らな地形の都に結界内から魔法を都方面へ……


 どれだけの被害が出るかもわからない。

 しかもこれは目くらましだ。

 意外と冷静に逃げる手段を考えている。


 暗殺者が派手に大きなことを見せ対応を迫らせたら……

 そのスキに逃げる。これは被捕食者の中でも対応力があるタイプがする行動だ。

 タコスミみたいな。


「卑劣だなあ!」


「どうも、ありがとうっ!」


 紫色の塊がこちらへ飛んできた!

 巨大過ぎて受け止めるのも難しい。

 迫りくると私を軽く飲み込みその後ろへ行く規模なのがよくわかる。


 当然私の方も魔法を用意していた。

 相手が悪魔の……月の神の力を抽出したものを使わなければ縛りでやる気はなかった。

 神の力をフルに使うのは神相手のみ。


 それをやっても問題ないでしょ。

 さあやろう。


「邪道な進化には、王道な進化を。進化!」


 進化のデビュー戦だ。

 私は全身を凄まじく変化させ……

 砕けちった私の体が再構築。


 宝石は彩られ体の外に浮き。

 神秘的な白を纏う私の姿が完成した!

 

 もう目の前まで来ている。

 だけれども問題なし。

 なぜならこの体自体が……


 巨大な力なのだから!


「はあぁっ!!」


 時間なんてものはほとんどない。

 まだ実戦で使ったことのない形態。

 進化時間不安定。3分前後。


 しかもそれは全く持って平気な訓練時の記録。

 今では多く見積もって1分か。

 1分でカタをつける!


 紫の大玉へと突っ込み(エフェクト)をまとってタックルする。

 本来釣り合うはずもない2者の力。

 だが今だけは私を押しつぶさず釣り合っている。


「いいや、跳ね返す!」


 ゴウゴウと音を立てて迫る紫の塊。

 私がぶつかり押し込んでいることで動きが止まっていた。


 (エフェクト)同士がぶつかる激しい衝突音と火花がこの戦いを印象づける……けれど。

 時間はかけない。

 かけられない。


「そうれッ!!」


 私の掛け声と共に押し返しだす。

 ズルリと動く手応えを感じた。

 ただ受けるだけならこんな細かい調整や()()()()()なんていらない。


 私の(エフェクト)がひろがっていく。

 紫の塊を覆うかのように。

 この一撃で完全に跳ね返す!


 拳を振り込み力強く叩き込んだ!

 すると紫の塊が軟式ボールのように歪み……まっすぐ暗殺者側へ吹き飛んでいった!


「タァッ!」


「なっ!? 何!? なんで!?」


 素っ頓狂な声が紫の塊の向こう側から聞こえる。

 そりゃそうだろう。普段の自分を大きく超えるとんでもパワーのはずだ。

 絶対跳ね返されるはずはない。


 少なくとも時間は稼げるはずの代物。

 しかして時間にすればあまりにあっさり跳ね返された。

 魔法は魔法発動後まで魔法陣を維持するものは少ない。


 魔法陣がなければ自身の魔法から守るすべはなし。

 そのまま直撃をした!


「ぎゃあああっ!! ま、まだ……!!」


 ただあくまで自分で出した魔力だ。

 1発で自身が死ぬようなものではないだろう。

 むしろ悪魔進化している今はかなり頑強で耐えられる。


 だから私が飛び出す。

 私が空から行って直接敵に拳を叩き込む!


「ハアァァッ!!」


「誰だ!? いやまさかさっきの、グガァッ!?」


 一瞬白い何かが飛んできてわからなかったらしい。

 普段の私は青だもんね。

 まあそうこう言っている相手に空から急襲して殴り飛ばしたんだけれど。


 高さエネルギーと速度エネルギーの乗った拳は頑丈な悪魔進化の体すら吹き飛ばす。

 大きく体が浮いてそのまま遠くまで吹き飛んだ。

 うむ良いダメージだ。


 そのまま追いかけて見えないイバラを振るう。

 見えないイバラはわかってなければ感知などできない。

 観た感じまだ生命力がある。


 浮かしたあとそのまま地面の下に叩き込む!

 イバラなのでトゲも食い込み大打撃!


「ぐぅっ!? な、何が起こって、動け……がぁっ!」


「連続れんぞくレンゾク叩きつけ!」


 合計5回。

 爽快なほどにバンバン叩きつけた。

 地面がボッコボコだがまあよし。


 そして肝心の相手はというと。

 すでに目を回して進化がとけていた。

 これでよし!


「おっと」


 そして全然時間たっていないのにほっとした途端私の進化もとけた。

 ひえーっ使いづらい。

 時間単位で言えばほんの10秒あるかないかだぞ。


 独特の脱力感と進化エネルギー浪費による空腹を携えつつ私は目の前の相手を拘束しはじめた……

 ああ。この戦いは街からも見えていそうだなあ。

 さっきの紫の塊の魔力なんて凄まじかったから何人魔力にあてられたか。


 説明が大変そうだ……

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