三百四A生目 溶解
騎士たちがマグマトロンの片足に食らいつき切り裂いていく。
対ニンゲンに研ぎすまれた刃が今マグマトロンの足を斬っていた。
「ウグゥ!?」
そして同時刻。
エイヘムは腰の直剣……ではない。
先程はなかった武器を両手に持つ。
右手はゴツい口径のリボルバー式ハンドガン。
左手は魔法力に青く輝く美しい流形のハンドガン。
「2番目に本気のこの装備なら、そんな巨体だって打ち崩せる!」
エイヘムは軽装だ。
その分身軽に動き回り銃を構える。
私も銃を使うからわかるけれどハンドガンってめちゃくちゃ当てにくいよね。
だがエイヘムはきっと訓練とスキル構成がいいのだろう。
右手からまず撃てば光を纏った強烈な弾丸が飛んでいく。
正確な軌道でマグマトロンのマグマや冷えて固まった溶岩を避け腹の肉部分へ刺さっていく。
どうやら連射タイプではないらしく重く巨大な威力で響いた。
武技を使ったのかまるで大砲だ。
そして左手。
まるでビームのように大量の光が連なり飛んでいく!
魔法弾のビームだ。
直線状に放たれていくそれは腕の爪と鱗の境目などを的確に狙っていく。
まるで性質の違う兵器をそれぞれの場所に狙っていく。
これがエイヘムの力か!
「ぐおおおおっ!? 厄介な!!」
「うおっ、おおおっ!? 」
だがいるだけで災害級のマグマトロン。
そもそも猛熱をを私の魔法と彼らのレベル能力でしのいでいるだけでマグマ自体がとんでもない力なのだ。
光エフェクトなんてまとって飛ばされた日にはとてもじゃないが防ぎきれない。
だからエイヘムは必死に避けている。
だが避けると当然狙いをつけるのは困難になってしまう。
騎士たちがだいぶ切り裂いてくれているおかげで直撃はしないけれど。
「ここだ」
ナブマサが指を鳴らすとマグマトロンの顔が爆発して吹き飛ぶ!
もちろんマグマトロンは巨体だ。
ほんの一部ながらも纏っていた溶岩を破壊するほどの威力。
「んぐぐっ」
「ふむ、的が大きいので当て放題ですね。問題はこの硬さですか」
「来るよ!」
マグマトロンもただ食らっているだけではない。
これまでもマグマを撒き散らしていたが地響きを鳴らして唸るように音を鳴らす。
明らかに力をためている!
「なんだ!?」
「ウオオオッ、ハァッ!」
エイヘムたちが下がりつつあるが私含めて圏内。
マグマトロンが叫ぶと大量のマグマが光で呼び出される。
マグマウェーブだ!
「うわあっ! きた!!」
「当主様を守れ!」
「間に合うか……!?」
各々が慌てている間私は……一度様子見をする。
私がアレで大打撃を負う可能性はない。
見てわかった。”防御”でやりすごせる。
問題はみんなだ。
騎士たちは陣を変更して盾を構えている。
特にナブマサに傷をつけないよう大きな光ガードが発生しつつあった。
エイヘムはとんでもないおどろきの顔をして腕を前に。
パワーで切り抜けるつもりかな。
シローは全身身を固めている。
おそらく通常の防御系よりも遥かに硬く守るための能力。
全身が鋼のような色へとガチガチに変わっていく。
うんみんな対処がうまい。
私が守るのは最終手段だ。
彼らに経験を積んでもらうほうが優先。
「うわぁー、きたっ!!」
時間にして2秒前後。
一気にマグマが解き放たれる!
凄まじい質量が燃え盛りながら迫る音。
それとともにすぐにマグマの波が襲いかかる。
マグマは全員を波のそこに沈め……
そのまま冷えて固まろうとしだす。
「全員破壊して脱出して!」
ずっとグツグツなられるのも困るが冷えて固まったら即死させられかねない。
これ街で使われなくてよかったあ。
私が受けた感じだけどほとんど痛くなかった。
熱ダメージは緩和できた。
火耐性あるからある程度熱は大丈夫だけれど……
わかっていても結構マグマに飲まれる経験はドキドキさせる。
だが冷えて固まるのは話は別。
私はすぐに”防御”をといてすぐにジャンプ。
できた隙間から抜け出せた!
「ぎゃあああーーっ!」
「フンッ」
エイヘムが熱さで飛び上がりころげまわっていた。
大体破壊して致命傷は避けられたらしいが最後に押し切られたらしい。
シローはパワーで抜け出してきた。
問題は騎士たちだ。
「ぐううっ」
「トヨトミ様!」
騎士たちはまとめて受けたためマグマが盛り上がり溶岩としてまとまってしまっている。
幸いそのおかげでナブマサさんは無事そうだけど。
「大丈夫ですか!」
というわけで騎士たちの溶岩を魔法で破砕する。
土魔法の応用だ。
魔法が作用した瞬間に発動を崩すことで一気に魔力が霧散し……原理は置いといて溶岩は崩れる!
「むっ! 助かった! 今だ!」
「「うおおおおっ!!」」
「ここで終わらない、そこだぁっ!!」
そしてマグマトロン。
騎士たちが一斉に抜け出したところでまた震えだす。
2連続か!
種族魔法は独特すぎて初見で見分けるのはむり。
2連続で使える特長とかね!
さらなるマグマウェーブがくる!
「みんな、これに耐えて!」
「ぐぐぅっ!」
「集まれ! 火力をぶつけて切り抜ける!」
「ああ!」
先程ので作戦変更。
同じ位置にみんな集まった。
こうすることで正面のマグマを削れる。
「「はあぁっ!!」」
全員が一斉に攻撃を出してマグマの波とかち合う!
正面をたたっ斬ることで僅かな隙間を生み出して……
そこから全員抜け出した!
「何!?」
マグマトロンは大技のあとでスキだらけだ。
そこに灼熱を浴びて焦げつつもみんな突撃していく。
回復するため唱えつつそのまま私は構える。
そのままエイヘムが突撃して弾丸が撃ち込む。
騎士たちがまた陣形と共に足をひきたおすように動き……
シローはそのまま大きく飛び上がって頭を切り裂き。
ナブマサが手のひらを叩いてマグマトロンの腹に大爆発が起きる!
「うぬぬぬっ、立ってられないっ」
巨体が倒れる。
度重なる足へのダメージでついに引き倒した。
当然マグマトロンは抵抗するように腕や体を動かすがだいぶやりやすくなっている。
足先だとガチガチに固められた部分が攻めれるだけでうまいことダメージが入らなかったが……
これなら別だ!
「よし、回復!」
「うわっ!? 一斉に回復!? マイレディ、どれだけ驚かせるんだぃ!?」
「助かる」
「相変わらず美しい質だ……いけ! これほどの回復力なら、押し切れる!」
騎士たちが勝どきをあげて取り囲んでいく。
エイヘムとシローはそれを見てマグマトロンの体に取り付いた。
登る気だ!
「う、うなはは、熱い! 熱い! だが、レディの抱擁よりは断然ぬるいね!」
「フンッ……!」
彼らの熱は相当なもののはずだ。
魔法とスキルで防御していてもまさしく身を焼く状態。
それでも気合をこめてのぼっていく様はまさしく冒険者。
「バカめ! ワタシの体に張り付こうなどと! 溺れて溶けな!!」
マグマトロンが全身からあふれるようにマグマを放出しだす。
マグマトロンの天然のアーマーはこれが危険だ。
「エイヘムさんはもっと右へ! シローさんは左の方へ少しずつ! 騎士さんたちはええっと、ここに避けて!」
「なんだ!? 視界に知らない光のポイントが!?」
念話の応用です。
それにマグマの出るところは読める。
赤外線で熱量はかってるので。
表した軌道じょうにみんなおずおずと移動するとマグマがするりと避けるようになっていく。
流れの予想は簡単だ。
遠くから見ていれば凹凸の違いがよくわかるからね。
「おお!? マイレディの言うとおりに動くと、魔法のようにくぐり抜けられる!」
「ついた」
「そこからなら、いけるよ!」
エイヘムは斥候ゆえさすがに速い。
あっという間に首元へ移動し近距離射撃をくわえる。
シローもつづいて腹の一番鱗が薄い場所へ。
カタールをガンガン振り込んで光を纏わせ切り裂いていく。
「右腕来てるよ!」
「っ!」
指示出しを忘れない。
腹や首は当然迎撃される範囲。
騎士たちが妨害する方に主に割かれているがたまにとんでくる。
シローが腹の上を転がるように腕を避ける。
ついでに斬りつけていくのもわすれない。
溶岩をまとっている部位はほとんど効かないが逆に言えば溶岩のない部位なら効果的。
腹はよく動く部位かつマグマを作り出す熱がある。
熱いということはその場にいるニンゲンも危険だがチャンスでもあった。
部位がかなり柔らかいからだ。
首を近距離で撃つエイヘムはひっかき落とされないよう何度も肩側へ移動している。
当然肩は手の爪が届く範囲。
すぐに首側へ移動しそのまま撃って移動。
「ホラホラッ! なんだ、ここまで来ると単調じゃないかい!? レディとの駆け引きのプロである僕が、こんなのにかかるとでも!?」
2丁拳銃は身軽という利点を最大限利用している。
斥候ゆえ観測を身誤ることもほとんどない。
マグマすらも撃ち飛ばし駆け回っていた。
騎士とナブマサさんも大立ち回りだ。
指を鳴らして爆炎を当てて。
そこに騎士たちが槍をつき入れ破砕。
溶岩がなくなれば防御能力は薄い。
大量の攻撃はやはり強い。
いくら対人用特化とはいえ戦えないのとは違うからね。
慣れてくればガツガツ切り込んでいる。
「アダダダダ、ふざけ、ふざけるな!」
「この! 大人しくしろケダモノめ! 淑女たる皆様をみならえ!」
そのドラゴン淑女っぽいんですけどね。
それでも戦いは続く。
とはいえここまで追い詰められればドラゴンがやることは1つ。
「いい加減に、しろぉ!」
足をやられ立てないマグマトロン。
そこをチクチクやられれば生命力も削られるし逆転が難しい。
ならばとして一気に翼へ力を込めた!
翼の行き渡るエネルギーで浮力が生まれ危険を察知しみんな飛び降りていく。
やはりというか一気に浮かんだあげく全身を回転させてからに力を開放するように全身を開いた!
「危なかったぁ、アレに巻き込まれていたら吹き飛んでミンチだ」
ミンチになる前に私が助けるが今は逃げられたのでよし。
「はぁ、はぁ、はあああああぁ………!!」
「な、何か来るぞ!」
「ドラゴンブレス!? いや、あれはなんだ?」
「ドラゴンロア! 集まって!」
ごく一部のドラゴンたちが扱える正当なる大技。
強力なる竜たる証。
「ドラゴンロア!?」
「ハァァァァッ!!」
マグマトロンは全力で叫ぶとあたりが一瞬で閃光に包まれる!
私達はそれに飲まれて……
「はぁ、はぁ、灼熱の竜哭は、地面すら溶かす……これを使うと、恐ろしく疲れるから使いたくなかったが、これで……」
その言葉のとおり。
荒野の地面は燃えるように溶かされ一部が吹き飛んでいた。
本来どこにいても空気ごと燃やされ滅却されるほどの力。
空気が戻るまでの一瞬こそが爆発的爆炎の規模を物語っていた。
だからこそ。
「何……?」
そこに残された大きな塊。
今のを受けきり役目を終えて崩れ去る。
私が”銀の神盾”と地魔法でアレンジした銀大地の守りだ。
ドラゴンロアは見た目と違って連続ダメージ。
一瞬にして何回も浴びせれれるから回数系シールドを貫通させられる。
当然威力も高い。
だからこそドラゴン系の必殺にして最終技。
だがその能力はあくまで初見で絶対に殺し切るから必殺技なだけだ。
私の仲間に使い手がいる以上その対策は常に考えておくものだ。
……ちなみに私単独の場合アレでも大きなダメージは受けないっぽい。
観察した感じそうなる。
属性が火系なのが相性だなあって。
「いこう!」
「「おおーっ!!」」