二百九十六A生目 休暇
この瞬き衝撃波はとにかく衝撃が強い。
発生が早く初見殺し。
かなり便利だ。
問題はそこまで高威力じゃないこと。
使うには瞬きする必要があることだ。
やはり瞬きは思ったより集中力が削れるってのを自覚した。
さあ次の大技!
「大魔法!」
私は理論上あらゆる属性の魔法を扱える。
ただ元々もっていた能力のほうがやはり使えやすい。
なので知っている属性を神の力で大きく変質させる!
私の背後や上そして空に巨大な魔法陣が生み出されている。
全ての魔法陣から巨大なエレメンタルの球体が生まれる。
魔法陣は身を守るためにあるが……これは同時に砲台だ。
高速で撃ち出す!
炎が生み出され燃えて。
空間で押しつぶされて。
岩石が爆発し。
雷が走って光り。
光が清めるように美しく吹き飛ばし。
埋め尽くすような闇が赤く染める。ピンクともいう。
そして炎の砲弾だ焼き尽くしてから……
「巻き起これ!」
吹き飛ぶような威力の魔法が起こる。
そうこの大魔法はここまでが土台。
今撒き散らされた連鎖した魔法のエネルギー残滓を利用する。
神力でまとめあげて神の業をここに顕現する。
まだエネルギーの塊が渦巻いているだけ。
ここに着火するにはこれを発動する。
腕を正面から見て円になるように回して。
極化魔法砲!
これは進化する時に使うような魔法を混ぜるさいに生じるエネルギーを正面にぶっぱなすとんでも技だ。
これが惨劇の地に飛び込んで……
渦巻くエネルギーたちに火をつける。
「うおわッ」
その瞬間光る。
ちょっとやそっとじゃなくて閃光。
一回エネルギーたちが全部一箇所に集中しだし……秒もたたず1つの真珠みたくなって。
それが地面へ落ちて割れるとあたりが光で溢れ出し……
何もかもが光のうずの中へ飲み込まれていく……
この間僅か1秒。
私自身の身体は魔法陣によって保護されているがそうじゃないあたり1面はどうなっているのか。
「ウオフッ」
そして轟音と体の底に響くような衝撃波。
魔法陣なかったら吹き飛んでること間違いなし。
この進化した身体でもだ。
例え生き残っていても目と耳が完全にやられるだろうなあ。
ちゃんとガード成功させて無ければ初見回避は無理だ。
「収まった……?」
そうしてしばらくたったころ。
轟音が遠くにはけていき光が明滅と共に消える。
そうすると。
そこには何も無かった。
周囲には広く崖が展開していたはずだ。
全部綺麗に吹き飛んでしまっている。
見渡す限りの丸い穴。
ここを中心に爆心地があったのがよくわかる。
まだもうちょい魔法部分に仕掛けが出来るなあ。
今のは魔法と魔法が連続で放たれた際の連鎖反応を利用してダメージを底上げしたものだ。
本来は多人数が連携……つまりコンボすることで少しずつ威力が上がっていく。
前と違う属性がコツだ。
その上でそれをひとりでやり遂げる大技。
神力を用いて描いた魔法陣に詠唱者を代用させたのだ。
だから魔法陣は私を中心に展開されなかった。
擬似精霊というわけだ。
だがそれだけじゃない。
その間私は別の魔法を4つ分練っていた。
それらを最後のときに反発するエネルギーを進化ではなく外に撃ちだして極化魔法砲とした。
1周させた魔法たちのエネルギー循環は異様な程に高まっておりつつくだけで火がつく火薬庫状態。
そこに爆弾ぶち込んだらどうなるかというのがさっきのものだ。
「あ、イタ吉は?」
遠くの方に視線を向けると瓦礫の山が1つ。
パラりと石がこぼれ落ちて。
イタ吉たちが這い上がって来た。
「ごめーーーん!」
「範囲考えろーー!」
「威力ヤベェだろー!!」
「戦わせろーー!!」
相変わらず血の気が多いイタ吉。
これの余波を食らっての感想が戦わせろだなんて。
「だったら、やろーかーー!」
「もちろんーー!!」
私は亜空間から最後の携帯食を取り出し食べる。
流れ出す手先の汗を水で流し口にも流す。
よし多少は良くなった。
正直体はもうガタガタだが。
イタ吉の方もボロボロだし良いバランスというやつだ。
イタ吉がニッコリというよりニヤリと笑う。
私もつられて笑った。
「行くぞーー!!」
「おおーーっ!!」
そうして互いに拳にパワーを込めるのだった。
戦場の傷跡はそう簡単には癒えない。
しかし日常は戻り出す。
日常は無理やりにでも戻さなければ生活できないからだ。
アノニマルースににわかに活気が戻り出す。
それは音となって街の中に響いていた。
活気のある声や工事の音などまあ凄い騒がしい。
それは少し前にあった陰鬱な戦争を吹き飛ばすかのように。
わざとらしいほどの明るさだった。