二百九十四A生目 破滅
「僕たちもそこまで詳しいわけじゃない。おそらくこの世界の中でも最悪レベルの力だを持ち主に力を寄与しているようにも見えないし、その割には解放されているから使えるようにも見える。ローズ自身は?」
「なんの感覚もない」
「それはそれは、今のキミ、神から見たらとんでもない呪いを秘めているようにしか見えないよ?」
スキルで呪い反転出来ているけれど何か違いそうだなあ。
「呪いかあ。どういった類のものなのかなあ。少なくともみんなは、そしてシーマも発動中の呪いは目を背けなければならないほどの恐怖を感じていたし、あと本来は無尽蔵のエネルギーを生み出すらしいし」
「そうだね。報告を受け取った時は、まさか終末の獣に関して僕たちより進んでいる勢力があると思っていなかったよ。その事に関しては、月側の管理者からの報告待ちかな」
「シーマに拷問とか?」
「神に拷問してどうするんだい。意識がない今の状態で無理やりサルベージするそうだよ」
「サルベージ」
ヤバい神様がいそうだ。
ただそれなら少しは情報が集まりそうだ。
「ただ、あまり期待できないそうだ」
「ええっ!? ど、どうして」
「どうも軽く探って見た感じ、シーマもそこまで詳しくなさそう、というのが所感だ。あくまで自分の計画に組み込めるものを求めて、たどり着いたんだろうね」
「ざ、残念……ただ、もう力が発動しちゃったってことは、きっと予言の時は近いよね」
「今、現存する別の予言系の神に占い直してもらっているところだけど、ほぼ間違いなく決戦の時は近いよ。ああ、神感覚じゃなくて一般論ね」
「つまり……1年かそこらで、私に関することで、世界が破滅する可能性がある、と」
「キミが世界を破滅させるとは思わないから、恐らくキミの力を利用してか、キミきっかけで動いた何かが世界の破滅に繋がるんだろうね」
破滅かあ……
うん? 破滅。何か引っかかるような。
世界の破滅……
「まとめるとこうだ。ローズの中にある謎の呪い、終末の獣。ローズの魂が特殊で転生者であることが、恐らく関係している。予言では、その終末の獣が世界そのものの破滅と関わっていると示唆されている。終末の獣の力は無限のエネルギーを発生させることが出来るらしいが、詳細不明で……」
「……あっ」
「どしたの急に? 花摘みかい?」
「そうだ。世界の破滅だよ。私、夢の中でなんども世界の破滅を見届けている」
蒼竜の目がスっと細められる。
やっぱりこれか。
確かに何かおかしいもんなあ。
「詳しく聞いても?」
「とはいえ夢だから記憶は曖昧だよ。まず世界が焼けているのが見えて、炎と死のにおいが充満しているなか、私だけがそこにいる」
そう。私だけ……のはずだ。
そうだよね?
「そして、その中で私は明晰夢として無駄にはっきりした意識の中、歩き回らされる。とにかく夢の中の私は、アレを世界が破滅した状態と認識していたんだ。この夢だけは、すごく生まれて少したってからずっと見る」
「なんと言うか、まさしく情報が少ないね?」
「とにかく起きる時はひどく疲れていて、あと誘導かなにかみたいな? お前がこうしろ、世界を終わらせろって言われているような気がして、それを外から攻撃受けていたのかなって、良く警戒していたんだよね」
「何それ怖……」
普通にドン引かれてしまった。
だからあんまり他者にベラベラ話してなかったんだよ。
「ただ、今回で少し分かったことがある。多分あのどこからか発せられる、私を夢で苦しめ起きて疲れさせるあの夢。正体見つけたらほんと許さんぞって思っていたんだけれど……まさか内側からだなんて」
「なんというか、完全に機能としては眠っている状態でソレだったとは、あんまり良くないねえ。それでその誘導についてはどう思ってるの?」
「うるさくて腹立つなあって」
「少しでも心配した僕が悪かったなあコレ」
どう言う意味じゃい!
私が苦しんでるんだからもうちょい心配して欲しい。
「いや、そんな顔をされてもさあ。そういう神でもない頃に、意識を洗脳でもされていって傾向変化させられたら、危ないよなあって」
「そこに関してはほら、私幼い頃から意識はしっかりあったし」
「つまり、転生者にはそもそも効き目がない効果のものがたまたま……って言うことか? だとすると、転生と終末の獣って関係が薄いのかな……」
そいや蒼竜は元々転生者に目をつけて行動していたんだった。
確かに転生者ならこの世界壊す可能性はままある。
愛着がなくとんでもないパワー……今回の場合終末の獣パワーを引き出して覚醒でもしたら終わりだ。
私の場合相性が悪いのかまったくもってきいていない。
そんなので世界を滅ぼしにかかるか! とは思いつつ。
本来ならとんでもない呪いであっという間に意識を持っていかれた可能性がある。
だがそうはならなかった。
明らかに私が終末の獣を持つのは片手落ちだ。
「なんというか、予言通りには行っていない感じだよねえ」
「または、これでも予言通りに落とせるのかもしれない。先日の件みたいに、無理やり利用すればおぞましい力でも引き出せるんだろう?」
「う、うーん、それなんだよね怖いところは。同じ轍を踏まないようにスキルは整えたけれど……」
「相手もそれ前提で捕らえに来られると、ローズとはいえやはり難しいよねえ」
「ううっ、最近、ただ普通に過ごすことの難しさを痛感しているよ……」
「そういうもんさ。敵がこういう時、手を抜いてくれるはずもないってことだからねえ。僕がなんとか出来て覆せればそれが一番良いんだけれど……」
「それこそ、今私を殺し封印しておく、とか」
「その仮定は無意味さ。結局キミが世界を滅ぼすわけじゃない。むしろ、キミが完全に滅ぶ事が世界の滅ぶスイッチになる可能性もぜんぜんある。そんな爆弾処理を、乱暴にやって予言が覆るとは思えないねえ」
そういった事もやはり想定済みか。
まあそりゃそうだ。
死ねば解決なら私が神になる前に処理すればいい。
破滅の予言はそんな簡単に覆せない。
それが破滅の予言と言うやつなんだろう。
「とにかく、この呪いが起きちゃっている状態をどうにかしたいなぁ」
「難しそうだけれど、やって見る価値はあるね。こっちでツテをあたってみるよ」
「頼むよ。私も爆弾を抱えながら過ごしたくないし……この話を聞いた以上、無理やりにでも参加させられるんだよね、世界を破滅させないと言う責任ね」
「えらいねー、もちろんそうだよ!」
クッ、明るい顔で面白そうに言いおってからに……!
ただ私としてもそんなことほうっておきたくはない。
まだまだ世界は全然現代に追いついていないんだから。
つまるところ魔物の地位も低く私もゆったり過ごせないということ。
「どうやら、ゆっくり冒険出来なくなりそうで嫌だなぁーー」
「キミ、ゆっくりの意味を辞書でひいてみたら……?」
しらんしらん。
話し合いはつつがなく終わった。
結局は前とやる事や姿勢は変わらないのだ。
予言の内容は以下の通り。
その者、世界に呼ばれし時、世界に終末が訪れん。終末を乗り越えんとせしものたち、それはあの日の結びを得るもの。雪を超えてゼンと化せ。
その者世界に呼ばれし時、これはもう転生者のことだろうね。
終末が訪れん、ここは終末の獣が来て世界が滅ぶよってことだと考えられている。
終末〜〜から得るもの。で約束した5大竜等が戦い抜くってことで。
雪を超えてはおそらく季節だということ。
それの起きる場所が冬だと言うことだ。
ゼンと化せも解釈が別れるところらしいがここまで来たらもはや破滅を覆せみたいな話だろうとのこと。
ゼン自体は言語的に当時の意味合いで終わりとか究極とかそういう複数の意味合いのある単語らしい。
Ωが近いのかな。
元々予言は予言らしく短い中に複数の意味合いを込めるものらしい。
どれがその正体かの見極めがいる。
どうとでも取れるのだから当たりやすいのではと思ったが……
そこはさすが神。
そもそも本人がいたら割かし具体的な読み取り方もセットだったらしい。
最終的な受け取り方は任せられたがその読み自体の的中率がとんでもなく高いのだ。
ちゃんと読み方を残していってほしかった……
まあその分襲われて居なくさせられた可能性はある。
神だって完全なる不滅の存在では無い。
輪廻の流れに無理やり乗せられた可能性はある。
もしそれをやれるとしたら旧き神々だけらしいが。
そんなヤバい相手に目をつけられている可能性あるのか。
旧き神々は文字通り次元が違う存在だ。
殆どは現存していないはずで神の間でも伝記的存在。
その神々は倫理も常識もまったく通じないらしい。
今旧き神々はその影響だけを残していることがほとんど。
魔王フォウもジャンル的には旧き神々だ。
もはや別存在に近いが。
だから旧き神々が予言の神に関係あるかもという話はあんまりピンと来ない。
ただ蒼竜の様子的にはかなり警戒していた。
多分まともに戦って勝てる相手ではないんだろう。
「はぁ……疲れた」
ただ今は休ませてほしい。
本当に切に。
トラブル多すぎるんだよぉ!
それからしばらく。
もはやずっとトラブルに巻き込まれるのかと思うほどの内部処理をして。
そのあとは外部処理……つまるところ外交だの治療する為の海外旅行もして。
休暇? そんなものはないよ。
いや言えばくれるんだけれど自営業みたいなものだ。
やればやるほど仕事の先が見えてくる。
それを片付けなければとなって今にいたる。
いやだってさあ……
普通に命かかっている話がたくさんあるんだもの。
私が手を抜けばそれだけ死者がでる。
じゃあ抜けるものも抜けないじゃん?
ホルヴィロスだって現世に関わるのは限界があるからね。
ホルヴィロスのモチベーションと私のモチベーションはかなり違う。
ホルヴィロスは医者で神だ。
場合によりシビアな判断で行くし無制限に救おうという感覚もない。
目の前の命を救う。
それに集中している存在だ。
私はもう場合によっては死んでようがいけそうならたすけるんで……
なのでまあくたびれるまでくたびれた。
まず手数の問題もあるしね。
あちこちに感謝されたり喜ばれたりしたので良しとしよう。
幸いバイタリティがないわけではない。
というかバイタリティだけはなぜか溢れていたのでそれにかまけて仕事していたというか……
万能感を仕事で消費し仕事で尽きる。
なんてしょうもない万能なんだ。
さて。
つまるところ今日は休日が取れたのだ。
あれからヌルに呼びかけても答えは帰ってきていない。
正直困っている。
聞きたいことはたくさんあったのに。
ただ起きてこないならば仕方ない。
「今やれることをやろう」
再度特別訓練所まできた。
今日やるのは進化である。
そうあの時なんか流れで行われた進化。
ちゃんとチェック出来ることなく慌ててたままおわってしまっていた。
んじゃあ改めてといった感じだ。
ちょっと工夫しないとなあ。
何せあの時はテンションで壁を超えた。
ただ感覚は掴めている。
理論だてできないので再現性がないのが問題。
「えーっと、こう、か? だったらここのバイパスを結んで、ならば回転率を上げて練りあげれば……ちがう、練り上げるのは感覚的に別だなあ。だったらこっちかな?」
おっ。
今体の中で線と線が繋がった気がした。
なるほどこうなるのかあ。
結局神力と魔法のエネルギーをうまく混ぜる際に力のコントロールは常に悩んでいたんだけれども。
意外なところで解決した。
もっと肩の力抜いても良かったらしい。
なにより大事なのは全コントロールし切れない分を外で感じること。
やはり大きく根っこが成長したらしくって余裕さが違うなあ。