二百八十八A生目 封神
もはやここで戦いを決めるつもりだ。
ツイスト飛行してスレスレで避けられるか!?
「あわわわわ」
(うおおおおおっ!!)
(せいやぁっ!)
いけッ!!
思いっきりイバラが削られる。
勢いをつけられて叩きつけられる勢い!
背中の翼も半分もげて……!
思わず尾を巻きかけるぐらい下げると同時にそばへ機械が。
無理やり切り下ろししてきた!?
背中や肩が……灼ける!
「いたたた」
それにしてもヌルのリアクションも薄いがこっちもそんなに痛み感覚がない。
脳にドーパミンというよりもっと根幹的なものだ。
これが創り変えた肉体か……
それはともかくとして……抜けた!
若干体の傷がえぐくって光が散っているけれどチャンス。
全攻撃を叩き込む!
まだ腕の届かない範囲。
まず爆発系魔法を放って〝二重詠唱〝により連鎖爆破。
ほんのわずかなズレを生み土と地の魔法で高火力を叩き込む!
ちなみに別系統をズラすのは同時に放つと合体魔法になってしまうからだ。
それは今意図するところではない。
コンマ1秒を競う中とがった岩たちが生まれ集結しだしたり槌が生まれ叩き飲んだりしだす。
シーマは驚きに目を見開くところだった。
(そーれ! あたらしくイバラだして! れんぞくぶぎ!)
イバラたちが空中から生えて連続武技。
猫舌打ち先が細かく別れたイバラで防御能力を下げて。
縛り付けで一瞬腕を拘束し。
拷問払いで執拗なうちつけをするイバラを向かわせつつ……
龍螺旋でイバラのうち2本が空を舞い出す。
この間も私自身の動きは止まっていない。
体にくっついていない利点だ。
事前に準備していたからスムーズに展開していく。
飛んでるのか落ちているのかわからないがもうあとは突っ込むだけだ。
手にはしっかり鞭剣ゼロエネミーを握っている。
シーマがガードのために機械を回そうとした時に最初の爆発魔法が炸裂。
そのままガードをしきれない。
体勢が悪かったからね。
次々岩やら土の槌やら当たりだしたところにほぼ同時にイバラたちのラッシュが打ち始める!
「くっあっ……!!」
スーパーアーマー……!
怯んでない。むしろパワーが増して殴られつつ振ろうとしている。
強引な大振り。どうしたら……いや。
(もうやり切るしか無い! 効いてないわけではないからな!!)
そう。やるっきゃない。
まだ1秒前後のやりとり。
龍螺旋のイバラはまだ舞っている。
舞いのチャージが終わらないと攻撃はしてくれないの知っていたから大丈夫。
シーマが両手に持つ機械が唸りだす。
もう時間はあまり残されていない。
鞭剣ゼロエネミーをしっかり持って突撃。
もはや剣のリーチだ。
(斬れっ、斬れっ!!)
振りのタイミングはドライが完璧にゼロエネミーと合わせる。
ドライがヌルを使いゼロエネミーを振るっていく。
伸びる斬撃。武技を発動したあとにスキをつなぎ武技で繋いでいく。
(叩きつけ! 連牙! 四足乱舞! 通常斬りつけからの、重連牙貫!!)
ゼロエネミーは自由だ。
その本質は姿の変化をして自由な連撃を擦ること。
私の手足かのように斬り込める。
前まではゼロエネミーだけでは出来なかった武技を叩き込んでいく。
最終的に一瞬で何重もの攻撃を与え……
遅れてきた龍螺旋のイバラたちがその肩に当たった!
「……グッ!?」
よしやっと怯んだ!
このまま突っ切る!
剣ゼロエネミーを脇に抱えるよう構える。
この体勢は振る力はない。
だけどしっかり固定されるので……
突撃!
さらに追加で加速し防御全捨ての突き刺しだ!
「わああっ」
(はあああああっ!!)
(いけえぇぇー!!)
そして……ゼロ距離。
すれ違うほど隣接したときに。
シーマは必死な目を向けてきていて。
ヒザが素早く差し込まれそうになり。
だが崩れた。
爆発が起こったのだ。先程龍螺旋が打った肩に。
龍螺旋は遅れての爆発が売りだがこの回1度も使っていなかった。
完全な初見殺し。
爆発は私の使った力の光なので私自身は無視できる。
いや本当は眩しいし勢いもすごいので痛くないだけなのだがこの体のおかげかそれらすらあるけど無視できていた。
そして鋭い1撃は静かに……刺さる。
互い……つまりヌルとシーマは静かで私たちは騒がしい。
その瞬間は世界の音すら止まって聴こえた。
あるのは確かな手応えのみ。
そして世界の音が戻る。
正確には私の知覚が戻ったのか。
轟音と共に私とシーマは共に堕ちていった。
「グアッ……!!」
胸に剣ゼロエネミーが突き刺さり力及ばす落下するシーマ。
気分的にはもう終わりでいいんじゃないかなと思いつつ同時にまだまだ落下中という現実に戻される。
ねじりながら力を込めて引き抜き蹴って離れるとシーマは落下していく。
あれほど強大だった相手が一瞬で地面へ落ちて行き大きく着地と共に土煙を上げていった。
私は治癒魔法を唱えつつ残心。
すると……何かパリンと割れる音が。
同時に不可思議な感覚がした。
「あ、世界が今ので壊れちゃった」
ヌルがそうつぶやくと同時に世界が……この神域がバラバラにくだけていく。
やがて最後に空中にいる私と地面に倒れ伏したシーマの姿が元の世界で露わになった。
「「ローズ!!」」「主!」
遠くからみんなの声がする。
そんなに場所は移動していない。
元の場所に戻ってきたらだろう。
とはいっても戦闘部分じゃない制御下はいまだにヌルだから答えられないけれど。
「みんなー! もう少し待っていてくださーい!」
「あ、さっき話していたヌルだ……」
「ヌルは果たして主なのか……?」
向こうからヒソヒソ声が聴こえるがまずは目の前の相手だ。
まず神殺しの大剣だ。
既に地面に突き刺さり機能は停止している。
歯車たちが回らなければあのはた迷惑な侵食を撒き散らさないらしい。
これは没収である。
私が使えずとも封印に意味があるということで空魔法〝ストレージ〝行きだ。
シーマは胸に大穴をあけ四肢がちぎれかけている。
耐久値というパラメーターとしてはゼロだ。
全身に電気が走り見た目からして破損している。
……だが。
「やってくれましたね……戦力比的には絶対に負けなかったはず。奥の手を出してさえ、こうなってしまうとは」
生きている。
シーマの肉体は全壊してもシーマ自身は操り人形だ。
むしろ上にいる存在に自分を操らせているとも言えるが。
ぐっと浮いて起き上がる。
シーマ自身に力はまったく入っていない。
またパーツがおりてきた!
(させるかっ!)
ドライが急いで見えないイバラを動かす!
吊り下がったパーツに向かい……
しかしてそれより前にツルが全部に巻き付く。
ホルヴィロス!
「ローズばかりに任せるわけにはいかない! ローズ、今のうちに!」
「いつの間に!?」
ひっそりと隠れていたらしいホルヴィロスがパーツを縛っていた。
そこに見えないイバラを重ねる……が。
シーマはシーマでその中から足を強奪。
無理やり変えられた。
換装自体は本当に神業レベルで早いから来るとわかってなきゃ防げない。
わかっていてもこれだ。
足が直ると高速で駆け出し追加の換装パーツを出す。
あれ連続で出せるんかい!
取り上げようとしたもののさすがに今度は警戒されていた。
伸ばした先に避けられる。
イバラ見えてないはずなのに!
いや……見えてなくても誘導はできるということなのかな。
結局一瞬でフル換装されてしまった。
「なんだあれ、ズルいよそれは!?」
ホルヴィロスがわりとお前が言うか的な発言している。
ただまあ気持ちはわかる。
このままだと千日手だ。
「うーん、だいぶ追い詰められて弱っていますね? 今なら、こう、気合で封印とかできないですかね?」
ヌルが突如そんなことを言い出した。
そんなことが出来な……いや……できるのか……?
「封印……そうか、神の封印を私とローズで合わせれば、もしかしたらいける!? でもその場合、何か媒体がいる……」
「媒体ですか……? 私はわからないですけれど、私の中にいる彼女らなら、何かわかるのかな……?」
わかんないよ!!
(だが、やるとしたらそこしかない。シーマはもう明らかに行動が消極的になってる。ヌルの体も半分壊れかけたが、今はなんとか繋ぎ止めれたしな。優位に立っているのは今だけなんだろうよ)
(うーん。だいたいふーいんって、すごいものでやるよねー? かみさまとじこめられるくらいだし)
ふーむ。
確かに……神力そのものはなんだってできるはずのものだ。
だがそれを正確にイメージしコントロールするには私には封印というものがざっくりしすぎている。
対してホルヴィロスは封印に対しておそらく具体的なイメージを持っている。
これは親の影響だろう。
ケルベロスの封印術を何度も見てきたり教わっていてもおかしくない。
「ローズ? ローズの中のローズ! やってくれるよね! 合わせて力を!」
ホルヴィロスの呼びかけに頷いておく。
こういう動作ならなんとか利くんだよなあ。
ホルヴィロスも頷く。
シーマのほうもこの数秒で構え直したらしく凄まじいエネルギーが集まりだす。
な……なにをする気なんだ!?
「全員、突撃!」
「なにかする気だ! 止めるぞ!」
「「おおおお!!」」
「くっ、近づくな!」
シーマにどんどんと寄っていくのはみんな。
凄まじい力を発しているもののシーマ自身の動きはだいぶ鈍くなっている。
数でみんなが囲み押して行っていた。
もはやシーマが対応しきれなくなっている。
大技の使えない弊害だ。
ただあれが成るととんでもないものが来るけれど……させる気はない。
「わかったぞ! こいつ、自爆する気だ!」
「何っ!?」
「止めましょう! ここで自爆されたら、こっちだけ大損害ですよ!」
「気づいても、関係はない。全員巻きコワで」
イタ吉の予測に全員戦慄が走る。
シーマも認め鬱陶しそうにみんなを追い払っている。
ここまできたプロしかいないから数押しでもみんな技工が凄まじく簡単には負けていない。
私が戦っている間ホルヴィロスの回復もしていただろうし。
あっちは任せるしか無い。
「ローズ、行くよ……!」
ホルヴィロスの合図と共に念じて神力を練り上げる。
「シーマ、どうやらキミは終わりのようですよ。もはやキミの攻撃がどうであれ、封印はできそうですし」
「黙りなさい! 私はここで終わるわけにはいかないっ、この戦いで私達の未来を取り戻す……それは、私自身を犠牲にしても成し遂げる。どうしてもだっっ!」
「うわっ!?」
凄まじい圧力が放たれていく。
みんなが吹き飛ばされまいと耐えていた。
むしろ荒れた床の物陰に隠れ遠隔攻撃し邪魔している。
〝ストレージ〝からさっきの神斬りをとりだす。
神斬りは私には反応せずスンとしている。
持つことはできるから良しとしよう。
「お? おお、もしかしてあれかな、コレに封印するのかな」
「なるほど、良しっ! ヌルさん、それを両手で掲げていて!」
「よしきた」
ヌルが両手で神殺しを掲げるとシーマが突っ込んできた!
まずい。取り返されたらシャレにならんぞ。
だがその横にタックルする影。
「クッ!?」
「させるかっ!」
アヅキだ。
がむしゃらなタックルがむしろシーマに深く刺さったらしい。
共に倒れ込んだ。
そこにイタ吉やグレンくんなんかも来て的確に攻撃し抑えていく。
アヅキは素早くホルヴィロスのツルが拾い上げた。
あとは全員で再度囲む。
「ふぅ……神を封じる」
ホルヴィロスが集中するように息を吐く。