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二百八十七A生目 逆転

 ヌルの意識が表にでているのはもうどうしようもない。

 ただ動きをこっちで制御できるならそれでよし。


(やるぞ! ポッと出の新人はとてもじゃないが仕事を任せられない!)


(レンケーのレンケーしてボコボコにするんだい!)


 よーしやろう!

 今の意味わからん出力で息もつかせぬ連撃すればシーマですら押し切れる!

 その感触は確かにあった。


「慣れてきたのか……!? ここにきて、さらにギアを上げてくるとは。くっ」


 シーマを襲う魔の連撃。

 大地から響く唸りや空から舞うイバラのトゲ。

 更には不意に見えないイバラ自体が襲ってくるしヌル自身はその同時操作をものともせず中〜近距離ファイトをバチバチに仕掛けていく。


 正直やりづらくってしゃーないんじゃなかろうか。

 さっきまでのグダグダの戦いとはまるで違う。

 また雷撃をエリアではなってきた……ので。


 今度こそ!


「おおっ! ゼロエネミーですね!」


 ヌルが喜んでいるなかゼロエネミーはその剣で雷撃を切り開く。

 そして全部飲み込んでしまった。

 そうこの子は雷撃吸収なのだ!


「なんと! この規模の雷撃を全部!?」


 そしてその力を変換。

 一気にまとってヌルが持った。

 当のヌルは頭にはてな浮かべた顔しているが。


 だが問題ない。

 ドライが振るう!


(剣っていうのは、こうやるんだったよな!)


 ここまで来た時に見てきて感じてきたゼロエネミーの動き。

 それは確実に私達に良い影響を与えていた。

 それは今までにない最適な斬撃を放てるほどに!


(武技……)


 剣弾水プラス〝回転斬り〝!!


 剣先から水が溢れ出しそれごと回転斬りの勢いに乗せる。

 当然神力上乗せだ。

 この斬撃は今までのどれよりも……イバラで振っていたときよりも、単独で振っていたときよりも。


 前のどの斬撃よりも強い剛剣だ。

 

 これは剣になったという稀有な経験から得られた最適解の斬撃。

 剣は誰かに持たれるためにある。

 紆余曲折あって私たちが出した結論だった。


 剣の時の感覚やイメージを正確に再現したが……

 それにより今までとまるで違う斬撃を繰り出せた。

 今周囲に飛び散る水の斬撃は今まで見たことのない手応えを感じている。


「うぐああぁぁ!!」


 最初シーマは対応に追われ飽和した攻撃でこれも捌こうとした。

 だがすぐに気づいて避けようとした。

 本命の斬撃はこれだと。


 しかしてわかれば避けられるというのは必殺たりえない。

 シーマがよけようとした瞬間にその殺気は形をともなった。

 あまりに強い斬撃がその胸に叩き込まれたのだ!


 シーマはくの字に折れ曲がって吹き飛び岩ごと斬り飛ばして吹き飛んでいった。

 ホームランだ。

 そして斬撃の余波で周囲が地面ごと剥離し吹き飛んでいく!


「うわっ!? 派手にやりましたね!?」


 うわぁ。すごい景色になっちゃった。

 爆心地じゃんもはや。

 通常よりはるかに頑丈なこの神域の土地ですら大幅な破壊が免れていない。


 当然これを喰らった方はさらに無事では済まなかった。

 走って向かって見ると既にそこのシーマは立ち上がっている。

 そして上から来たパーツを一瞬で取り替えていた。


 前のパーツは胴体含めてバラバラにくだけている。


「この……! やって、くれるではないか。だがまだだ。私は、こんなところで終わって良いためにきたわけじゃない。私は、私自身と、踏みにじられた同胞のため……負けるわけにはいかないのだ!」


 何かやれる前に完全に回復が終わり追加で巨大な何かを出してきた。

 手に持つソレは剣のようで剣には見えない。

 多数の歯車と美しく縁取られた金属質の外郭。


 そして芯に通る木製の棒。

 歯車たちは噛み合い動き出している。


「あら……? そろそろ敗けを認めてくれると思っていたのですが……確かに想いの強さはそちらのほうが上かもしれません。神特有の永い時間を持ち出されたらマウントされてしまいますし。それでも、勝負事における勝敗は、こちらが勝ちますよ。キミは敵を作りすぎたので」


 ヌルはドライ(あっさり)だなあ……

 負ける気は無いが想いの強さという名の士気は結構大事だよ。

 この世界は実力差という押しつけがえげつないだけで。


 それにしてもだいぶ追い詰めているはずだ。

 あんな大きく武器として意味不明な形状のもの持ち出すくらいだし。

 薄さもなく直線上でもない。


 大きさは2メートルほどもあるが大剣ぽくもない。

 持ち手のついた想定できない機械。

 そう表現するほうがただしい。


 シーマが持つにはやや大き過ぎるが軽々と持っている。


(こういう相手には、防御に回ったら死ぬ! 出来うる限り妨害するぞ!)


 ドライの直感に従って左目をまばたく。

 ちなみにこの目どうやら普段はまったくまばたかなくて良いようだ。

 便利だけどなんか怖いな……まばたくと衝撃波放つけれど。


 正面に衝撃波が放たれ凄まじい勢いでシーマに直撃し。


「ハァァ……!」


 しかして動かない。

 さっきまではこれで動きを完璧に吹き飛ばせていたのに!


(スーパーアーマーだ! 離れるぞ!)


(あいさ!)


 一瞬追撃が頭によぎったもののドライの判断を優先。

 ヌルがあわあわしている間にドライが背後に跳んだ。

 そうして力によって振るわれた力。


 轟音と共に機械を縦へ振るう。

 それは決して素早いわけではない。

 見た目通り豪快な振りだ。


 そして激しく歯車が回転し……

 地面に叩きつけられた。


 その瞬間に光線が走り世界を切り裂いていく!


「神斬りの力、ここに!」


「それ、明らかに不味いものでは?」


「だから使いたくなかった。しかし、こうなれば使わざるを得ない!」


 ヌルが指摘した神斬りと言った機械の力。

 それはマジでおかしい力を放っていた。

 今切り裂いた空間はメチャクチャに裂けて。


 さらには振った周囲にいかにも危険そうなオーラを漂わせている。

 少しずつ……世界が食われている。

 あんなの使い手が無事に済むはずはない。


「自滅技ってやつですか……? こわいですねえ」


(ヌルのやつは気づいていないが、シーマのやつがああなっても、結局はまた換装すればいいから、最終的なダメージは大したことねえんだ)


 でも神の力そのものをかなり食ってる。

 回復の遅いシーマにとってはためていた神力を大きく使ってしまうわけだ。

 だが……


「この戦いの間くらいならば、まったく問題はない!」


 永き時をかけてため込んだ神力がたった10分でなくなるはずもない。

 使えば使うほどシーマにとっての『決戦』で損をするだけだ。

 私たちからすればここで決戦を決めるけれど。


「はぁぁぁぁ!!」


(近づいたら呑まれる! あの近くには寄るな!)


(りょーかい! うひゃー、おっかないなあ、どんなイリョクしていたら、あんな力だせるんだろお~?)


 さらに追撃としてどんどん連続大ナタ振りが来る。

 正直直撃は今のヌルでも大打撃は免れない。

 つーか空間メチャクチャなので巻き込まれたらどうなるかわからないが正解だ。


 はっきり言ってたとえ直撃できなくさっきから3回ほど避けているけれど……

 近づくだけで自身の大事な力がゴリゴリ削られていくのが分かる。

 ”観察”を自分にかけたら生命力と神力の()()を削ってきていた。


(こんなの喰らい続けていたら死んじゃうよ!?)


 メチャクチャだぁ……

 困った。一時的な損傷だろうとはいえコレは私の手に負えないダメージだ。

 イバラ? 当然濡れた紙より防御にならない。


 さっきから魔法を撃ちまくりミサイル針も撃ちまくっているが意味ない。

 全部まとめて薙ぎ払い落とされている。

 もう少し手心というか……


「うわあっ」


 間の抜けた声をヌルが上げたけれど今のは危なかった。

 今までの大振りに混ぜて突きが飛んできたのだ。

 はるか遠くにいる立ち位置なのに安心できねぇー……!


 あとアレは剣と評しただけで別に剣じゃない。

 型のような振りもなければ技工によってこちらを削ることもしない。

 そんなものを大量破壊兵器には積み込まないからだ。


 正直その要素で安心できること1つもない。

 結局全方位に空間破壊兵器ぶちこまれているだけだ。

 振るだけで近くの魔法も破壊するので全体攻撃も潜伏攻撃も破壊していく。


(こ〜なったらしゅだんは1つ!)


(なんだ?)


(ちかくにいって、チョクセツなぐりまくる!)


 超近接戦闘……インファイトを!?

 敵の近くは常に汚染されている。

 神力を食らう力によって。


 正直まともな策とはいえないけれど……


(それは、いや、だが……いや、むしろか? 現状遠くにいる方が危険なのか?)


 遠くにいれば攻撃の直撃の危険はぶっちゃけない。

 この身体の機動力はもはやギャグの領域にある。

 だけれど……そうか。


(このままじゃ〜、ここぜんぶが、空間ゆがむよ〜?)


 私達ではなく時空間が耐えられない。

 この混同神域はバトルフィールドとしてはすぐれているもののそれだけだ。

 しょせん後から足した仮想世界であり空間のひずみやゆがみは治るどころか悪化している。


 この世界自体がぶっ壊れるのも時間の問題か。

 距離をとりつつ双方移動し続けているからなんとかなっているけれど……空間全体がどんどん割れていっている。

 そこに近づくわけにはいかないから逃げ場が減っていっているのも良くない。


 じゃあ……やる?


(やろう!)


(やるっきゃないか……よし、だったら近距離で全部一瞬で叩き込む、もう牽制も逃走もなし、全力の一手だ!)


 私達はそう話しつつも既に全力でパワーをためだす。

 うわなんだこれ!?

 普段の感じと全然違う。


 普段は魔法を色々準備しパワーをためて構え直すとギュッという感覚なんだけれど……

 今はもうこれだけで薄い光が集まり音が鳴り響き周囲に圧力を撒き散らしている。

 おそらく私が普段やっている制御し圧を自然になじませる力自体が完全に壊れているんだ。


 弁の蓋が外れた結果私でもワケのわからないほどに力が高まり続ける。

 これちゃんと操れるようにならないと後々まともな場所で動くことすらできないな……

 とにもかくにもゴウッと風の音が鳴り響くほどの圧力で私の中に力がたまった。


 風が乱れ私の毛皮を荒らしていく。

 それでも自然に完全な状態へと戻っていく。

 やっぱり前までとはだいぶ違うなあこの身体……


 当然あまり移動していない。

 狙われ飛んできた空間を裂く斬撃を避けるため一気に加速する!

 まるで背中に爆弾でも積んでいたかのような急加速して斬撃光線を避けた!


(はっやーい! イタ吉よりもはやーい!)


 ここまで加速度があるとまともな相手では影しかみえないだろう。

 ただシーマはまともではない相手だ。


「何か仕掛けてくる気だな? このまま亜空間の塵にしてやろう!」


 当然のように食らいついてくる。

 シーマもおとなしく同じ場所で剣を振っているならまだやりやすいのだが……

 向こうも当てやすいようにどんどん近づき駆けて来るのだ。


 重量は結局シーマが支えるのではなく上から吊るす者が支えているから平気なのだろう。

 グングン食いついてくるが今は好都合!


 敵の斬撃光線をかいくぐり急速接近。

 そのまま攻撃をしかける!


「わぁこわい」


「何っ!? 近くに来るだと、それならっ!」


 近距離といえる範囲まで一気に接近。

 まとわせていたイバラがシーマ近くに撒かれた神力食いに一瞬で侵食される。

 それでもわずかな時は稼いだ!


「はあぁ!!」


 シーマの神喰いのリーチ内。

 ここが1番の危険場所。

 つまり1番の賭け時!


(っつぁ!)


 強い勢いで振ってきたのを見てドライが体を無理やり捻る。

 獣の動体視力というやつだ!

 そして前進しながらひねることでぐるりと回るように旋回しつつ前進する。


 ツイスト飛行というやつだ。

 

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