二百八十三A生目 復活
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シーマは余裕をもってきている。
のままだと時間稼ぎすら……
「そうだ」
シーマがアカネを雑にあしらい互いに攻撃が衝突して弾かれ合う。
それで距離を取ってから話し始めた。
「悪い子だね、まったく。これは返すよ」
「「あっ!」」
シーマが片腕を上げると手元に呼び出されたもの。
瞬間移動してきたエネルギー球体の中に入っていたのはホルヴィロスの分かれた体。
……まずい。上で私の体ロック解除していた個体だ。
「まさか、ひっそり向かわせていたとはね。これはしてやられたよ。最終解除に警報をつけてなければ、危なかった」
「く、ぐぅ……!」
ホルヴィロスが見たこと無いほどに悔しがっている。
エネルギーを解除しシーマは小さなホルヴィロスを手に生んだエネルギーの塊で焼き切る。
しょせん戦闘能力のない小さなホルヴィロスでは耐えきれずなくなってしまった。
「げえっ、最悪じゃん。上への道も砕かれちまってるしよぉ……」
「飛べば向かえるが、なんともこれは良くない状況だな……」
「大丈夫、コイツぶっ飛ばしてしまえばいいだけだからね!」
「回復が間に合っていない、みんな、気を付けて」
もはや深い傷のあとがみんな生々しく残ったままだ。
ホルヴィロスはつとめて落ち着いて言うが回復が間に合っていないのを悔やんでいそうだ。
そしてなによりシーマ側の底が見えないのがつらい。
斬って血がでれば倒せるとはいうがシーマから出る血なんてない。
まあ人形は全員そうだったが。
シーマに刻まれた傷はどれも命に届くようなものはない。
生命力か耐久力かわからないけれどあとどのくらいあるのか……
かなり厳しい戦いなのはわかる。
気合を入れ直さないと。いや戦うのはゼロエネミーだが。
ゼロエネミーが鞭剣にモードを直して突撃!
全員がその後ろに続いて突貫した。
「「うおおおおっ!!」」
……あ、あれ?
どんどん時間間隔が遅くなっていく。
こりゃおかしいぞ。
なんだか白んできた。
あっ、わかった、わかったけどどうしもない。
本体のお目覚めであるこれは!
ホルヴィロスが注入したきつけ薬の効能だ。
意識が元の場所に戻ろうと引っ張られている。
えっ、大丈夫なのかこれは! なんとかなるのか果たして!?
私の意識はそこで白く消えるように飛んでしまった。
「ん……」
喉が渇きではりついたとき特有の血でも出そうな声。
震える声帯が絞られた時の音。
……ん? 声帯!?
「お、オワーッ!? 体だー!?」
今私自身はそう叫んだ。
実際は喉がカッスカスで声になっていなかったけれど。
久々に肉体と精神と魂がそろったよ。
ちなみに肉体はハードウェアで精神は記録媒体やOS、魂はソフトウェアみたいなもんでもある。
魂が空なら肉体はただの箱であり魂と精神だけならそれは彷徨う死霊だろう。
さっきまでは精神のみで無茶していたわけだ。
何もできないよ!
ギリギリ魂の残滓みたいなもんはあったみたいだけどね。
本当に何もできてなかったわけではなかったし。
まあほんの僅かだが。
今意識が完全に戻ったことで精神が合流した。
滅ぶわけではなかったのが幸い。
記憶を持ち帰れた。
自分が何匹もいる状態になるというのはまあ既に慣れてはいるけれど。
神として分神を世界各地で派遣社員していたからね。
意識と記憶の合流もするので神においてスワンプマンなにそれ状態だ。まあ魂があるからね。
それにしても……
困った。まだ拘束が生きている。
そう動けない。
ま……まずいぞう!
身じろぎひとつできない。
できるのはまばたきと言葉を話すことくらいだ。
この間にも下では激戦が繰り広げられている。
しかもかなり戦いはまずい。
あの強さだと補助で後詰めが来ても限度があるだろう。
でっかかったらたくさんで囲んで叩けるのに……
速くてニンゲンサイズというのはかなり最悪だ。
後パワーがおかしい。こっちもたいがい狂ってる強さだと思うんだけれど向こうは火力でそれを上回ってくる。
攻撃の盾というやつだ。
猛攻に勝る防御はない。
ワンチャンを狙えるほど脆くもないし。
超大型魔物なんかは全部その身で受けるかわりにバカみたいに生命力と耐久力がある。
どっちがいいかといえばこっちの手数によるなあ。
さあ……そんな現実逃避している場合じゃない。
幸いスキルは体外に出すもの以外フルで使えるので思考に時間はとられない。
体外に出すのはイバラ1本土槍1本魔法含めて無理。
これ絶対体がバキバキになってるよ。
どうする……ここからやれる逆転の手。
あきらめず考えを続けるんだ。
何かが逆転の手はきっとあるはずだ。
私が意識を覚醒したことは誰も知らない。
それはあまりに大きなチャンスだ。
それなのに囚われのお姫様やっている場合じゃない。
私が今やれることは……!
そうだ……あの時のことだ。
私がたまたま聞いていたこと。
(主が名前を呼んでくだされば……)
アヅキは誰に聞かせるでもなくこのような言葉をこぼしていたことがあった。
剣ゼロエネミーにとりついていたからわかったことだ。
だからそう……バカみたいな作戦かもしれないが。
それでも賭けるにはあまりに十分。
だけどそれは大きい変化だ。
私が今までなあなあにしてきたことに向き合わなくてはならない。
私が責任を負うということだ。
流れで役職についているのと明確に背負う覚悟でやるのとは違う。
アヅキを明確にそういう理由で呼びかけて戦いに挑みに行くとしたら……
私がそこで曖昧な態度を取り続けるのはあまりに都合の良い存在だ。
私はきっといつかはやらなければならないことを……いま認めねば。
覚悟を決めなければこの先の戦いに勝てるものも勝てない。
だからこそここでやれることをやるのは大きい。
私は今後もきっと危険に身を投じるだろう。
だからこそ……確実に生きて帰る覚悟を。
最後まであがく責任を。
自分を犠牲にしてみんなを活かすではきっとこれ以上は進めないのだ。
「よし……声が出るようになってきた」
水なんてないが声が復活してきた。
かわりに血のにおいが喉からする。
粘液が剥がれうっすら出血したのだろう。
これは好都合だ。
私の心の揺れが血のにおいで抑えられる。
やると決めたら腹を決めるだけ!
「ここで、やるのは……」
私は大きく息を吸う。
これまでの戦い。
これからの戦い。
それらに終止符を打ちに行く覚悟を。
助けられる覚悟を!
「アヅキーーーッ!!」
叫ぶ!
名前を呼んで。
祈るように。虚空に吸い込ませるように。
広い空の向こう側へ届かせるように!
「……」
羽音がどことなく響く。
それは全身に傷を負い。
戦い抜いた戦士の姿。
来た。この安心できる姿!
「今参りました、主!」
「うん、待ってた!」
アヅキがそこにいた!
一瞬にしてやってきたアヅキは流れるようにして最後のロックを破壊。
私の体が宙に浮く。
あ。まだ空を飛ぶ針が展開できない。
「うわわわわ」
「主、どうぞこちらへ」
アヅキはそんな私を優しく受け止めた。
背の翼で浮きながら降りていく。
「ありがとうアヅキ。こんな情けない主だけど、よろしくね」
「っ!?」
アヅキは私の言葉に強く反応した。
そしてすぐに満面の笑みに変わる。
そりゃそうだ。これまで雑にあしらってきた間柄だったもんね。
「主のためなら、いつでも、どこでも、誠心誠意尽くさせていただきます。主に至らない所があるとするならば、それは我々の不足でしかありません。主は……常に前へ向かって駆けて行ってください。我々が、必ずおいつきますから」
「……うん、ありがとう」
どことなくこちらの心情も察したのかそんな言葉をかけてくれた。
ちょっと恥ずかしい。
ここまでの戦いで私のいないところでみんな私への想いを聞いてしまった。
神はそういう想いを信仰として受け止め贄とする。
ならば私は……それに報いなければ。
「主、下に行って戦闘に合流します! どうですか、いけますか?」
「メチャクチャ体が固まっていて、凄まじく喉が乾いているけれど……やるよ、戦いのときだ」
水は今のんどこう。
下の戦場では既に苦しい状態になっていた。
パッと見た漢字ドラーグやダカシたちもきている。
もはや相当な総力戦だ。
それなのにもかかわらず……
「どうやら、ここまでのようですね?」
「ぐうぅ……! ど、どんどん強くなっていやがる……!」
みんなが凄まじく追い詰められている。
敵も無傷ではない。
シーマが体のあちこちに傷をもうけているものの逆に圧力が増している。
神ってその性質上多数の相手どるの自体が得意なやつが多い。
シーマの第2段階も例に漏れずそうだったわけだ。
こうなると数を増やしての戦いは厳しいか。
「消えた1体は救援を呼びに行ったのでしょうか? 見つけ出して始末しなくてはね」
「悪いな、その救援は、お前にトドメを刺しに来たようだぞ」
クライブが大剣を支えにしてニッと顔を歪め前をみる。
私達を見つけたらしい。
せっかくだからこのままアンブッシュさせてもらおう。
私はアヅキに離してもらって落下していく。
勢いを乗せつつ肉体変化。
男性化して全身にパワードアーマーじみた鎧針を展開。
前足にエネルギーチューブのエネルギーを回す。
そうして勢いを乗せつつ足裏からブースト出して加速!
「この音は?」――
「ハァッ!」
「ウウーッ!?」
シーマが気づいて振り向いたところに蹴り込む!
シーマは受けきれず思いっきり吹き飛んだ。
「ようし、まず僕の分を返したよッ!」
シーマをぶっ飛ばし着地して立ち上がる。
睨みつけるように身構えた。
シーマはふきとんだ空中で突如姿勢を変えてこちらに向き直った。
「まさか、あの一瞬でローズオーラの解放を? 終末の獣の証も出しっぱなしにしておいて、近づくのすらためらわれるはずだったのに……」
「悪いが、主との絆をなめるなよ。お前の敗因は我々の連携を根本的に取るにたらないことだと考えていたことだ」
「敗因? 敗因だって? ハハハハ」
面白そうにシーマは笑う。
そうして両腕を広げて上に向けた。
背後では今でも大量の神力が空に向かって流れている……!?
おかしい。
僕という核が外れたことで機能不全を起こしているはずなのに……
「残念ながら、もうここまで来ていれば、多少効率は落ちるが誰にも止められない。この流れは最後まで続く!」
「だったらさっさと君をぶっ飛ばして、全部終わらせるよ!」
なぜかはしらないが今僕の体のツタ側から力が溢れてきている。
コレが怒りから来ているものなのか……
なんか違う気もするが。
姿を変えて女性の私に戻る。
まったくなんだか慣れてしまったなあ。
ただそれ以上に……私の中のエネルギーが溢れすぎていないか?
「ハハハ、もう大河の流れは止まらない、既に川は決壊したのだよ!」
とりあえずやってみるか……
「ゼロエネミー!」
とりあえず鞭剣ゼロエネミーを手元に戻す。
とげなしイバラでしっかり掴んだ。
もう離さないで済むように。
シーマは相変わらず吊られるような腕の動きでこちらに向かってくる。
こっちは4足になって勢いよく駆けて。
指をすぼめた独特な拳にイバラを使って叩き込む。
イバラが弾けちぎれるが……問題ない。
間髪入れず10でも100でもイバラをぶち込む。
そうするとさすがのシーマも顔色を変えた。
「その力は一体!? 私の攻撃が追いつかない……!?」
「何か知らないけれど、今絶好調なんだ!」
イバラがシーマに直接叩き込まれた!
ようしやっちゃるぞ。