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二百七十八A生目 突破

「ならばこれなら!」


 そしてアヅキも結論は中距離攻撃になる。

 鞭剣ゼロエネミーの斬撃に合わせアヅキが放電する。

 今までの直線的な雷撃ではなくて球が有機的に動き追い込むように放たれていく。


 白は鞭剣の斬撃を蹴り飛ばしてなるべく噛み合わないように気をつける。

 そりゃあそうだ。

 先端は凄まじい速度と重みだからまともに戦えないだろう。


 さっき黒に掴まれたのも短くしていたからだし。

 逆に言えばこっちの攻めは完全に通じなくなったわけじゃない。

 あくまで猛攻能力が増しただけだ。


 傷も完治していない。

 超火力って時点で嫌なんだけど!

 周囲を囲むように雷撃の球が回り込み襲いこんでいく。


 雷撃もけりとばし……すると爆発する。

 雷の爆発だ。

 白もコレには顔をしかめる。

 

「今ノハ……!」


「触れさせないだけなら手はいくらでもある。これとかな!」


 今度はアヅキが扇で次々乱流を生み出す。

 アヅキに対して白は高速で飛びかかり……大盾ゼロエネミーにぶつかった。

 ルートさえわかっていれば止めるのは簡単なんだよ!


「助かった!」


「クッ!?」


 なんというか急激にパワーが上がった弊害なのか行動もメチャクチャパワー系に寄っている。

 なので動きが単調になっていた。

 それで強いんだから困るが。


 ただ今の一瞬でアヅキが空から追撃の風が走った。

 風同士が合流して嵐のように(エフェクト)が渦巻く。

 雷撃が嵐に乗って白を襲う!


 白は雷嵐に飲まれながらも無理やり反撃しようと斬撃を飛ばしてくる。

 輝きほとばしるエネルギーつきの斬撃飛ばしだ!

 これは剣ゼロエネミーの出番。


 冷静に鞭剣で切り落とす。

 ちゃんと斬りあえば負けることはない!

 抜かれたらアヅキに申し訳ないので私としてはゼロエネミーに全力頼りだ。


 吹き飛んで塔の外の神力に焼かれた小イタ吉たちはガッツリ焼かれて瀕死になっていた。

 尾刃イタ吉は無事なので種族特性を活かして蘇生中。

 3体の体どれかが生き残ればなんとか復活できるのだ。


 それにしてもあの外の流れている神力エネルギー……金網デスマッチも真っ青な威力だなぁ。


「まだまだぁ!!」


「シツコイデスネエ!」


 アヅキが中距離からガンガン魔法をはなっている中で。

 迫るのは鞭剣ゼロエネミーとアカネだ。

 アカネはその身がほとばしるエネルギーに焼かれようと気にせず体を変貌させ殴りかかる。


 龍の爪のストレート。

 トラの爪によるフック。

 からの狼爪突き刺し。


 先端のみの変化は器用に細かくできる。

 その上速い。

 直前まで出し物が物理的に見えなくて何をやってくるかは心を読むしかない。


 しかも無視できない破壊力。

 白も的確にガードしようと腕を固めていた。


「重イ……!」


 攻撃は間違いなく逸らせている。

 それでもガードの上からぶん殴っているのだ。

 強烈強靭なパワーにおいて多少のガードの上から衝撃を叩き込む。


「ほらぁ!!」


「コノオッ!」


 このままでは腕が使い物にならなくなる。

 そう考えたのが白は賭けにでた。

 腕をといて蹴り込んだのだ。


 結果アカネは岩で出来た拳を振りかぶっていた。

 互いの(エフェクト)が衝突しあう。

 結果的に言えば白の勝ちだ。


 別に貫通できたわけではない。

 それの反動で思いっきり距離をとれたのだ。


 ただ当然離れれば鞭剣ゼロエネミーが斬り込む!


「手数ガ足りマセンネ……!」


 白は必死に避ける。

 だが明らかに無理をしていた。

 4匹+1振りに狙われているんだからどうしてもこうなる。


 それでもこっちをボコボコにしてきているんだからとんでもないパワーだ。

 アヅキがスキを見て網のように広がる雷撃を放つがパワーで吹き飛ばした。

 流れるようにアカネの頭が変化し吐かれた炎を避ける。


 だがうっかりそこで体が止まってしまった。

 意図したものではない。

 白はすぐに異常の原因へ思い至った。


「コノ糸ハ!?」


「そろそろ思考をそらしてくれると思ってね」


「ナントイウ!」


 白を縛り上げる糸。

 当然こんなの今の白からすれば大した拘束じゃない。

 すぐにちぎれる……が。


「全員行くぞ!!」


「「おうっ!」」


 アヅキが背中の翼を広げて雷嵐をまとい唸らせ。

 アカネが肩まで冷気を帯びた剛毛の巨腕にし。

 鞭剣ゼロエネミーが高く飛び上がり。


 何より尾刃イタ吉が真っ先に斬り込む。

 きっと時間にして1秒もない。

 だが……だからこそ。


 ここまで息も詰まるような戦いを繰り広げてきたメンツにとってそれは致命的なほどのスキでしかなかった。


「グガァァーーッ!!」


 特に無防備というのがよくなかった。

 一斉攻撃をくらい反撃する間もなく(エフェクト)同士が混ざり合う。

 味方の攻撃が魔法反応を起こして凄まじい威力の爆発にばけたのだ!


 白はきっと時間がたてばたつほどより繊細な自身のパフォーマンスを活かした行動をするようになっただろう。

 最初からあの片側の力を纏った状態になっていなかった理由は……自然じゃないから。

 オーバーパワーなのだ。


 本来設計された以上の力を無尽蔵に振り回せばどうなるかは明白。

 ぶん投げていたのは思考が筋力に偏っていたからというのもあるがそれ以上に安全だったからだ。

 冷静になって観察すればそう思える。


 誰かから力を譲り受けて凄まじい力を発揮する。

 文字にしたらうつくしいがそこには必ず実体がある。

 肉体負荷は進化なんて目じゃないほどだろう。


 今白があわれに空を舞い肉体がバラバラに砕けていても。

 それは白がはっきりと戦い抜けたということを示すのみだった。






「ナ、ナルホド……マサカタッタノ6匹ニ抜かレルトハ。ココマデ来た精鋭トイウノニ、嘘偽りナシデスネ」


 イタ吉が3匹カウントである。

 武器をカウントしないのは基本的なことだ。

 首だけになった白はその声に雑音を交えながら話す。


「どーだい、さっさと観念するように、お前の上司に言ってくれると助かるんだけどなあ?」


「録音シテオコウ。コノ後、我々はコンバットアーマーカラ脱して戻リマスカラネ」


「……本当に伝えれるのかよ」


 さっきの黒の光みたいなものだろう。

 あの光がきっと人形たちのデータだ。


「マア、次バトルアーマーヲ得らレルノハ何年後カ分かラナイデスノデ、二度とミナサント会うコトハナイデショウ」


「フフッ、どうやらそっちの主を信じているらしいな。だが、こちらも二度とお前の主人の顔を拝ませるつもりはない」


「互いノ主ニ賭けマショウカ」


 アヅキが鼻で笑ったがどことなく嬉しそうだ。

 誰かに忠義を尽くす姿は好きなのかもしれない。


 光が溢れ空へと消えていく。

 幻想的だがどことなく終わりを感じさせる儚さ。

 そしてそれは事実でもある。


 白の首はもう動きを完全に止めていた。





「白いのからでた光は空に消えていった……これできっと邪魔はされなくなったはず」


「コレ以上の手駒があったりしたらキツイがな」


「だけれどもま、こっちもどんどん戦力は補充される前提だし、そこまで、気にしなくていいんじゃない?」


「みんな、ちゃんと心も休めてね〜」


 この砕けた塔はまだまだ空に続いてる。

 逆に言えば多分私の体までは遠い。

 

 こんなところでヘバッていたら話にならない。

 濃密な戦いをくぐり抜けたが前哨戦である。

 困ったことに。


 なのでみんなの体にホルヴィロスの分裂体がひっついて治療していた。

 すごい回復技術で体についた傷と体の内にある傷全部治していく。

 肉体にどのような負担がかかって治るかというのも計算して治しているらしく活力すら与えていた。


 私がやると治療痛で転げ回ることになるからなあ……というかホルヴィロス以外はそうなる。

 ここらへんは専門性を持つ神ならではだ。

 ギュンギュンと治っていくだけでなく明らかに疲労の色が消えていく。


 特に生命力だけじゃなくて行動力はこういう激しい戦いをのりこえるとすっからかんになるらしい。

 私はいつも常に増えていくが。


 みんなは積極的に携帯食を口にほうる。

 そしてそのエネルギーがすぐホルヴィロスによって行動力を変換されていった。

 うまくいっているようだ。


「どうやら……向こうの戦いもだいぶ激しいようだな」


 アヅキたちが念話来ているらしく頭に指をおいている。

 こういうのって頭に指とか手のひら置きたくなるよね。

 多分耳で聴いていないからだと思う。


「でも、負けてはないみたいだね。それは良かった」


「へっ、この程度で負けているような奴らなら、最初から連れてきてないぜ!」


 イタ吉が調子づいてそう言うが世の中絶対はない。

 特にいまやっているのは命の取り合いだ。

 あまり深刻になりすぎないための言い回しだろう。


 それにしてもみんな無事で良かった。

 なにせ今回はかなり広範囲にわたって戦っている。

 孤立無援を強いられているところもおおいはずだ。


 それでもなんとかなっているのは明らかにジャグナーたちによるバックアップが的確なのだ。

 指示や作戦どころか直接的な強化や回復もしてくれるだろうからね。

 多少こっちがヤバかろうが優先度は後詰のみんなになるのは当然だ。


 それにこっちはやはりホルヴィロスというバックアッパーがでかい。

 なにかあってもどうにかしてくれるという安心感だ。

 私もそう思う。


「ヨシ……上へ向かうぞ」


 あれこれ雑談したあと食事を終えて片付ける。

 アヅキの号令にみんながうなずいた。









 ここを登っていく間は不気味なほどに静まり返っていた。

 いや空に登っていく神力の流れが凄まじいから騒がしくはあるんだけど。

 おもったけれどこれって龍脈みたいだよなあ。


 でも龍脈と違って明らかに神力へと精製されている。

 龍脈エネルギーってなんというかもっとワイルドなんだよね。

 荒々しい感じがこの神力からは感じられない。


「全く、敵も面倒なことをしてくれる。こんな配置の地形に、主に目をつける点も……下手な魔王よりも厄介かもしれないな」


「魔王の頃よりも俺達は強くなってる。それでもこの苦労具合は、嫌になってくんな。相手が天井知らずで強くなっている」


「だからこそでしょう? 私達も際限なく強くなって、相手がどれだけ練ってきた策略も、叩き潰せるくらい強くならないと、邪悪なやつはどこで力をためているかわかったものじゃないから」


「まあ、それもそうだなー。敵たちがこっちを考慮する時は、弱って叩きやすい時だけだろうからな」


 残念ながら世界の流れとは川のごとくである。

 同じ場所に居続けるには常に川の流れに反して泳がなくてはならないのだ。

 ただ寝るだけにしても水草に身を巻かなくてはならないほどに激流だ。


 そこを肉食魚たちが常に虎視眈々と実力をつけて狙ってくる。

 当然今の住処をおわれないようにするには力をつけて跳ね返すしかない。

 それよりも流されないように気を回す必要もある。


 個々人レベルはともかく世界単位ではそうなっていくのだ。

 こっちが足止めたところで世界は平然と丸呑みしようとしてくるか海という猛毒へ押し流そうとしてくるか……

 まあロクなことにはならないな!


 そしてそれは全体的な視点だ。

 個人でそんな息苦しすぎる戦いを続けられる者はいないからね。


 そして今向かう先には大口を開けている魚がいる。

 その魚の口は大きすぎる。

 もはや鮫かなんかじゃないか。


 我々は一丸となってその鮫を内側から食い破らないといかない。

 なんともまあ……不利な話である。


「そろそろ着くぞ!」





 たどり着いた場所はなんとまあさっきと似たりよったりではあった。

 道と道が交わりまた遠くへ道が通じている広いエリア。

 問題はここにきてみんな冷や汗をかきだしたことだ。


 というか私も精神的に冷や汗かいている。

 やばいって。


「直属の部下たちが失礼した。だから直接会いに来てね?」


 機械の体を持つ人形の神がそこにいた。



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