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二百七十五A生目 白黒

 空に高く伸びていく道。

 それは2つの道。

 細いながらまあまあしっかりしてそうな足場。


「もし戦闘になっても、なんとかなりそうだな」


「ところどころ交差していますね。ゴールするまで行くと、ローズさんがいるのでしょうか……」


「敵もいるな、間違いなく」


 ジャグナーとたぬ吉が作戦を立てていく。

 今残っているメンバーを2つに分かれる。


 後衛にここへおいていくのと前衛で攻略するメンバーだ。

 後衛はたぬ吉にユウレンそれとハックとジャグナー。

 前衛にイタ吉とアヅキにアカネとホルヴィロス。


「機材は全部持ったか? ここから俺達は全力でバックアップする。先行チームに遠隔で補助を飛ばせるようにし、後ろから来ているはずの面々をすぐに上へ向かわせる」


「ジャグナーさんは前へ行かなくて良かったんですか?」


「気持ちはな。だが、俺はそういうのも含めて判断する立場で居続けなくちゃいけない。だから俺は、ここで戦場全体をみる」


 ジャグナーが床に拳を叩きつけると床がせり上がった。

 多数のものが地形をかざりたくさんの光点がかがやく。

 おそらくこれは……


「俺の能力である戦場地図だ。この程度なら簡単に全体把握が出来るな」


「これは……なかなかズルいくらいの能力ね」


「敵も味方も、しかも今どうなっているのか、把握できるんですか!?」


「限度はあるがな。それでもないよりはかなりマシだ」


 ユウレンたち後衛組はマップを見て現状の戦いの様子をチェックしている。

 ユウレンはここから持ってきた材料を元に死霊術を組み立て直せる。


 死霊とは死んだゴーレムなので……

 つまるところ材料を簡単に拡張した袋なんかにつっこめるのだ。


 たぬ吉は全体サポート。

 後衛自体のサポートの他散ったみんなをカバーできるように魔法やスキルそれに念話で指示をだしていた。


 後ろの組は囲まれたら終わりである。

 全体俯瞰と指示は必須だ。


 ハックの補助魔法はそもそも超広域指定と個人の選別が高い精度で出来る。

 命の危機を守り武を奮わせ足を速め活力を高めて。

 誰に何が必要でどう求められているものを返すかに専念していた。


 ジャグナーはこのマップと全体指揮。

 監督なので責任をとる立場だ。

 彼は全ての情報を把握して常に生き残れる道を探る。


 さっきからたぬ吉に判断を委ねられていて的確に返している。

 これができるから信頼されているのだ。

 戦場で動かずに判断を下せるのは稀有な力だ。


 そして剣ゼロエネミー含めて前衛組は最後の休憩をしている。


「…………」


 みんな休んで目を閉じだりしている。

 息を整えて刃を研ぎすまし翼を休めて足を癒す。

 幸いここまでの被弾はほぼ抑えられている。


 嵐の前の静けさ。

 誰もがこの後の戦いを予見している。


 数がいればいいという相手はここまでだ。

 この後に控えるのはあの絶対的な人形の神だろう。


「よし、絶対ローズを助けるぞ」


 イタ吉のつぶやきに全員がそれとなくうなずいた。


 ……なんかこう、私が聴く前提じゃないこういう言葉恥ずかしくなるなあ!






 4匹で螺旋していく道を登っていく。

 アヅキは拳を何度も握って調子を確かめている。

 実際近づいて登りだすととんでもなく高く大きな場所だ。


 時折凄まじい勢いで神力の塊が立ち上っていくのがこわい。

 触れたら吹き飛ぶだけでは済まないかもしれない。


「すごい力のうねり……これって私ですら危険なほどの力……本当にこんな力、まともに使えるの?」


 アカネが駆けながら疑問を呈した。


「専門的ではないけれど、それをするのがこの塔なんじゃないかな」


「それと、話にあった主の特異性か。終末の獣だの、なんだのという話をしていたな」


「終末なあ」


「そういう話、ママからは聞いてないなあ。まあ、もともと仕事の話はほとんどしなかった柱だったけれど」


 ホルヴィロスの親は神と魔物のハーフだ。

 そして本來月の看守側。

 今まさしく猛攻を受けているのをしのいでいるず。


「そういえばホルヴィロス、お前はその親の元には行かなくて良かったのか?」


「大丈夫! 何せ……私と比べ物にならないほどに、強いからね」


「そっか」


 ホルヴィロスはそう断言するとイタ吉もそれ以上は追求しなかった。

 そうこうしているあいだに1つめの交差地点。

 そして予想通り……


「念話が……うん、やっぱり」


「敵の反応、か。じゃあ、やるかあ!」


 私と剣ゼロエネミーはそもそも念話のパスが渡されていないのでこうなる。

 とはいえ会話は通じる。

 剣だし準備もないものね。


 そのまま奥まで進めば2つの影。

 空から急に姿が現れるように出てきた。


「ドウヤラ、隠れてイテモ意味ハナイヨウデスネ」


「うわっ、こいつかあ……!」


「ホルヴィロス、知ってるの?」


「少しブリデスネ、白神サン」


「……最後私たちが塔の上で、ローズと合流するのを妨げた人形だよ。あの時、結構手痛いダメージを与えたはずなんだけれど、復活しているみたいだね」


「修復は99%完了済ミダ」


 全員すでに戦闘態勢をとっている。

 降りてきた人形たちの纏う雰囲気は特別だった。

 真っ白なのと真っ黒なのだ。


 1体ずつわかれている。

 あったことあるのは真っ白のほうらしい。


「あの時は1体だったんだけどね……苦戦させられたよ」


「前はシングルスデヤラレマシタが、今度はダブルスでお相手シマショウ!」


「我々ハ双子、我々の神が作りタモウタ最高傑作ナノデス! 故ニ、君タチの勝ち目ハ1%モアリマセン!」


 ふたりは息を合わせて対象的に動き指をこちらへ向けてきた。


「わりぃがな、こっちはもう止まるわけにはいかねえんだよ、すぐにでも突破するぜ!」


 イタ吉は3匹分の体を持つ。

 全員異様に低い姿勢を取った。


「ナラバ、永遠に故障シナサイ!」

「ナラバ、無限に後悔シナサイ!」


 指をたてたまま腕を揃って上に。

 イタ吉が目にも留まらない速度で飛び出すとともにふたりが腕を周囲に突き出した。


 変形し銃がでてきて乱射。

 弾丸が床をうがっていく。

 何せイタ吉が速いので!


「オラオラどうした!」

「遅いんじゃないか?」

「こっちから行くぞ!」


「フーム」


 まるで床全体にいるかのように見えるイタ吉たち。

 そしてイタ吉がいつの間にやら2匹を取り囲んでいた。

 すれ違いざまに小さいイタ吉たちが双方の人形へ蹴りつける。


 人形たちは射撃を辞めて蹴りを合わせた。


「何ぃ!?」


「イタ吉!」


 アカネが真上に飛んでいて拳を巨大化し振り下ろす。

 イタ吉が追撃されそうな瞬間にインパクト。

 白人形も避けることで間に割り込めた。


「ヒトリでは無いノデスヨ?」


「それはこっちもな!」


 黒人形がさらに回り込んで足を振るうが大イタ吉が尾刃を振り回す。

 双方の(エフェクト)がかち合う。

 互いに連続で攻撃を仕掛けていった。


 白はアカネへ撃ち込むがスポンスポンと奇妙な音をして皮膚に飲み込まれていく。

 さすがに首をかしげた。


「何ダソレ? 効いてない?」


「ははっ、当たってはいる……よ!」


 アカネは全身に力を込めると内側から一気に弾を跳ね飛ばす。

 いきなり全弾返ってきた白はまともに受けた。

 軽く背後に押される程度ではあったものの……


「ナイスパス!」


 アヅキが拳を雷撃でうならせている。

 背面を殴りつける……寸前で白は振り向き腕で受ける。

 ガードというよりもとっさの合わせ防ぎみたいなものだ。


 急所にあたったとは言えないがしっかりと雷撃の拳が白を捉える!

 もはやここまでの戦闘になればどちらが技を決めるかどうかの戦いになる。

 通常攻撃も無視できないが通常攻撃は武技や魔法へガンガンつなぐからこそ脅威なわけだ。


 剣ゼロエネミーとホルヴィロスはあえて参戦タイミングをずらす。

 さっきまでの行動はまさしく一息の攻防。

 だからこそ間髪の行動に合わせた動きが重要になって行く。


 ふっとぶ白とイタ吉と殴り合う黒。

 勢いをつけて剣ゼロエネミーは変形。

 蛇腹のような刀身を見せる。


 イタ吉たちの真横あたりの空中に飛んで大きく振るう。

 伸びるリーチ。鞭剣モードだ!


「ムッ、コッチカ!」


 そしてこの位置取りは黒ではなく白狙いにも見えたはずだ。

 大きく振りかぶった斬撃などまともに受けるわけにはいかない。

 腕から刃を生やしてずらすように受ける。


 直撃は避けられた。

 イタ吉は間髪入れずに刃を赤く染めて(エフェクト)を放つ。

 黒はグルグル回転するように上へと飛んだ。


 ガリッと入った音はするものの金属同士の弾ける音。


「チイッ、完璧には入らない!」

 

「甘いデスヨッ」


 反撃で回転したまま周囲に刃の(エフェクト)が放たれる!

 あちこちに飛ばされる刃が周囲のありとあらゆるものを斬り飛ばしていって。


「そっちこそ甘いね!」


 ホルヴィロスが周囲を包むツルを展開。

 ツルたちはちぎれつつも瞬時に再生し……ホルヴィロスの意思ですぐ収縮する。

 ツルは繊維の塊。ギュッっと縛られるといきなり黒の刃が斬れつつも絡まる。


「ムムッ」


 動けなくなった黒に追加でツルが巻き付いていく。

 巻き込み事故みたいなみためだ。

 被害に合っているのは刃側だが。


 そのまま縛り上げるところをイタ吉たちと剣ゼロエネミーで追撃。

 さらに斬り裂こうとしたら数秒もたたずちぎり裂いた。


「うわっ!? もう、逃げるのが速い!」


「小癪な毒ナドキキハシマセンヨ」


「まあ、あまり期待してなかった」


 ホルヴィロスが苦々しく笑う。

 多分麻痺毒とか致死毒とか色々混ぜ込んでいたのだろう。

 ただ見た目からして呼吸どころか血液すらないもんなあ。


 白の方もなんとかブーストを欠けて空中でとどまる。

 当然追撃でイタ吉が入っており適度足で防ぎつつ避ける。

 少しずつ相手の身を削っているが致命打はなかなか入らない。


 イタ吉たちはとにかく速い。

 一瞬で3体の位置が入れ替わっている。

 まあ明らかにそういうスキルありそうだもんなあ。


 小イタ吉が吹き飛んだ後の白へ頭突きをした瞬間に切り替わるように大イタ吉。

 流れるように爪を振るった後尾刃を回転して斬りつける。


「全く、面妖ナ!」


 受けきったあと両腕を前にする。

 察したイタ吉が頭を下げるように動くと正面が爆発した!


「っぶね!!」


 走って抜け出すのは小イタ吉。

 切り替えが間に合ったらしい。

 爆風の勢いで移動したのは白の方もだ。


 そのまま高速で飛び回る。

 アヅキもなびく風を放って追撃しているが完全に見切られて避けられた。

 ならば追撃は別の者に任される。


「こうやると、鳥が捕れるんだよ、知ってる?」


 白が何かに気づいて斬撃を振るおうとして。

 そのまま何かに絡め取られ空中で止まる。

 ホルヴィロスのツル技だ。


「やっと追いついたァ!」


「クッ、邪魔デス!」


 指から刃を出す。

 刃が斬り裂いてツルから脱する……前に。

 アカネが背中からドラゴンの翼を生やしジェット噴射の勢いで突っ込む!


 腕を物理的に伸ばし固く鋭利な鎌とする。

 そうまるでカマキリ似ているが……動きは違う。

 エルボーだ!


「ダァッ!!」

「ヌゥッ!?」


 キレイに入った!

 普通手の刃でためらうところをそれごと叩き折るつもりで入る。

 えぐい音が鳴り吹き飛んだ!


 まっすぐ深く入った1撃。

 相手が浮かず地面へと叩き込まれる。

 今の武技はかなり大きかった。


 だが人形側もすごい。

 着地をして地面を削りながらも立っていたのだ。

 当然反撃がすぐに飛ぶ。


 白の人形は腕をかち合わせると肩からたくさんのミサイルを砲撃しだした。

 速度の速い射出で地面や一定距離でドンドコ爆発する。


「ちょっ、それはマズイって!」


「ソノ身デ受けてクレテモイイノデスヨ?」


 弾丸が来ると考えていたアカネは慌てて身を翻して逃げた。

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