二百七十A生目 一撃
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活動報告を更新しました「言い訳させてクダサイ」
「本格的に疲れてきた……クソッ、くらくらする。こんなに1度で魔力と念力を使ったのは初めてか。それに……どこで相手の察知に引っかかって投げられるかが、掴めない」
おそらく絶世美の神はどこかに槍投げポイントをつくっている。
そこにスイセンが来たときだけ槍をぶん投げているのだ。
これはスイセン側へ無言のプレッシャーとなる。
やられるとわかるがかなりしんどいだろう。
それにスイセンのダメージもある。
たとえ時間で癒えても痛むし血は失われていく。
そして何より精神への負担。
これがスイセンに大きかった。
普段なら逃げ出しているかも知れない。
だけれども今のスイセンは人一倍キレていた。
キレが心を支えていたのだ。
普段こういう戦いなんてしないからこそキレることが命を保つライン。
スイセンによるとこの設置作業はかなりフラストレーションが溜まったらしい。
それでも我慢したのはそれだけ効果的な策だと判断したから。
(第一に作っているのは要石)
スイセンが見上げるようにして大きな氷の立方体を作っている。
こんどはくぼみに隠れる位置に作っている。
相手が襲ってこないかつ見えないよう隠れた位置は絶好の隠し場所だ。
(そして作る場所にも意味がある。この周囲はわざわざ語るほどでもない大地の流れ……龍脈が些細に流れている。山が多いのは龍脈の名残だな)
自然の多い場所はそれだけで龍脈がある。
ただその量と龍穴の有無は別だ。
地上の生物が恩恵を受けるには龍穴から出る噴出が必須だし龍脈だって端の端は本当にたいした量じゃない。
それこそ注意深く観察しなければあることすら気づかないような。
スイセンが選んだ土地は全部それらを押さえていた。
ちなみに要石を刺す場所の選択範囲はわかっていれば結構広いらしい。
龍脈自体がわずかだろうととても大きいので。
(第二にこれらを一斉に起動する。連結パイプラインは念力で仕込んであるから、スイッチのように簡単に動かせる。なにより、その軌道にも意味を持たせてある)
すでに何個も置いてあるが起動時には立体的な複雑構造となる。
スイセンによると神術的な意味合いをもたせ効果を発動するらしい。
(そして第三に……あいつを縛り付ける)
スイセンにとって当然勝ちに行く。
相手は確実絶対に倒す。
それが絶対条件。
スイセンがそのきらびやかな結晶体を完成させて。
地面へと刺す。
これでいけるのかどうかはスイセンにもわからない。
なぜなら一発勝負だからだ。
しかしやらねばならない。
ミューズたちがいまだ危険にさらされたままである。
当然スイセンでしか入れないよう封印された部屋にあるものの。
逆に言えば力技で破壊できる相手に絶対はない。
そうとう頑強なロックだが何があっても無事といえるものではないことをスイセンは知っている。
「うぐぐ……あのアマ、ボクの家をどんどん汚している……ケバくさい手で、大事にとっておいた甘味を食い漁るなよ、カスが!」
そして下手に自身の領域だからそこわかる絶世美の神が仕掛けている攻撃。
それはもう簡単なこと。
神域汚染である。
簡単に言えば他人の家に入り込んで勝手に食糧庫を漁る行為である。
最悪である。意図して行われる不快行動はスイセンにはむしろ効きすぎた。
これが一番聴いていて作業速度は類を見ない速度となり必死に空を飛び回る。
走れスイセン。
もう夜中。
スイセンは最後のところへ飛んで向かって……
「来たかっ……!」
超遠隔攻撃を察知。
スイセンもやられっぱなしではない。
この戦いの間に遠隔からの攻撃を察知するやり方を覚え習得していた。
企業秘密らしいが念力の応用だろうとは思われる。
「意外と誘導性能があるのが、嫌らしい!」
速度が乗っている状態での襲撃だがしっかりと槍はこちらへ飛来してきている。
これは完全にホーミングされている。
「クソッ、このままだとぶつかる!」
念力程度で押し止められるほど相手の槍は甘くない。
空気も何もかもを裂いて魔力槍がとんでくる。
スイセンが高速飛行をはやめ低く飛ぶ。
地形の中に入り込むように山の中を飛んでいく。
森の中に入れば背後からバリバリと木々を粉砕する音。
魔力槍が追ってきているのだ。
「技に、美しさが、感じ、られない、なぁ!!」
急に上昇しそのまま回転。
空を高速で移動中なので変にGがかかる起動をとれば当然スイセンに負担がかかる。
ニンゲンではないのでグチャグチャになったりはしないものの……
(……きっつい!)
負荷がかかるのは間違いない。
ぐるっと回ってきて地面ギリギリ。
着地しそうな瞬間に加速。
地面ギリギリで前へ行ったので降り注ぐ魔力槍はカーブしきれずに衝突。
地面へと刺さり爆発を起こした。
「ぐうっ!!」
余波を喰らって吹き飛ぶスイセン。
すぐ全身に念力シールドを纏う。
若干不格好ながらグルグル回りながら吹き飛び地面を転がる。
スイセンにとってまた泥まみれになるのが1番許せなかった。
あの絶世美の神が高笑いしていることがよくわかるからだろう。
泥だらけになりすぎれば普通に美しさを誇るスイセンにとって深い心の傷になる。
「ぐっ、ぐふっ」
それでも念力がゴムマリのように跳ねてなんとか受け身をとれる。
これで追撃槍はもう来ていない。
「くっ……なんてやつだ!」
念力ボールを解除して浮く。
恐ろしくスイセンの体力を削っている。
ただ今のはなかなか好機でもあった。
相手がこちらをどこまで傷つけたのかわからないだろうというもの。
相手は無限の視界と無限の感覚を持っているわけではない。
当たっていないわけでもないので当たった感覚はあるだろう。
スイセンはそれを察してすぐ自身の気配を念力で断つ。
そのまま急いでこの場を離れた。
「大回りして、この間に最後のシメをする!」
スイセンは爆撃された範囲から遠く遠ざかる。
目的地までは迂回させられるがそれでも相手の目をくらます方が重要。
どうせ本格的に動き出すとしても相手は明日くらいからだと考えて。
はたしてその読みはあっていたのか無事到着。
そして最後の要石を完成させた。
ドンと床に埋める。
「ハハハ……さあ! ボクがここまで作り上げたんだ! 美しさMAXでやってくれよ! 一番美しく! あのアマを完全に倒す!!」
おもわず笑みのこぼれるスイセン。
それもそのはず。
これまではほぼ一方的にやられてきた。
反撃は1度で済ます。
そのための準備が……終わった。
スイセンは今家の前まで来ていた。
これまでとはうってかわって超接近である。
当然向こうも見えてくる。
「ねえ、まさかこんなところで……」
「おっと、そちらの攻撃はもう散々しただろう? 今度はこちらも見せようと思ってな」
スイセンが出てきた絶世美の神の発言を遮る。
ところで絶世美の神の容姿聞いてないんだけど。
……容姿に触れると精神汚染サれる? ああそう。
ともかくスイセンは目の前まで来て煽りに来ていた。
色々最悪である。
「じゃあ、一回死ん「さあ! 自分が絶対だと言わんばかりのその態度、ここでへし折り、許しを懇願させてみようか!」
「……ハァ?」
絶世美の神は呆れたような困惑したかのような声をだした。
なにせまあはたから見たらスイセンがおかしくなったかのようだし。
スイセンが何か仕込んでいたのは絶世美の神にはわかるだけれど……
「フフフ、何か知らないけれど、貴方の力程度で?」
そう。力量差。
向こうは一目見てその差を理解していた。
スイセンは直接戦って勝てない。
それほどまでに力量差がある。
だからこそヤケになったと判断した。
先程の追尾槍もしっかり痛手を与えたと思っている。
だからこそスイセンが機嫌良く花が顔に咲いているのがただヤケにしか見えなかっただろう。
「さあ、その目を見開いて口を閉じて、見ていな!」
「戯言を……!」
魔力槍が瞬時に生み出される。
それは素早くスイセンへと投げ込まれ……
なかった。
「ひあっ!?」
突如力が抜けるように崩れる。
いや良く見れば足元に何かが絡まっている。
半透明で存在感の薄い何かが。
「ここに来るまで仕込みの発動が終わってないとでも思ったのかい? そんな間抜けなことするわけがないだろう?」
「嫌、なにこの、気持ち悪い!」
「当然、超遠隔! から終わらせている。ボクがここに来たのは、ふんじばったお前を、家から蹴り出すためだよ!!」
思わず絶世美の神は膝をつく。
当然つきたくてついているわけじゃない。
何かが力を吸い取りつつどんどんと関節に巻き付いているせいだ。
体が崩れ倒れるたびに地面の埃がついてくる。
それはきっと絶世美の神にとって屈辱的だろう。
その分スイセンは良い笑顔な花を顔面に咲かせたわけだが。
「こ、この力、お前じゃあ、ない、一体、何が……!」
今周囲を遠くからみればいくつもの光が輝き更には光の線が多数走るのも見えるだろう。
1つ1つの大きな輝きは氷の要石が。
ラインは念力で繋がれた輝き。
そして何よりこの地が淡くかがやいているだろう。
「なあ、龍脈はしっているか?」
「それは! 世界がもたらす神の力の根源!? だ、だけど私は月で生きてきた神、このような力などに縛られるはずが……!」
「へぇ、月の神なんだ。まあ後で詳しく聞くとして……」
私もちょっと知らない情報入ったけれど。
そこはともかく絶世美の神が全力を出そうとするが……より全身にキツく縛りが入り力が奪われていく。
「おっと、力を込めない方がいいぞ。これは正確には、龍脈に流れる力を使っているわけじゃあないからな」
「それじゃあ……まさかっ」
「これはさあ、大本はニンゲンの儀式なんだよ。枯れた龍脈に、神の力を流し込む、土地蘇生神事」
スイセンが咲く花は毒々しくかつ美しく。
そうまさしく。
ニタリと笑うように。
「か、神を、栄養素、に……!?」
「なかなかすごいだろう? ボクでもこんな技は喰らいたくないね。キミはどこまで耐えられるかな? 神が力を奪われたら、さぞかし頬は痩せこけ、目はくぼみ、唇は乾いて醜いことだろうねぇ〜〜!!」
「ふ、ふざけ……! ぐああぁ!!」
そして絶世美の神は話すたびに縛り上げられる。
力を使おうとしたのだろう。
だけれども今それをすればバッチリ吸われるわけで。
できるのは……そう。
「イモムシみたいに転がってさあ、実に楽しそうじゃないか?」
「このっ……!」
抵抗にもならない抵抗。
もはや絶世美の神は地に伏した。
ここから突破するのはそれこそ神の力に頼らない動きをしなくてはならないだろう。
月の神である彼女ができればだが。
そしてだんだん動きが弱っていくわりにロクな抵抗ができていない。
それこそが答えだ。
「さあ、ボクの家から出ていってもらう。永遠に、二度と入ってこないように、二度と復讐なんてしないように、二度と来ること無いように。色々教えてももらうよ? 月の神とかなんとか、そういうことをね」
スイセンの顔は。
今こそ。
絶好に美しく大輪の花が咲き誇った。
空の旅。
その中でスイセンは絶世美の神を念力で運び話を聞いた。
結構詳しい内容をやっとここで聞けたわけだ。
スイセンは全然絶世美の神と対話をしていなかったからね……
「ぬううぅ、ううぅ……!」
「まったく、どんどん醜くなっていくね。目のシワがひどく寄っているよ?」
スイセンは自分の顔が華咲いているようにしか見えない神なのにメチャクチャ顔のパーツに言及した会話をする。
話によると嫌いな相手はこうやって顔のパーツを意識させるらしい。
そうするとスイセンの顔も意識して認識にバグがうまれおかしくなると。
詳しい仕組みはわからないけれどそういう嫌がらせらしい。
色々最悪である。