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二百六十六A生目 性別

 壁についた両性の神はそこから足をついて飛ぼうとして。


「スイッチ!」


 VVが杖を振るう。

 先程から飛ばしていた雷撃はいくつか両性の神にあたっていなかった。

 それは狙いが悪い……わけではなくて。


 装置の起動が狙いだった。

 急速な音の高まりでその機械は動き出す。


 そう電気魔力でスイッチが入る……()()だ。


 雷撃が壁伝いに走る!


「「アババハマガガガ〜〜!?」」


 それは間違いなく両性の神を痺れさせるほどの電圧。

 しかも途絶えない。

 VVはこの間にもさらに動く。


「それえげつないよねー!? 絵面用に派手なオチとして用意するのはよかったんだけれど、まだ出力調整とか曖昧でさぁ、とりあえずやれるだけ上げられるようにしてはいたんだよね、ここまで使ったことはなかったけれど!」


 VV自身雷撃を操れるので多少の電圧には耐えうる。

 とはいえ今のフルパワー稼働は単なる余幅だ。

 やれるだけやって使わないで良しとされたもの。


 とうぜんあんな電撃はVVも食らったこと無い。

 罰ゲームで軽い電撃を一瞬走ってあとは転げ回るだけである。

 VVは杖を再度振るって雷撃を飛ばしさらには攻撃を仕込んでいく。


(この間にアレを回収する!)


 何秒稼げるかわからない。

 VVは背を向け一気に駆け出した。






「ハァッ!」


 電気に焼かれていたところをパワーで弾き返す両性の神。

 両性の神のその反動で機械はショートし機能が停止した。

 本來雷撃でズタズタにされているはずの筋繊維に目立った傷はない。


 たしかに痛くビリビリして動けなかった。

 だが両性の神からすればそれだけだ。

 時間は稼がれたけれどこれで大きくダメージを与えられたわけではない。

 

 あくまで体が麻痺してちょっと継続的に痺れたという認識だろう。

 やはり(エフェクト)つきの技や魔法とは威力が劣る。


「さて、逃げられてしまう前に急がないとだねえ」


「大丈夫、まだ近くにいるわよ」


 ふたつの頭はあくまで優雅に。

 それこそレディースとジェントル故に常に余裕をもち優雅たれということか。

 そもそものところ両性の神はフィジカルが強い。その特徴ゆえに油断している。


 威光の神はメチャクチャ強いのにイライラと余裕がなかったけれど……

 こっちはこっちで戦いという感覚がなくスルリとちょっと急いで移動するだけ。

 必死になることがきっと難しい。


 ただそこがきっと致命的なほどの差になることを知らないのだ。


「淑女と紳士の、()()()()!」


 声が響く。

 ここは先程のスタジオよりも設備規模が大きい場所。

 普段はあまりVVも使わずに大型企画する時に扱う頑丈な場所。


 それこそ戦闘するのにも向いている。

 広くて同時に既に仕込みがされている。

 スポットライトをあびるのは……ふたり。


「あら、ご丁寧にどうも」


「おや、そこまで堂々と姿を表すとはね」


 両性の神が堂々と尾を地面につけて歩いて現れ。


「当然、ここでアンタを倒させてもらうからね!」


 VVは高台に堂々といてスポットライトがあたった。

 もはや逃げ隠れる時間は終わった。

 ぶつけるもの全てぶつける。


 VVの姿は先程とは違う。

 頭から足までカラフルな装飾品が彩っている。

 もちろん単なるかざりではない。

 

 全てが一点物の高級を超えた特注品……エイナがいうところのガチ装備というものらしい。

 当然VVがもっとも強くなるという意味で。


「だがねえ、遊びすぎではないかい? 私を歓迎してくれるのはうれしいがね」


「そうねえ、ちょっとわからせた方が良いかも」


「っ!?」


 刹那のできごと。

 両性の神が姿勢を低く変えたと思ったら自動追尾が仕組まれているスポットライトがその姿を追いきれなくなった。

 一瞬でVVの足元まで肉薄。


 そのまま真上へ軽やかに飛ぶ。


(その蛇の体でどうやってえぇ!?)


 だがもう間近だ。

 食らうのを覚悟でVVは装置を起動する。

 ここまで来て仕込みを無駄にして勝てる相手じゃない!


「いぎっ!」


「やっとおっ!?」


 VVの体が宙を舞うほどの激しいアッパーカット。

 それとほぼ同時に両性の神が強く照らされる。

 一瞬の輝きと共に起きるのは……爆発!


 しかも(エフェクト)つきだ。

 両性の神の方へ……つまり前方と下側へ向けての大爆発。

 明らかに殺傷前提で作られた兵器だ。


 VVは拳であっさり吹き飛ばされながらも回る目を抑えなんとか着地だけは成功させられた。

 電磁浮遊さえちゃんと行えれば角度はあまり関係なし。

 すぐに体勢を整える。両性の神は床へ叩き込まれたので問題なし。


「か、かすってこの威力……! ふざけてんじゃねーぞ、おい!」


「おやおや、汚い言葉遣いでは?」

「うふふ、化けの皮が剥げてきたからしら」

 

 たまたま偶然。

 拳が見えていたわけではなく腰が引けていた。

 だから直撃を避けられたとVVは話した。


 立っているのがしんどいほど目が回り体は痛む。

 だけれどもまだ体は動いた。


(だけれども、爆薬は当てられた。エイナ考案魔物撃退爆薬……)


 この世界でも火の魔法系統を使った爆薬系は結構ある。

 それを参考にエイナが異世界チートしたのが今の爆薬だった。

 威力だけ言えば最初の雷撃ビームをも上回る。指向性を絞れないので場合によりけり。


「ま、まだまだぁ……!」


 VVはさらに杖を振るう。

 次の仕掛けを起動させるためだ。

 今度は明らかに大きな音が鳴り響く。駆動音というやつだ。


「うーむ」


 そして両性の神。

 こっちはもろに入ったのにちょっと2つの首が痛いなぐらいの動きで立ち上がる。

 確実に効いてはいるのだけれど……命までは遠い。


「今のはそこそこ痛かったわねえ、それにしても」


「うーむ、今殴ったはずなのに、その手前で別のを突き破った感覚がしたねえ」


 結界だ。

 そうVVの装備は見た目のファンシーさと違い全身にガチガチの重防具を着こませる。

 攻撃を受けるたびに割れて身代わりになるシールド。全身をいろんな衝撃から守るシールド。

 攻撃を分散させるシールド。攻撃に対して危機反応を起こさせるシールド。


 とにかく片っ端から珍しく頑丈に。

 各種耐性も積んである。しかもセットで着た所有者の魔力能力にも補助が。

 普通はこんなところであっていいレベルの装備ではないがVV用ならと熱心なファンが完成させた品。


 それのおかげでVVの体は水の詰まった風船みたいに破裂せず済んでいる。

 神とはいえベースがニンゲンの体。常識外に鍛えていない限り装備での能力伸び幅のほうが圧倒的だ。

 まあ高レベルだとさらに高度な武具の能力を引き出せるのでニンゲンと武具はきってもきれない関係だけれど。


 とにかく両性の神の攻撃を耐えたのには仕組みが当たった。

 そして今両性の神にはスポットライトが当たっていなかったところからの攻撃に気を引いてもらう。


「ファイヤー!」


 圧倒的な回転駆動音を響かせてからどんどんと両性の神に弾丸が降り注ぐ!


「おおっ!? 鉄の雨だっ」


 当然相手を脅かすためのエネルギーが込められている。

 回転式機関銃……いわゆるミニガンというものだ。

 グルグル回る砲口がどんどんと弾丸を放っている。


 両性の神もさすがに直接浴びるのは避けたがる。

 何発か大きな体をえぐったあとすぐその場から駆けて。

 しかして銃は向きを追尾してくる。


「アララララ!?」


「この鉄、当たったら爆発もするのかい!」


 両性の神はなんとか弾ける分は(エフェクト)による攻撃で弾いているが……

 当然全部はむりだ。

 当たった先から銃弾が刺さった後に破裂している。


 炸裂弾。

 誰だこんな凶悪な弾をひらめいたのは。絶対エイナだ。

 

 エイナはなんとなく知っているものも異世界チートで再現できてしまう。

 しかもこっちの世界用に再チューンできる。

 単なる炸裂弾なら両性の神どころか戦闘のできる相手にそこまで痛手をあたえないけれどきっちり火や土のエネルギー込めてあるし。


 両性の神もさすがに喰らいすぎるとまずいと判断。

 弾くのではなく一気に跳んで銃座に近づく。

 そこに座る者は……いない。


「あら? ゴーレム?」


(スポットライトと同じ、自動追尾!)


 事実上杖の力で稼働させているVVの能力も上乗せしている。

 半自動じゃないと罠としては弱いからね……

 なお炸裂弾はニンゲンに向かって使ってはいけません。


 両性の神はとにかく被弾を減らしつつも銃へ食らいつくように飛びかかる。

 拳を舌でつくり固め振り回す。

 ミニガンはそれに小回りできるような能力はない。


 とんでもない勢いで重々しくぶん殴られると数度で変な音がして完全に止まった。

 芯の部分がへしゃげてしまっている。


「ふぅ、本体は脆いものですね」


「おおっと!?」


 男性顔側が気づき急速に転がるよう跳ぶ。

 またたく閃光とほぼ同時に雷撃砲が到達する。

 あたりまえだがVVがフリーになれば大技を叩き込む。


「せえい!」


 さらに薙ぎ払うよう角度を変えて両性の神を狙う。

 言うほど簡単ではない。

 重たく暴れている砲台の向きを変える荒業だ。


 そういうのを補助してくれるためにも杖がいるわけで。

 実際直撃とはいかずとも両性の神の下半身ヘビ部分が雷撃で焼かれる!


「外したっ」


「そうそう、戦いはこうでなくては。少しはヒリつくことが出来るではないか」


「嫌だわぁ、これ。無駄に体が痺れるもの」


 当然少しでも打点を稼ぎたかったVVからすると悔しい。

 VVの知る限りしっかりと強力だった兵装も片手間で壊されたような感覚に陥る。


(落ち着けぇ、あの時のローズオーラよりも断然戦いやすいんだから!)


 そこで落ち着くための比較対象が私なことに若干の抗議を申したい!


 さて現実の時間は動く。

 VVは杖を振るい次々と隙間なく攻撃罠を起動していく。


 VVを狙ってくれば自爆覚悟の爆破とか。

 その間に起動する謎の火吹き像。

 電気柱に回転刃。

 凄まじい風を生み出す巨大扇風機。


 上からタライが。

 下には粉が詰められ落ちたところをVVが雷撃。


「粉塵爆発ってやつらしい〜よぉぉぉ!!」


 凄まじい爆発音でむしろVVの方がビビる。

 そして次は氷魔力パウダーによる疑似ドライアイス風呂に誘導され氷がつき。

 そこでもう……


「「あああああああーーー!!」」


 叫んだ。それはもうはっきりキレていたそうだ。

 むしろ焦げて刺さって溶けて痺れ凍っているのにやっと怒ったのかってなる。

 やはり紳士淑女なのかもしれない。


「いい加減にしなさい! わかるでしょう、私はこんなものでは倒せない!」


「ああ、もう、せっかく初めてのこっちの星に来たからお洒落してきたのに、ひどいじゃない、ボロボロよ!」


「そっちのほうが似合ってるよ、だから、さっさと倒れてくれないかなあ!?」


 だがVVはまったくふざけていない。

 全力で攻撃している。

 息も絶え絶えなほど走り回りちょくちょく殴られ吹き飛ばされてしにかけ。


 それを回復溶液ぶっかけでごまかすがVVは別に戦士ではない。

 やれることはたとえ手先がガクガクになっても笑って立っていることだけである。

 あくまで挑発的にあくまで輝くように。


(ムリムリムリ、片っ端から効果ありそうなものを注ぎ込んでいるのに、倒れる気配がないんだけれどお!? 明らかにこっちの魔法も見切られて来ているし、そもそもアタシの狙い(エイム)がカスになってきているし! カーッ、嫌!)


 継続戦闘能力というのはなかなか鍛えるのは難しいところだ。

 どのような状況でも同じパフォーマンスを繰り出すには場数を踏むしか無い。

 でもVVはそういうしんどい戦闘はしたことが少なくともこの代ではなかった。


 性と性別。ニンゲンの他の性に対する壁と狂気から生まれし神。

 少なくとも名乗りにある両性の神とどこか近しいだろう。

 だが……月に封印されるだけの所以はある。


 そもそもここに来るまでにあらゆる生物をオブジェに変えてきた時点であまり邪悪で。

 そして今化けの皮が剥がれかけている。

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